Kubernetesの構成は“穴だらけ”? 致命的な設定ミスを防ぐ「KSPM」の実力「複雑過ぎて管理不能」なシステムを守る

Kubernetesの普及が進む一方で、その複雑さ故に設定ミスや脆弱な権限管理は放置されたままになりやすい。攻撃者に狙われる「死角」をどうふさげばよいのか。コンテナ運用に不可欠な「KSPM」のメリットを紹介する。

2025年12月12日 05時00分 公開
[Dave ShacklefordTechTarget]

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 企業のクラウドコンピューティング採用が拡大し、システム構成が複雑化するにつれて、「意図しない設定ミス」や「セキュリティポリシー違反」が放置されるリスクは増えかねない。この問題への対策として、クラウドサービスやシステム構成に対する「セキュリティポスチャー」(セキュリティの姿勢、状態)を管理することが重要になっている。

 高度なクラウドサービス活用において、コンテナ運用の事実上の標準(デファクトスタンダード)として定着したのが、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」だ。Kubernetesは強力なツールだが、その代償として「設定の複雑さ」を抱えている。多岐にわたる設定オプションを、人が完璧に管理することは困難だ。

 この現状を考えれば、システム運用チームやクラウドセキュリティチームが「Kubernetesセキュリティポスチャー管理」(KSPM)ツールの導入を検討するのは自然な流れだ。本稿は、KSPMがどのような「セキュリティの穴」をふさぐことができるのか、どのような企業がKSPMツールを導入すべきかを解説する。

KSPMがカバーする「4つの穴」

 KSPMツールは、Kubernetesによるコンテナクラスタ(Kubernetesクラスタ)を安全に構成、運用するためのツールだ。主な目的は、Kubernetesの設定ミス、脆弱(ぜいじゃく)性、コンプライアンス違反を特定、評価、修復することにある。具体的には、コンテナ化されたアプリケーションにおけるリスク管理、ワークロード(処理)の保護、適切なネットワークセグメンテーション、「最小権限の原則」(業務に必要な最低限の権限のみを与えること)の適用がある。KSPMツールは継続的な監視、ポリシーの適用、レポート作成機能を提供することで、セキュリティフレームワークや法的要件への準拠を支援し、セキュリティ侵害やシステム停止からクラウドネイティブなインフラを守る役割を果たす。

 KSPMツールは、主に以下のセキュリティ領域において、その効果を発揮する。

領域1.脆弱な認証情報やアクセス権の特定

 パスワード、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)キーやトークンなどの機密情報(シークレット)、暗号鍵は慎重に管理する必要があり、これはKubernetesの運用においても例外ではない。KSPMツールは、多様なシステム構成における認証と認可の監査を容易にし、Kubernetesクラスタ内でのシークレットのローテーション(定期変更)やライフサイクル管理に加え、認証情報の発行と更新の自動化、外部システムとの連携を促進する。

領域2.不十分なネットワークアクセス制御の管理

 ポッド(コンテナの集合体)やクラスタ内のネットワークアクセス制御設定は、必要以上に開放されていることがよくある。KSPMツールは、過剰なネットワークトラフィックを許可しているアクセス制御を特定し、場合に応じて修復する。Kubernetes標準のネットワークポリシーを使用してワークロードを隔離し、送受信トラフィックを制御することで、Kubernetesクラスタの管理機能を担うコンポーネントや、各アプリケーション間の通信を保護する。

領域3.構成の一貫性と脆弱性管理のベストプラクティスの検証

 KSPMツールはKubernetesクラスタ、ノード(サーバ)、ワークロードにおいて、ベストプラクティスやコンプライアンス基準に準拠した構成を維持し、脆弱性を最小限に抑える。コンテナイメージ、Kubernetesクラスタを稼働させるコンポーネント、サードパーティー製ツールなどに脆弱性がないかどうかを継続的にスキャンし、必要に応じてパッチ(修正プログラム)の適用やアップデートを促す。

領域4.ログ記録と監査証跡の有効化

 セキュリティ推進団体Center of Internet Security(CIS)が定めた「CIS Benchmarks」などのセキュリティフレームワークや、Kubernetesのセキュリティベストプラクティスへの準拠状況を追跡、報告するための管理体制を確立する上で、KSPMツールは役に立つ。全てのクラスタとポッドのアクティビティーに関する監査証跡(ログ)を保持する機能も提供する。

KSPMによる運用効率化

 KSPMツールは、Kubernetesクラスタのセキュリティ、コンプライアンス、運用効率の向上を後押しする。具体的には、プロアクティブ(能動的)なリスク特定、脅威の緩和、リアルタイム監視を通じてセキュリティを強化する。日常的なセキュリティタスクを自動化することで、運用効率も高めることも可能だ。脆弱性のスキャン、設定の検証、アラートの自動送信の他、ダッシュボードで運用状況を一元的に可視性する。これによってマルチクラウドやハイブリッドクラウドといったシステム構成において、全てのKubernetesクラスタのセキュリティポスチャーを効率的に管理、監視できるようになる。

 CPUやメモリなどの計算リソースの最適化が不十分な箇所を特定することにもKSPMツールは有用だ。単一障害点や可用性管理の欠如を発見することで、運用費の削減と拡張性の向上に寄与する。

どのような企業に必要か

 Kubernetesを使用している、あるいは使用を計画している企業は、KSPMツールの導入を検討すべきだ。オンプレミスシステムとクラウドサービスの両方を使用している企業や、Kubernetesで複数のアプリケーションやマイクロサービスを実行している企業にとっては、特に重要になる。

 Kubernetesは複雑な性質を持っている。そのため、さまざまなミスが容易に発生する。シークレットやAPIを誤って公開してしまったり、ネットワークアクセス制御を必要以上に緩く設定してしまったり、コンテナイメージやその他のKubernetes展開の主要要素を適切にロックダウンし忘れたりといった具合だ。

 こうした特有の課題に対処する上で、KSPMツールは重要な役割を果たしている。将来的には、KSPMが提供する機能はCSPM(クラウドセキュリティポスチャー管理)やCNAPP(クラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム)といった、より大規模な構成管理製品やポスチャー管理製品に集約される可能性がある。しかし2025年の時点では、専門化された領域として、KSPMツールはKubernetesのセキュリティを補強する優れた手段だ。

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