データの爆発的増加に伴い、従来の物理的な機器管理に限界が近づいている。バックアップの不備やパッチ適用の遅れは、災害による取り返しのつかないデータ消失を招きかねない。今見直すべきストレージ運用の盲点は。
物理的なストレージ管理は、かつてないほど過酷な局面を迎えている。サーバルームの熱気や騒音といった肉体的な負担に加え、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)による身代金要求や、思いがけないシステム停止といった見えない脅威が担当者を常に追い詰めている。
「NAS(ネットワーク接続型ストレージ)やRAID(ディスクの冗長化技術)で冗長化しているから大丈夫だ」という安易な過信は、現代の脅威の前では通用しない。データの爆発的増加に伴い、従来の管理手法では追い付けない「負の連鎖」が始まっている。高騰し続ける維持費、複雑化する規制要件、常に不足している専門人材。こうした多重苦の中で、データの整合性を保ち続けるには、どうすればよいのか。
AI(人工知能)技術の台頭は、こうした行き詰まり感を打破する光になり得る。ただし、AIツールを正しく使いこなせなければ、それは管理の手間を増やすだけの新たな重荷になりかねない。
本記事は、ストレージ担当者が直面している10個の切実な課題を浮き彫りにし、その克服に向けた現実的な手段を提示する。強固なインフラを維持し、予測不能な障害からデータを守り抜くために、今何を見直すべきか。
AIツールは今やIT運用の中心だ。企業にとっての命題は、AIツールをいかに有効活用するかに移っている。
鍵となるのは、AI機能を用いてストレージ戦略や管理手順をいかに最適化できるかを見極めることだ。AI分析機能はデータの利用頻度や保存傾向を調査し、最適なストレージ層にデータを自動で移動させる。これによって、データの重要度で保存先を分ける階層化ストレージの効率的な運用を実現する。この機能は、空き容量を圧迫するマルウェアの迅速な特定、データの圧縮/重複排除の効率、データの目録作り(カタログ化)やクレンジングといった管理作業の自動化を可能にする。AI分析機能によってストレージの動向を把握すれば、技術刷新の適切なタイミングの予測も可能だ。こうしたツールを導入することで、トラブルが起きてから動く「後手に回る管理」を、未然に防ぐ「先手を取る管理」に転換できる。
データ保護は、CIO(最高情報責任者)、CTO(最高技術責任者)、CISO(最高情報セキュリティ責任者)ら経営層にとって最優先事項だ。特にランサムウェア攻撃などのサイバーセキュリティ侵害の脅威は、ITリーダーが解決すべき喫緊の課題を生み出している。
ネットワーク境界の防御は第一歩に過ぎない。十分な権限を持つ従業員や外部の攻撃者が、機密システムに侵入してデータを破損させるリスクは常に存在する。そのため、全てのアクセスを疑い、厳格に認証を実施する「ゼロトラストセキュリティ」モデルの導入が不可欠だ。
クラウドストレージを利用している場合、セキュリティへの懸念は特に当てはまる。保存中および移動中のデータを暗号化することは、機密データを安全に保つための重要な戦略だ。クラウドサービスの拠点とは別の拠点など、複数の保存場所にデータをバックアップすることで、データの安全性をさらに高めることができる。
ストレージをオンプレミスで運用する場合、機器用ラックやサーバ、NASやRAIDによって冗長化されたストレージデバイス、電源設備、空調システムといった膨大な設備が必要になる。IT部門は機器を置くための十分な床面積を確保しなければならず、配線のための二重床(フリーアクセスフロア)化が必要になるケースも目立つ。
一方で、クラウドサービスを活用したマネージドサービスを利用すれば、物理的なハードウェア管理の手間を減らすことができる。これによって、設置場所にかかる費用も節約可能だ。
ソフトウェア面では、OS標準の機能から独立した専用アプリケーションまで、多様な選択肢が存在する。低費用で中小規模の要件を実現できるフリーウェアも選択肢の一つだ。導入に当たっては、将来的なデータのアーカイブや復旧手順までをあらかじめ明確にしておくべきだ。
適切な資格と経験を持つストレージ担当者の獲得は、企業にとって極めて重要な課題だ。人員が不足している場合は、IT全般を扱うゼネラリストや、インフラを管理するクラウドベンダーなどの外部の担当者にストレージの業務を割り当てる必要が出て来る可能性もある。
採用時は、確かな経歴に加えてセキュリティ意識の高さも重視しなければならない。クラウドサービスを利用する場合でも、設定ミスを排除するための管理能力が求められるからだ。
優秀な候補者を見つけるには、人材紹介会社の活用に加え、社内公募や担当者からの推薦も有効な手段だ。将来の管理職候補をあらかじめ選定して準備させる「後継者育成計画」を立てることで、中長期的な欠員リスクを抑えられる。
ストレージ管理の目的は、改ざんや盗難の恐れなく、必要なときにデータを取り出せる状態を維持することだ。特にEU(欧州連合)のGDPR(一般データ保護規則)のような法規制への適合は、違反時の巨額な制裁金を避けるためにも重要だ。
規制要件への順守を確実にするには、専用の管理ソフトウェアを導入し、データの原本性を保証する体制を整える必要がある。当面利用しないデータは、将来の訴訟等に備えた電子証拠開示ができるよう、アーカイブとして適切に保管すべきだ。不要になったデータや旧版のデータは、専用ツールを用いてデバイスごと確実に消去する。AI機能による自動スキャンを活用すれば、こうした脅威分析の精度を高められる。
記憶媒体には、ビジネスの変化に適合できる能力が求められる。状況に応じて、ストレージの規模を即座に拡大/縮小できる仕組みが必要だ。
ストレージの容量を増やすには、デバイスの構成要素の更新や交換、ストレージシステムの再構成の他、クラウドストレージなどの外部サービスを用いる方法がある。外部サービスは、自社でラックや床面積を追加投資する必要がないため、高い自由度で規模を変更できる。管理者は現在のストレージ利用状況を評価し、拡張する必要があるかどうかを判断すべきだ。ここでもAI分析機能は、傾向を調査して適切なタイミングを提示する上で役立つ。
ストレージにかかる費用は、IT部門の予算の大部分を占める可能性がある。クラウドサービスは設備投資や維持費を抑えられるというメリットが評価され、普及しているが、自社運用と比較して、オンプレミスシステムとクラウドサービスのどちらが長期的に有利かを慎重に試算すべきだ。
クラウドストレージを利用すれば、自社で用意する物理的な機器や電力、保守に必要な人員を抑えられる。オープンソースソフトウェア(OSS)や再生品の機器を組み合わせることでも、支出を制御できる。
サイバー攻撃などの破壊的な事象は、データの整合性や接続性を脅かす恐れがある。企業は、破壊的な事象の発生後に事業を継続できるよう、必要なデータやインフラを迅速かつ安全に復旧させる手順を確立しておく必要がある。
特にランサムウェア攻撃への対策として、イミュータブル(書き換え不能)なストレージは欠かせない。バックアップデータを自社施設と外部施設の両方に保存するなどの戦略が考えられる。緊急時のデータ復旧テストを頻繁に実施し、確実に検索、抽出できるかどうかを確認しておくことが重要だ。
ストレージインフラに潜む不具合を特定するには、継続的なテストとトラブルシューティングが不可欠だ。検証を怠れば、実際の災害時にデータが復元できないといった致命的な事態を招きかねない。これはコンプライアンス上の問題にも直結する。
AI機能を備えたツールを使用してテストを実行すると、ストレージの潜在的な課題を早期に発見し、大惨事を防ぐために処理速度を最適化できる可能性を押し上げる。特にシステムにクラウドサービスを組み込んでいる場合、接続性や応答性の確認はいっそう重要だ。
パッチ(修正プログラム)の適用は、システムを最新かつ安全な状態に保つための、IT部門が実施すべき最も基本的な活動だ。これによってインフラを最適に稼働させ、適切なバージョンのソフトウェアを使用できる。ストレージシステムにパッチを適用し続けないと、不都合なタイミングでシステム障害が発生する恐れがある。外部のストレージサービスを利用する場合、ベンダーが適切にサービスをアップデートしているかどうか、最新情報を把握しておかなければならない。
上記の主要な10個以外に、以下の課題も存在する。
ITリーダーやストレージ担当者は、インフラ管理の過程で数々の重大な課題に直面している。堅牢(けんろう)で先を見据えたストレージ戦略、AI技術や関連ツールの活用、高度に訓練された担当者。これらをそろえることが、安定したストレージ管理を実現するための鍵となる。
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