「HDDは不滅」だが、もはや無視できない“SSDの猛追” キオクシア幹部が語るSSDはどのように進化するのか

データセンターに導入されるストレージでは依然としてHDDが主流だが、AIモデルの学習や推論などの場面ではSSDが適していると、キオクシアの幹部は語る。需要の高まりを受け、SSDは今後どのように進化するのか。

2025年12月25日 10時00分 公開
[Antony AdsheadTechTarget]

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 SSDなどに代表されるフラッシュストレージは、大容量化や読み書き速度の向上など技術進化が著しい。キオクシアの欧州担当メモリおよびSSD製品担当バイスプレジデントを務めるアクセル・ストエルマン氏によると、データセンターに導入されるストレージでは依然としてHDDが主流だが、レイテンシ(遅延時間)の低減が求められるワークロードではフラッシュストレージが適している。

HDDは不滅だが止まらないSSDの進化

―― SSDなどのフラッシュストレージは、HDDなどの“回転ディスク”と比べてエネルギー効率はどれほどよいのか。

ストエルマン氏 ケースバイケースだが、SSDはそもそも効率がよい。性能や耐久性などに重点を置くと、HDDに続き、将来は最も需要のあるストレージになり得る。

 ストレージには、頻繁なアクセスを必要としないデータを保管する「コールドストレージ」、頻繁に使用するデータを保管する「ホットストレージ」、その中間の役割を果たす「ウォームストレージ」があり、それぞれ要件が異なる。

 ウォームストレージの用途では、依然としてHDDのコストパフォーマンスが高い。現在データセンターでは、ドライブの80%以上がHDDだ。SSDがそれら全てを代替するには程遠いといえる。しかし読み書き速度の向上や省スペースが求められていることは明らかだ。こうした背景からSSDの性能向上が期待されている。

 HDDに代表される“回転ディスク”は、さまざまな機械部品で構成され、データの読み書きに物理的な駆動を伴う。一方、SSDはフラッシュメモリにデータを保存する。この点が大きな違いだ。

 HDDはデータを読み書きする際、スピンアップ(回転を始めた状態)、連続回転している状態、スピンダウン(回転を休止した省電力の状態)という過程をたどり、SSDよりも多くの電力を消費する。SSDはディスクを回転させる必要がない。

 SSDに代表されるフラッシュストレージは、フォームファクタ(大きさや形状の仕様)の改善に加え、飛躍的な大容量化と性能向上を両立させることで、エネルギー効率が向上している。そのため市場が求めるニーズに対し、HDDよりもSSDが応えられる場合がある。例えば、AI(人工知能)モデルの学習や推論などの用途では、GPUに高速にデータを供給しなければならない。

―― フラッシュストレージの性能は今後さらに進化するのか。

ストエルマン氏 われわれの事業は1987年、当時の東芝がNAND型フラッシュメモリを発明したことに始まる(キオクシアは2017年、東芝のフラッシュメモリ事業を分社化して誕生)。2007年には、NAND型フラッシュメモリのメモリセル(記憶素子)を積層することで同じ面積での記録密度を高める3次元NAND型フラッシュメモリ「BiCS FLASH」が登場した。

 BiCS FLASHは世代交代を重ね、現行の第8世代に達した。第8世代は積層数が218層となり、さらなる大容量化、高性能化、エネルギー効率の向上を実現している。

 例えば、第6世代と比較してインタフェース速度は約80%向上した。レイテンシの低減、読み書き速度の向上も実現している。「1ワットの電力効率で何GBのデータを転送できるか」というエネルギー効率の指標も改善した。このような技術革新の中核にあるのがフラッシュメモリ技術だ。

 当社はさらなる開発も視野に入れている。今後も積層数を増やし、エネルギー効率を高めていく。すでに第9世代と第10世代の開発に着手している。

―― 次世代では何がもたらされるのか。

ストエルマン氏 ストレージは、SSDとHDDを併用することになると考えている。HDDは引き続きメディアデータなどを保存する重要な役割を果たす。一方、SSDは処理性能が高く、静音性に優れ、持続可能な技術として、AIデータセンターでの導入が進むと見込んでいる。

 SSDの技術は進化を続けており、AIモデルの学習と推論を支える性能の高さが重要な要件になる。新たなフォームファクタによる冷却性能の向上も期待できる。

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