OSSはかえって高くつく? 「料金ゼロ」の裏で膨らむ技術的負債とIT部門の疲弊本番環境での利用に潜む深刻なリスク

企業システムを支えているOSSは、約7割以上の企業が明確なガバナンスやセキュリティ対策を欠いたまま運用されている。野放しのOSSが生む3つの問題と、それらを回避するための解決法を紹介する。

2026年03月27日 05時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 AI(人工知能)モデル、クラウドサービス、データベース管理システム、OSなど、エンタープライズのコアテクノロジー領域においてOSS(オープンソースソフトウェア)はますます普及しており、いまやミッションクリティカルなインフラを支える大黒柱になっている。オープンソースプロジェクト推進団体Linux Foundationの調査レポート「世界のオープンソースの現状2025」によれば、調査対象となった企業の83%が「OSSは企業の将来にとって価値がある」と回答した。

 しかし、現場の実態は危うい。これほどOSSに依存しているにもかかわらず、OSSの利用を統括する専門組織「OSPO」(オープンソースプログラムオフィス)を社内に設置している企業はわずか26%にとどまる。明確なオープンソース戦略を定義している企業も34%に過ぎない。

 明確な運用ルールや管理体制がないまま、開発現場の判断で次々と本番環境に組み込まれるOSS。もし深夜にミッションクリティカルなシステムが停止し、その原因が「誰かが勝手に組み込んだ無償のOSS」だった場合、商用ベンダーのように「保守契約に基づく迅速な対応」は要求できない。最終的な責任はIT部門が被ることになる。

 IT部門はこの“理不尽なリスク”からどう身を守ればいいのか。調査結果を読み解くと、企業が陥りがちな「3つの落とし穴」と、それを回避するための現実的な防衛策が見えてくる。

本番環境で「野良OSS」が引き起こす悪夢

 本調査は2025年5月に実施され、北米、欧州、アジア太平洋を含む世界各国のソフトウェア開発者やシステム運用管理者、Cレベル幹部など 、計851人から有効回答を得た。

 OSSの戦略的活用において、企業が直面する3つの課題と解決策は以下の通りだ。

1.セキュリティ評価の属人化

 OSSを導入する際、企業はどのように安全性を評価しているのか。調査では、44%の企業が「プロジェクトコミュニティーの活動レベルを確認する」という、属人的で表面的な指標に頼っている。ソースコードの自動セキュリティテストツールを利用している企業は31%にとどまり、小規模企業では16%とさらに低い割合になる。

 コミュニティーが活発だからといって、そのOSSがエンタープライズレベルのセキュリティ要件を満たしているとは限らない。安全性を確保できる仕組みを構築するためには、単一の明確な基準が必要だ。IT部門は「現場の目視」から脱却し、ソフトウェア部品表(SBOM)の管理や自動化ツールの組み込みといった、体系的かつ機械的なセキュリティ評価体制を確立しなければならない。

2.「12時間以内の応答」を求める矛盾した期待

 本番環境でOSSを利用する企業の71%が、重大な問題発生時にサポートプロバイダーから「12時間未満の応答」を期待している。53%が長期サポート(LTS)の保証を求め、47%が迅速なセキュリティパッチの提供を期待している。

 有償の保守契約を結ばず、無償で利用しているOSSに対し、コミュニティーの善意(ベストエフォート)に商用製品と同水準のSLAを求めるのは、企業のリスク管理としては危うい。有償サポートが不可欠なシステムとして、調査では54%の企業が「ミッションクリティカルなワークロード」を、43%が「機密データを扱うシステム」を挙げた。コミュニティーの善意に頼るのではなく、有償サポートを活用して「障害時の確実なエスカレーション先」を確保しておくことが、IT部門としての説明責任を果たす現実的な運用だ。

3.「ただ乗り」企業と「貢献する」企業の格差

 OSSを「ただで使える便利なツール」として消費するだけの企業は、長期的には技術的負債に苦しむことになる。一方で、プロジェクトへの資金援助や技術的なフィードバックを通じてOSSコミュニティーに直接関与する企業は、その対価として競争優位性を手に入れている。調査では、OSSプロジェクトに参加する専門家の74%が「技術系人材の誘致に有利になる」と回答し、78%が「職場をより良いものにする」と実感している。OSSへの貢献はスタッフの知識向上(77%)やソフトウェア品質の向上(76%)にも直結している。


 ハードウェア/ソフトウェアのセキュリティ要件を定めた欧州のサイバーレジリエンス法(CRA:Cyber Resilience Act)などの法規制が強化される中、OSSの脆弱(ぜいじゃく)性に対する企業の責任は今後さらに重くなる。IT部門は、現場の場当たり的な運用から脱却し、経営層への説明責任を果たすためにも、OSPOのような専門のガバナンス組織を立ち上げ、コンプライアンス管理とセキュリティ確保を推し進めることが、インフラを守り抜く生存戦略につながる。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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