複数システムにまたがる月間1万件のアラートに忙殺されていたNTTドコモは、インシデント管理システムの導入で不要な通知を9割削減した。初動対応を3分に短縮し、顧客への影響を防ぐ先回り運用を確立している。
多様なデジタルサービスが展開される現代において、システムの安定稼働はビジネスの生命線だ。しかし、複数の監視ツールから発報される膨大なアラートに運用担当者が忙殺され、重要な障害への対処が遅れる課題は、至る所で発生している。NTTドコモの情報システム部も、かつては月間1万件に及ぶアラートと属人的な情報連携、深夜帯の呼び出しに疲弊していた。
こうした状況を打破するため、NTTドコモはインシデント管理システム「PagerDuty」を導入した。ルールエンジンを活用して月間1万件のアラートを精査し、「見るべき情報」を1000件に絞り込んで明確化している。適切な担当者を自動で呼び出す仕組みを構築し、数時間かかっていた初動対応をわずか3分に短縮した。結果として、月間40時間の非クリティカルな業務を削減し、外部のネットワーク監視センター(NOC)への業務委託が不要な体制へと変容を遂げている。
属人的な対処から脱却し、AI活用を見据えた次世代のインシデント管理とは。NTTドコモが実践する「プロアクティブ運用」とプロセス改善の全貌を解き明かす。
NTTドコモは、インシデント管理システムとしてPagerDutyを活用し、複数のサービスとシステムを横断する監視、運用体制を構築した。2026年3月31日、PagerDuty社が発表した。導入から5年を経て、顧客影響を未然に防ぐプロアクティブ(先回り型)な運用を実現している。初動時間を数時間から3分へと短縮するなど、DevOps(開発と運用の融合)体制の高度化につなげている。
NTTドコモの情報システム部は、多種多様なサービスの開発、運用を担っている。2020年のPagerDuty導入以前は、複数の監視ツールから月間合計1万件に及ぶアラートが発報されており、不要な通知(ノイズ)の削減が急務となっていた。当時は属人的な連携や深夜の呼び出しも頻繁にあり、運用効率化と対処負荷の軽減が大きな課題だった。
PagerDutyの導入に当たっては、AI(人工知能)技術やルールエンジンを活用して不要なアラートを精査。その結果、月間1万件のアラートを1000件へと大幅に削減し、対処すべき情報の明確化に成功した。適切な担当者を自動で呼び出す仕組みによって、初動時間を大幅に短縮。非クリティカルな業務への対応時間を月間40時間削減したことで、外部の監視センターへの業務委託が不要な体制へと変貌を遂げた。
導入から5年間の継続的な改善によって、運用体制はさらに進化している。2026年3月現在は単一の画面で複数サービスの状況を横断的に俯瞰(ふかん)できる他、情報システム部門だけではなくビジネス部門にも通知を飛ばすことで、迅速な情報共有と部門間連携を実現した。異常検出から確認、記録に至るプロセスをルール化し、過去の類似事例をナレッジとして蓄積することで、属人化を排除した組織的な運用を確立している。
特に、通知の緊急度を「アラート(緊急)」と「ワーニング(警告)」に厳密に仕分け、ワーニングの段階で当日中に処置する運用を徹底した。これによって、顧客への影響が顕在化する前に事前に対処できるプロアクティブな仕組みが定着した。
今後は、AI技術や自動化技術を活用した次世代の運用を見据える。AIモデルが過去の処理履歴を学習し、原因分析や最適な対応方針の提案を自動で実施する体制を目指す。インシデントの検出から特定までは機械に任せ、人間は顧客への案内やビジネスリスクの判断といった高度な意思決定に注力できる体制を構築する構えだ。
NTTドコモの小林 潤氏(情報システム部 デジタルデザイン担当 担当課長)は、単一画面で複数サービスの状況を俯瞰できるようになったことは非常に大きな成果だと述べる。情報システム部門とビジネス部門が同じ情報を迅速に把握し、連携する体制が整ったという。同社の大石 悠起子氏(情報システム部 デジタルデザイン担当)は、「2026年3月時点では実務担当者が1人で複数のシステムを担当しているが、PagerDutyによって問題把握や課題特定が円滑に回っている」と語る。今後はAI技術の力を借りて、人手を介さないさらに高度な仕組みにしていきたいと展望する。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「NTTドコモ、PagerDutyで障害対応を迅速化 初動3分に短縮、先回り運用を確立」(2026年3月31日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
瞬時にM365が乗っ取られる――全社員に周知すべき“新フィッシング”の教訓
MFA(多要素認証)を入れたから安心という常識が崩れ去っている。フィッシング集団「Tycoon2FA」が摘発されたが、脅威が完全になくなったというわけではない。

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...