「Kubernetesクラスタ」運用の基礎解説 まずやるべき“大原則”とは?Rancher、OpenShift、Tanzuを比較【第1回】

企業によって「Kubernetes」クラスタの運用管理に求める要件は異なるものの、運用管理において実施すべき操作、考慮すべき原則は共通している。具体的に何をすべきなのか。

2023年10月19日 05時00分 公開
[Saqib JangTechTarget]

関連キーワード

OpenShift | SUSE | 運用管理 | 仮想環境 | 仮想化


 コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」で効率的かつ大規模にコンテナクラスタ(Kubernetesクラスタ)を管理するには、自動化が重要なポイントとなる。そのために活用できるのが、Kubernetes運用管理ツールだ。

Kubernetesクラスタの運用管理に必要なこと

 Kubernetesクラスタの運用管理は、デプロイ(実行環境への配置)時の設定を効率化する手法とツールを使い、CPUやネットワークなどのリソースの利用率、通信速度といったパフォーマンスのレベルを監視する。これにより、必要に応じてスケーリングできる体制を整える。デプロイ後に、Kubernetesクラスタの可用性とのレジリエンス(回復力)を確保するために、適切なインフラを選択することも重要だ。

 このように複雑なKubernetesクラスタを効果的に管理するには何をすべきか。以下で基本的な幾つかの原則を紹介する。

Kubernetesクラスタの準備と管理における原則

会員登録(無料)が必要です

 Kubernetesクラスタをセットアップする前に適切なハードウェアやインフラを選び、デプロイ以降の段階で可用性を維持できるようにする。システムを適切に構成して、冗長性を確保することが重要だ。

アプリケーションの展開と管理における原則

 アプリケーションをKubernetesクラスタに展開した後は、必要に応じてアップグレードやロールバックを実行する。自社の要件に合ったパフォーマンスレベルを確保するために、アプリケーションのライフサイクル全体を管理しなければならない。

 Kubernetesを使用してインフラを効果的に管理するには、運用管理計画における3つの中核領域に注力する必要がある。

領域1.監視とロギング

 監視とロギングでは、Kubernetesクラスタの健全性とパフォーマンスを綿密に監視する。それにより、システムに悪影響を及ぼし得る問題を見つけ出すためのメトリクス(指標)とログを分析する。問題を早期発見することで、大きな問題に発展する前に対処できる可能性がある。

領域2.スケーラビリティ(拡張性)とオートスケーリング

 アプリケーションは時間の経過とともに拡大するため、スケーラビリティも重要な鍵となる。自動スケーリングツールを使用して、自動的に必要なリソースを割り当て、コストを掛け過ぎずにパフォーマンスを最適化することが、効果的な運用管理につながる。

領域3.セキュリティとアクセス制御

 Kubernetesクラスタの運用管理戦略には、セキュリティとアクセス制御が欠かせない。具体的には以下の項目を実行するとよい。

  • セキュリティとアクセス制御に関するポリシーの策定
  • コンテナを実行するための物理サーバまたは仮想マシンである「ノード」と、コンテナを管理する最小単位である「Pod」(ポッド)間の通信の保護
  • 認証情報の管理
  • パッチの適用などセキュリティの一般的なベストプラクティスの順守

 次回は、Kubernetesクラスタの運用管理ツールを比較する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 サイボウズ株式会社

「ERP×ノーコードツール」のアプローチを推進するためのポイントとは?

DXが進み、レガシーシステムからの脱却が喫緊の課題となっている今。「ERP×ノーコードツール」のアプローチで基幹システムの刷新に取り組む企業が増えている。そのアプローチを推進するに当たってのポイントを解説する。

事例 サイボウズ株式会社

ローコード/ノーコード開発ツールで実現する、変化に強い組織の作り方

DXの本質は、デジタル技術を駆使して変化に適応する能力を身につけることにある。その手段の1つとして注目を集めているのが、ローコード/ノーコード開発ツールだ。京王グループなどの事例とともに、その特徴やメリットを紹介する。

事例 サイボウズ株式会社

ノーコードツールでDX人材を育成、京セラや日本航空などの事例に学ぶ効果の実態

DX人材の重要性が高まる中、ノーコードツールの活用によって業務改革と人材育成を両立しようとする動きが活発化している。年間約780時間の工数削減を実現した京セラをはじめとする5社の事例を基に、その実態を探る。

事例 アステリア株式会社

ものづくり現場で「足かせ」のアナログ業務、9社の事例に学ぶ業務改善の秘訣

急速に進化するデジタル技術は、製造業などのものづくりの現場にもさまざまな恩恵をもたらしている。しかし、設備点検業務や棚卸業務などの立ち仕事や移動が多い現場では、いまだにアナログ業務が残存し、効率化の妨げとなっているという。

事例 アステリア株式会社

工場・倉庫の「隙間業務」をデジタル化、11社の事例に学ぶ現場DX

あらゆる業界でDXの重要性が増しているが、工場や倉庫の中にはデジタル化が後回しにされている隙間業務が多数ある。その理由を明らかにした上で、それらの業務をモバイルアプリでデジタル化し、現場DXを推進する9社の事例を紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。