VDI撤廃はまだ早い?
Windowsアプリが依然多数派? ブラウザ移行の幻想と情シスが直面する二重管理のわな
ブラウザへの集約が進む一方、企業内では依然として平均126個のWindowsアプリケーションが稼働している実態が判明した。ブラウザを単なるアプリケーションではなく「OS」と捉え、管理手法を再定義すべき時が来ている。
最近、ネットワークセキュリティとゼロトラストを専門とする同僚のジョン・グラディ氏とともに、ブラウザの管理とセキュリティに関する調査を実施した。そこから非常に興味深い事実が幾つか判明した。
グラディ氏と私は、それぞれ異なる視点でブラウザを捉えている。私にとってブラウザは、数十ものアプリケーションや拡張機能にアクセスするための「アプリケーション」そのものだ。一方、グラディ氏にとっては、組織のゼロトラスト戦略に密接に関連する「安全なアクセスプラットフォーム」である。彼の視点による分析も後日発表される予定なので、ぜひ注目してほしい。
私の視点で特に際立っていたのは、エコシステムの多様性だ。現場が複雑であることは予感していたが、それを数値化できたのは大きな収穫だった。本稿では、アプリケーションエコシステムについての主要な調査結果を紹介する。
Windowsアプリとブラウザベースのアプリの普及状況
現代のIT環境はブラウザベースのアプリケーションが主流だと思われがちだ。そこで、WindowsアプリケーションとSaaSなどブラウザベースのアプリケーションがそれぞれどの程度普及しているかを調査した。
その結果、1組織が使用するアプリケーションの平均数は、Windowsベースが約126個に、ブラウザベースは約109個だった。計算を二度見したが、間違いではない。ITおよびサイバーセキュリティ担当の回答者は、依然としてWindowsアプリケーションの方がブラウザベースよりも多いと推定している。Windowsに長く携わってきた私にとっても、これは驚きの結果だった。
一方で、ナレッジワーカーが1日にブラウザを使用する時間を尋ねると、状況はより鮮明になった。回答者の64%が「ユーザーは1日の半分以上をブラウザで過ごしている」と答え、平均すると勤務時間の56%がブラウザ上での業務に充てられていた。つまり、Windowsアプリケーションは根強く存続しているものの、利用頻度はブラウザの方が高いのだ。
調査後の聞き取りでは、ブラウザとローカルアプリケーションのどちらを多用するかは、ユースケースや職種(ペルソナ)に大きく依存することが分かった。例えば、Microsoft Officeに依存する制作職の私は、ローカルアプリケーションがなければ仕事にならない。私の業務の75~80%はローカル環境だ。しかし、別の職種ではほぼ100%がブラウザベースというケースもある。
最終的に「どちらが多いか」という問いへの答えは出た。しかし、情シス部門がこれら全ての配信、管理、セキュリティ確保を担わなければならない状況に変わりはない。どこに注力すべきかを知るヒントにはなるだろう。
管理外ブラウザという死角
組織が公式にサポートしているブラウザを尋ねたところ、Googleの「Chrome」(88%)とMicrosoftの「Edge」(84%)が上位を占めた。興味深いのは、Appleの「Safari」やMozillaの「Firefox」が、サポート対象外のまま広く利用されている点だ。
Safariを公式サポートしている組織は46%、Firefoxは43%だが、サポート外で利用されている割合はSafariが26%、Firefoxが32%に上る。これは管理とセキュリティの死角となっており、以下の理由から懸念される。
- 可視化の欠如:存在を把握していなければ、アップデートや適切なセキュリティ設定の維持が困難になる
- 拡張機能:ブラウザの拡張機能は強力だが、デバイスのリスクを増大させる可能性もある。管理外のブラウザでは拡張機能も管理できず、可視性の問題に直面する
- シャドーITとシャドーAI:組織がChromeを標準化していても、MacBookユーザーはデフォルトのSafariを使いがちだ。サポート外のブラウザ利用は、情シスが抑制したい活動の温床になり得る
これらは直ちに重大な危機を招くわけではない。しかし、アプリケーションの利用実態や拡張機能の管理状況を鑑みると、この領域にはより注意を払うべきだ。ブラウザが業務の主要なインタフェースになればなるほど、何にアクセスしているか、何(拡張機能)に見られているかを完全に把握する必要がある。
また、AIブラウザについても調査した。この調査は2025年12月から2026年1月にかけて実施したもので、AIブラウザはまだ市場に登場したばかりだった。期待感はあるものの、エンタープライズ向けの準備状況に対して過信気味な傾向だった。専用ブラウザが登場するのか、ChromeやEdgeにAI機能が組み込まれるのかは未知数だが、私は後者の可能性が高いと考えている。
VDIとDaaSの利用実態
セキュリティベンダーから「VDIはもう古い」という話をよく耳にするが、実際のVDIおよびDaaS(Desktop as a Service)環境の利用目的も調査した。
ブラウザベースのアプリケーション配信を主目的としているVDI/DaaS環境は極めて少ない。VDI/DaaSを利用してブラウザアプリケーションを配信していると回答したのは52%だった。そのうち53%はWindowsアプリケーションとデスクトップ、ブラウザアプリケーションをバランスよく組み合わせており、28%は主にWindows環境を提供していた。
「ほぼブラウザベース」と答えたのはわずか18%で、「ブラウザアプリケーションの配信のみ」という回答は1%にすぎなかった。ここから、2つの視点を共有したい。
- ベンダーへ:VDI環境は複雑で、極めてWindows寄りだ。ブラウザアプリケーションをオフロードしてVDIの負荷を減らす機会はあるかもしれないが、既存のインフラやライセンスに投資している顧客にとって、その移行コストは見合わない可能性がある。Windowsアプリケーションが1つでもある限り、VDIの完全リプレースは難しいという現実を忘れてはならない
- 組織へ:ブラウザアプリケーションを配信するためだけにVDIを維持している場合、優れた代替手段がある。ただし、コストや複雑さが喫緊の課題でないなら、現状維持も1つの選択肢だ。それでも、組織内で増え続けるブラウザとアプリケーションを適切に管理するために、今すぐ対策を検討すべきだろう
ブラウザアプリケーションは多くのWindowsアプリケーションを置き換えてきたが、組織内では依然として両者が共存している。もしWindowsアプリケーションを全てブラウザベースに移行できるなら、とっくに実現しているはずだ。つまり、今残っているWindowsアプリケーションとは、今後もしばらく付き合っていくことになる。AIがこの状況を変える可能性はあるが、逆に推論処理がデバイス側で行われるようになれば、ローカルアプリケーションが再び活発になるかもしれない。
いずれのタイプでも、管理とセキュリティ対策は必要だ。重要なのは、ブラウザベースのアプリケーションは管理モデルが異なるという点だ。ブラウザ自体がOSのような役割を果たし、拡張機能は個別のアプリケーションのように機能する。
調査が示す通り、アプリケーションの利用形態は多岐にわたり、職種によっても大きく異なる。新しい組織はブラウザに依存し、伝統的な組織はWindowsを使い続けるだろう。この混在した状況は、今後も続いていく。
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