SAP製ERPのクラウド移行に企業は巨額を投じている一方で、現場では「5年塩漬け運用」「過去データ全移行」「SaaS拒否」といった保守的な選択が横行している。コスト高騰の真犯人を調査データから読み解く。
SAPのオンプレミスERP(統合基幹業務システム)製品群「SAP ERP Central Component」は、2027年に保守期限の終了を控えており、ユーザー企業は岐路に立たされている。電通総研が実施した「SAPユーザー意識調査結果2025年度版」によると、クラウドERP「SAP S/4HANA」への移行が着実に進んでいるが、その裏で経営層を青ざめさせる「コストの実態」が明らかになった。この調査は、SAP製ERPを導入している国内企業295社を対象として、2025年9〜10月に実施されたものだ。
調査では、SAP S/4HANAの移行プロジェクト(新規導入を除く)において、回答企業の半数以上が5億円以上の費用を投じており、中でも26.0%は「10億円以上」と回答している。これほどの巨額投資を要する一方で、移行時の課題として約4割の企業が「移行の投資対効果(ROI)の説明」に苦慮しているのが実情だ。なぜ、これほどまでに費用が膨らむのか。データを分析すると、日本企業が陥りがちな3つの「高コスト要因」が浮かび上がってきた。
1つ目の要因は、移行方式の選択だ。既存の業務プロセスやアドオン(追加機能)をそのまま新システムに持ち込む「ストレートコンバージョン」(ブラウンフィールド)方式を選択した企業は47.6%で最多になった。これに対して、一からシステムを再構築する「リビルド」(グリーンフィールド)方式は11.1%にとどまる。業務改革やアドオンの整理を先送りし、既存の複雑な仕組みを維持しようとする姿勢が、結果として移行費用の高止まりを招いている可能性がある。
2つ目の要因は、データに対する“執着”だ。移行に際して「過年度データを全て移行したい」と回答した企業は52.0%と過半数を占めた。SAP S/4HANAは、メモリでデータを扱うインメモリデータベースを採用しているため、データ量の増加はインフラ利用料の増大に直結する。不要なデータまで「取りあえず」持ち込む判断が、運用費を含めた費用構造を悪化させている懸念がある。
3つ目の要因は、クラウド化しても変わらない運用意識だ。SAP S/4HANAのバージョンアップサイクルについて、「5年または7年に一度」と回答した企業は62.1%に達した。多くの企業がクラウドERPへの移行を進めているものの、運用サイクルがオンプレミス時代のままであれば、クラウドサービスの利点である俊敏性や最新機能の恩恵は受けづらくなる。これでは単に「場所代が高い」だけのシステムになりかねない。
SAP S/4HANAユーザーが今後取り組みたいテーマとして挙げたものは、「AI(人工知能)活用」が78.4%でトップとなった。一方でSAPが提供するAIアシスタント「Joule」の活用を見込んでいる企業は、わずか1.7%に過ぎない。割高な「現状維持」から脱却し、真に投資対効果を生むためには、アドオンやデータ戦略の抜本的な見直しが不可欠だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...