「Linux」の創始者リーナス・トーバルズ氏は2025年11月、Linux Foundationが開催した「Open Source Summit Korea 2025」の基調講演に登壇した。Linuxやプログラミング関連の情報を発信するYouTubeの動画チャンネル「SavvyNik」は、同講演の中から、Linuxと人工知能(AI)の展望に関する部分を抜粋した動画を公開している。本記事は、その内容からIT部門の担当者やITエンジニアが押さえておくべきポイントを紹介する。
- ハードウェアの主役がCPUからGPUに変わる一方、Linuxカーネル(OSの中核ソフトウェア)の重要性に変化はない。
- AIツールはまだ実験段階にあり、Linuxの開発コミュニティでの利用は限定的。
- コード生成AIツールは、プログラミングやシステム開発初学者の新規参入に役立つ。ただし、AIが生成したコードを使った本格的なソフトウェアを運用、保守する段階では、人間による品質管理を強化する必要がある。
- GPUは並列処理(複数の処理を同時に実行することで、処理速度を向上させる技術)に特化しており、AI処理の中核的な役割を担う存在として急速に台頭している。
- AI専用ソフトウェアの大半は、そのソースコードを非公開としているが、Linuxカーネルがその基盤として動作環境を提供し、重要な役割を担っている。
- NVIDIAはここ20年でLinuxカーネル開発に積極的に関与するようになり、その結果AI関連技術の成長に好影響を与えている。
- AI技術はLinuxカーネルのパッチ管理やコードの安定、バージョン適用支援に使われ始めているものの、誤った情報を真実であるかのように生成する「幻覚」(ハルシネーション)や不要なバグ報告が増えてメンテナの負担が増加している。
- AIはコード生成の補助には役立つが、完成度が高く実用化できるシステムを作るためには、人間の専門知識や品質管理、問題解決能力が依然として必要。
- プログラミングが「ただコードを書く作業」から「OS、クラウド、API、ハードウェアなどさまざまなシステムを統合する技術」へと進化しつつある。一方、AIエージェントに雰囲気(バイブ)で作りたいものを伝え、AIエージェントにプログラミングを任せる開発方式「バイブコーディング」が普及すれば、初学者の参入障壁を下げられる可能性がある。
- GPUを主力としたAI専用ハードウェアの性能が向上していることで、AIの処理速度が上がり、より多くの業務や用途でAIを活用できるようになりつつある。
- Linux OSとGPUを連携させることで、AIをクラウド上で安定した状態かつ高速に運用できるようになり、データセンターやサーバ管理の効率が向上しつつある。
- AIツールの実用化は進行中だが、現時点では実験レベルであり、期待が過剰に高まっていると理解している。数年後、日常業務で利用できることを期待している。
- AIがプログラマーに置き換わるのではなく、初心者のコード生成支援ツールとして認識され始めている。
- GPUやAIチップの進化とLinuxカーネルの関係を理解し、メモリやCPUの割り当て最適化を進める。
- AIの導入は概念実証(PoC)から始め、ハルシネーションやバグ報告などへの対処を優先する。
- コード生成AIツールは補助的な利用にとどめつつ、保守で発生するコストや品質に関わるリスクの検証に重点を置く。
- 社内での新人教育にコード生成AIツールを活用し、学習効率の向上を目指す。
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