「AIスマホ」への雪崩現象が始まった? iPhone 13が大量に手放される理由端末更改サイクルの壁が崩れる時

米国のスマホ下取り市場が異常な盛り上がりを見せている。ユーザーがまだ使えるiPhone 13を手放してまで求める“機能”とは何か。企業の端末更改サイクルにも波及する最新動向を解説する。

2025年12月17日 18時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 スマートフォンをはじめとするモバイル端末の下取りやアップグレード(買い替え)プログラムが活況だ。

 モバイル端末の下取り動向を調査しているAssurantが、2025年第3四半期(7月〜9月)の「モバイル端末の下取りおよび機種変更に関する業界動向レポート」を公開した。この期間にモバイル端末の下取りを通じて米国のユーザーに還元された総額は15.9億ドル(約2兆4500億円)に達し、前年比で46%の大幅増となった。

 通常、スマートフォンの高性能化に伴い、モバイル端末の買い替えサイクルは長期化する傾向にあった。しかし今、そのトレンドが逆転し始めている。

買い替えサイクルは短期化 その理由は

 15.9億ドルという記録は、2025年第1四半期(1月〜3月)の12億4000万ドル(前年同期比40%増)、第2四半期(4月〜6月)の13億4000万ドルに続く結果だ。

 米国のユーザー向けモバイル端末の下取り市場は一貫して拡大している。ユーザーが、よりパーソナライズされた人工知能(AI)機能を備えたデバイスを急速に受け入れていることが、3四半期連続で過去最高の収益を生み出す要因になっている。

 2025年通年の累計では、下取りプログラムを通じて総額41億7000万ドルがユーザーに還元されており、2024年同期比で54%の増加となった。年間を通じて、2024年の過去最高額である45億ドルを上回るペースで推移している。

 「下取りモバイル端末の評価額が過去最高を更新し、平均使用年数が短くなっている。この傾向は、ユーザーが『パーソナライズされたAI機能を備えた最新スマートフォン』への移行を加速させるという予測を裏付けるものだ」とAssurantは指摘している。同社によると、主要キャリアが第3四半期にフラッグシップ端末の世界的な出荷増を報告している。「より価値が高い新型デバイスが下取り市場に流入し、セカンダリーマーケット(中古端末市場)の成長を後押ししている」と同社は分析している。

 「2025年は、下取りプログラムを通じてユーザーに還元される総額がこれまでの記録を更新する年になる可能性がある」。Assurantのビジュ・ネア氏(グローバルコネクテッドリビング事業部エグゼクティブバイスプレジデント兼プレジデント)はこう述べる。

 「ユーザーはAI対応機能を利用するために、これまでよりも早いタイミングで最新世代の端末を下取りに出している。新しいデバイスがもたらすよりパーソナライズされた体験への関心が、急速に成長する中古市場をけん引している。こうした『高価格帯デバイスの再流入』によって、手ごろな価格設定や持続可能性にも波及効果が生まれており、次の四半期ではさらに新たな市場動向として報告できることを期待している」(ネア氏)

 技術面からこの動きを掘り下げると、「5G対応端末」が下取り市場をけん引していることがこの調査から明らかになった。Assurantによると、5四半期連続で下取り、アップグレードプログラムで最も頻繁に下取りに出された機種は、Appleの「iPhone 13」とSamsungの「Galaxy S22 Ultra 5G」だった。

 2025年第3四半期で初めて、上位5機種全てが5G対応端末となった。これには循環型経済(サーキュラーエコノミー)への明確な影響が見られる。より高性能なプロセッサー、カメラ、バッテリーを備えた先進的な5G端末が中古市場に流入することで、高付加価値の在庫が循環型デバイスエコシステムの成長を支えている。

 より新しいモデルへの移行も進んでいることも今回の調査から明らかになった。今回、上位5機種の下取り対象は初めて全機種がiPhone 13および14シリーズで、2021年と2022年から上位に入り続けていたiPhone 11や12といった旧モデルに取って代わった。

 第2四半期に端末の平均使用年数が過去最高の3.88年に達した。その後、第3四半期はわずかに下がり、3.8年となった。Assurantはこの傾向について、「ユーザーがこれまでより早いタイミングで買い替えるようになってきており、その背景にはAI対応機能の魅力や新機種の性能向上がある」と分析している。

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