“ファイルが見つからない”を解消 大豊建設がAWSで作った「自社専用AI」とは若手がベテランに聞きづらい状況を解消

従業員が社内規定や資料を探す際、どこに何があるか分からなくなる課題を抱えていた大豊建設。AWSに独自の生成AIを構築し、検索の手間を劇的に削減した。システムの構成と、現場に定着させるための工夫を紹介する。

2026年04月23日 05時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 総合建設会社の大豊建設は、社内情報へのアクセス性や文書作成に要する手間の増大、中堅従業員の不足による知識共有の難しさという積年の課題に直面していた。監査室の指摘や法改正で頻繁に更新される社内規定は、複雑な階層に分けられたフォルダに格納され、必要な情報に素早くたどり着けない状態だった。会議の議事録作成も担当者に重い作業負荷を強いる業務になっていた。

 これらの課題を解決する仕組みとして、大豊建設は2025年6月に生成AI(AI:人工知能)を活用した「大豊 AI」の全社展開を開始した。導入から約8カ月で307人の従業員が利用し、累計利用回数は3万2709回に上る。社内規定の検索機能だけで約250時間の業務時間削減を実現しており、文書作成作業の効率化を含めるとさらに大きな効果をもたらした。

 大豊建設は自社業務に最適化された生成AIシステムをどのような技術で構築し、現場に定着させたのか。

自社専用AIで“ファイル迷子”から脱却

 大豊 AIは単なる検索システムにとどまらず、現場の具体的な業務プロセスに組み込まれている。よく利用される機能の一つが、従業員がファイルをアップロードして内容について対話できる「ファイルチャット」だ。会議の文字起こしテキストをPDF化して読み込ませ、「議事録を作成して」と指示するだけで初稿が生成される。国内だけではなく、現地の言語が使われる海外現場のミーティングでも活用され、議事録作成に割く人的リソースを大幅に削減している。

 システム定着の鍵になったのが、AI初心者向けの「ユースケース別検索」機能だ。当初は従業員自身がプロンプトを入力する仕様だったが、これが利用の障壁となっていた。そこで、管理者が「文書校正」「メール作成」など8種類の一般的なユースケースをテンプレートとして事前設定し、従業員は選択するだけで利用できる仕組みに改善した。若手従業員が専門的な工法の注意点などを大豊 AIに事前相談することで、ベテラン従業員に質問する際の心理的負担を軽減する効果も得られている。

 これらの機能を実現する技術インフラとして、大豊建設はクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)を採用した。既存の社内アプリケーションの大半がAWSで稼働しており、生成AIを組み込む際の連携のしやすさや、独自の要件に合わせられるカスタマイズ性を評価したためだ。実装における各種サービスの集約の容易さ、充実したドキュメントなどの支援体制も選定の決め手になった。

 システムの中核には、さまざまな基盤モデルをAPI経由で利用できる生成AIサービス「Amazon Bedrock」を据えている。社内規定や政府の法令サイトなどの多様なデータを格納するストレージ「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)、アプリケーションロジックを実行するコンピューティングサービス「AWS Lambda」などを連携させる構成だ。開発過程では検索精度の向上が課題になり、当初用いていた検索エンジン「Amazon Kendra」から、RAG(検索拡張生成)機能「Amazon Bedrock Knowledge Bases」に移行した。PDFファイルをページ単位で丸ごと取り込んで処理できる性能が、社内規定に含まれる表の読み取り精度向上に寄与している。

 大豊建設は単なる情報検索から、AIエージェントを活用した業務プロセスの自動化を視野に入れている。検討を進めているのが、「Amazon Bedrock AgentCore」を利用した施工計画書と社内資料の作成支援だ。過去データの検索から計画書の素案作成までをAIエージェントが自律的に処理することで、現場担当者の工程を大幅に効率化する狙いがある。最新のエージェント技術を見据えた継続的な機能拡充は、建設業界が直面する知識継承や業務効率化の課題に対する有効な解決策になる。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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