「また同じ質問?」を瞬殺 情シスのため「NotebookLM」活用法情シスの説明責任をサポート

膨大な資料の検索や説明作業に時間をかける情シス業務に役立つのがGoogleの「NotebookLM」だ。本稿では、情シス業務で想定される活用場面と導入時の注意点を解説する。

2026年03月18日 05時00分 公開
[雨輝ITラボ(リーフレイン)]

 情報システム部(以下、情シス)の日常業務は、「調べる」「読み解く」「説明する」で回っている。しかし「資料が多すぎて全部は読めない」「どの資料のどこに書いてあったか思い出せない」「問い合わせのたびに同じ資料を探し直している」という課題を抱えている情シスもいる。

 そのようなお悩みに役立つのがGoogleの「NotebookLM」だ。本稿では、情シス業務でのNotebookLMの活用場面、導入や運用時の注意点を紹介する。

活用場面や注意点を紹介

 NotebookLMは、内部モデルとして「Gemini」を採用している。「ChatGPT」やGeminiチャットのような汎用(はんよう)生成AI(AI:人工知能)が幅広い学習データを基に回答を生成するのに対し、NotebookLMは取り込んだ資料を主な根拠として回答を返す。回答にはインライン引用が付き、根拠箇所を追いやすい。誤読や解釈違いがゼロになるわけではないが、根拠が明示される分、回答の検証と社内展開の判断を進めやすい。

 ソースの対応形式は、PDF、Googleドキュメント、スライド、スプレッドシート、WebサイトのURL、YouTube動画、音声ファイル、Word、Markdown、画像、貼り付けテキストなどだ。

 データ保護の面では、「Google Workspace」経由の利用であれば、アップロードデータやクエリ、モデルの応答はAIモデルの学習に使用されない。人間のレビュアーが確認することもない。ただし、問題が発生した際にGoogleにフィードバックを送信する際は注意が必要だ。フィードバックに機密情報を入れると、内容がGoogleのレビュー担当者に見られる可能性がある。社内では、「機密情報を含むフィードバックは送信しない」旨を組織として方針化しておくことが望ましい。

 NotebookLMはGoogle Workspaceの各プランで利用可能だが、組織の管理者設定や契約形態によって利用上限や共有機能は異なる。

情シス業務で「これだけ便利になる」5つの場面

 では、具体的にどのような場面でNotebookLMが役立つのか。情シスの日常業務に即した5つの活用例を紹介する。

1.社内規程やマニュアルの横断検索

 就業規則、セキュリティポリシー、VPN(仮想プライベートネットワーク)の手順書などをNotebookLMに取り込み、「リモートワーク時のVPN接続ルールは?」と質問すれば引用付きで回答が返ってくる。複数資料にまたがる内容も横断的に抽出でき、ヘルプデスク一次対応の下調べの時間を短縮できる。

2.ベンダーの提案書や製品資料の比較分析

 複数ベンダーの提案書を取り込み、「SLA(サービスレベル契約)条件の違いを表形式で整理して」と指示すると、比較表が引用元付きで生成される。SLA条件、責任分界点、データ保護、運用体制、契約条件といったポイントで情報を整理するように指定すると、稟議(りんぎ)資料の下書きとして活用しやすい。

 ただし、対象範囲や期間といった提案書の前提条件が異なる場合、NotebookLMはその差異を自動補正しない。比較結果は必ず原文で文脈を確認する必要がある。

3.セキュリティインシデント対応記録の整理・参照

 過去のインシデント報告書や是正措置記録を取り込み、「フィッシングメールの被害事例と初動対応手順は?」と質問すれば、該当事例が引用付きで要約される。類似インシデント発生時の初動判断と再発防止策の検討作業が速くなる。

 インシデント報告書には個人名や取引先名など機密情報が含まれる場合があるため、アップロードの可否は社内ガイドラインに従う必要がある。

4.監査や内部統制対応の資料準備

 IT統制の証跡一覧や過去の監査指摘事項を取り込み、「アクセス権限の棚卸しに関する統制根拠はどの資料にあるか」と質問すれば、該当箇所が引用付きで特定される。監査前の事前準備やセルフチェックの工数を削減でき、「根拠はここです」と即座に示せる。

 監査証跡は機密性が高い。そのため、ユーザーアカウントがGoogle Workspaceの管理下にあるかどうか確認する。共有設定も注意が必要だ。

5.「音声解説」で“読む時間がない”問題を解消

 長文の報告書や議事録を取り込み、「Studio」パネルから「音声解説」を選択すると、AIが会話形式の音声要約を生成する。日本語でも利用できる。移動中や作業中に「聴いて概要をつかむ」ことで、未読資料のキャッチアップ時間を圧縮できる。

 ただし音声解説はあくまで要約であり、意思決定やエスカレーションの判断には必ず原文に戻ることが前提だ。

生成AIが苦手な情シスでも使いやすい理由

 NotebookLMは、プロンプトを緻密に書けるかどうかではなく、ソースの設計や精度が回答の質を左右する構造になっている。

 回答には常に引用元が表示されるため、元の資料に戻って確認する習慣を付けやすい。社内に展開する際に資料の根拠を示せる点も魅力だ。

 導入のハードルも低い。Googleのユーザーアカウントがあれば、改めてソフトウェアをインストールしなくてよい。ただし企業利用では、管理者設定や契約プランによって利用可否・上限・共有機能が異なるため、社内環境での提供条件は事前に確認しておきたい。

注意点と限界

データの取り扱い

 Google Workspace経由で利用する場合、アップロードしたデータやクエリはAIモデルの学習に使用されない。これは、Google Workspaceの企業アカウントが持つ特権で、個人アカウントとは異なり、データがモデルの改善に再利用されるリスクがないことを意味する。NotebookLMのフィードバック機能を利用する場合は、機密情報を含めない旨を全ユーザーに周知徹底し、ルール化することも重要だ。なお、データの保存期間、共有範囲、削除ポリシーといったデータ保護の扱いは個人ユーザーとGoogle Workspaceの利用で異なる。企業として利用する場合は契約形態ごとの条件確認が必要だ。

アップロードできるソースの数

 プランにより1ノートブックあたりアップロードできるソースやノートブックの上限は異なる。NotebookLMはソース外の最新情報は自動では取得しない。しかし、企業のITセキュリティからいえば、限られた情報で正確な情報を提供するのがNotebookLMの魅力だ。

ルールの整備が必要な項目

 セキュリティの観点から、NotebookLMにアップロードできるドキュメント、アップロードを禁止するドキュメントを定めることが重要だ。以下の通り、アップロードするに当たってのフローまでルール化することが望ましい。

  • 社内規程やマニュアル
    • アップロード可
  • ベンダーからの提案書
    • 秘密保持契約書(NDA)を確認し、上長の承認を得た上でアップロード可
  • 顧客の個人情報を含む資料
    • アップロード不可
  • 匿名化済みのインシデント報告書
    • アップロード可

 他にも、個人アカウントの利用を禁止する、または使用するに当たってのルールを整備することも必要だ。

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