高い処理能力を求めるCADデータと、膨大な容量を要求される検証データ。要件が異なる2つのデータを単一システムに集約すると、運用の硬直化や費用増大を招くリスクがある。マツダがこの難題を排した解決策とは。
マツダは、自動車の設計開発に伴うデータの増大と運用費用の高止まりを解決するため、新たなストレージインフラを構築した。Dell Technologiesのスケールアウト型NAS「Dell PowerScale」を採用し、2025年12月に全面本稼働を開始した。
新システムの導入によって、マツダはストレージの容量単価を従来の約10分の1に削減するという劇的な成果を達成。総容量も約10P(ペタ)Bと従来の2.5倍に拡大させ、年間数百TB規模の検証データの受け皿を確保した。
今回のインフラ刷新の本質は、単なる大容量化や費用削減の成功にとどまらない。極めて高い処理能力が求められるCAD(コンピュータ支援設計)データと、膨大なストレージ容量が必要な検証データという、性質が異なる2つのデータをいかにして単一のシステムに集約したのか。そこには、レガシー化した運用プロセスの打破と、将来のAI技術活用を見据えたマツダの技術戦略があった。
データ増大の裏にあった開発現場のリアルな痛みと、相反する要件を両立させた独自のシステム構成、次世代の自動車開発に向けた戦略を解き明かす。
マツダは、数式や物理モデルを活用した「モデルベース開発」を約30年間にわたって推進してきた先駆的な企業だ。しかし、近年は大きな壁に直面していた。先進運転支援システム(ADAS)の高度化や進化に伴い、実験の計測データや制御システムデータといった設計開発データが、年間数百TBという爆発的なペースで急増したためだ。
従来のシステム構成では、大容量のデータを管理するためにストレージとテープ装置を組み合わせた運用方針を採用していた。しかし、この仕組みは過去のデータを読み出すまでに時間を要し、開発現場でのデータの利便性を著しく損なう。結果として、データの退避や管理プロセスそのものが老朽化し、運用の煩雑さが深刻な問題になっていた。
設計業務の中核を担うCAD用ストレージについても別の問題を抱えていた。継続利用によって運用プロセスが硬直化し、維持管理費用が高止まりしたままになっていたのだ。マツダのIT部門は、大容量を要求する開発用データと、高い処理パフォーマンスが求められるCAD用データという、性質の異なる2つのデータの要件を同時に満たしつつ、費用を劇的に引き下げる新しいインフラの構築を迫られていた。
マツダがこの難題を解決する手段として選択したのが、Dell TechnologiesのスケールアウトNASであるDell PowerScaleだった。選定において評価されたのは、大容量データの処理と高性能という異なる要求を、単一のストレージシステムで両立できる拡張性だ。ノード(サーバ)を追加するだけで、追加した機器の数に正比例して容量と性能を無駄なく拡張できる構造がマツダのニーズに合致した。
構築された新システムは、メインのストレージとして「Dell PowerScale A3000L」を配置し、バックアップ用には「Dell PowerScale A300L」を組み合わせる構成だ。これによって、将来的なデータ増大に対しても、ハードウェアを追加して自由に拡張できるシステム構成を整備した。
運用を高度化するため、専用の管理ツールも全面的に導入した。ストレージ全体の稼働状態や利用状況を詳細に監視、可視化する「InsightIQ」をはじめ、業務データの誤消去といったトラブルに備えるスナップショット機能「SnapshotIQ」が組み込まれた。重要な設計データを強固に保護するため、筐体(きょうたい)間レプリケーションツールである「SyncIQ」を用いた効率的なバックアップ対策も実装した。
新システムへの完全移行が完了したことで、マツダの開発現場は一変した。最大の効果は、ストレージの総容量が従来の約4PBから約10PBへと約2.5倍に拡大した点にある。これによって、これまで運用管理担当者の大きな負担となっていたテープメディアへのデータ退避作業そのものが不要になった。
ストレージの大容量化と性能向上によって、現場のエンジニアからの「容量不足」や「性能低下」に関する問い合わせや苦情がなくなったこともメリットだ。IT部門が領域の割り当てやトラブル処理に費やしていた時間や労力、工数は大幅に軽減され、コア業務に集中できる体制が確立された。
マツダのMDI & IT本部エンジニアリングシステム部で主幹を務める鐡本雄一氏は、今回の刷新について、「レガシー化していたシステムを刷新したことで、加速するデータ増大や運用の課題を効果的に解消できた」と語る。その上で、今後は蓄積されたデータを次世代のAIや生成AIの利活用を下支えするためのデータレイクとして発展させていく意向を示した。
製造業のデジタル革新において、AIモデルの精度を高めるための元データの収集と蓄積は大きな壁だ。マツダは、全ての設計開発データを単一の高性能なシステムに集約できたことで、蓄積された資産から新たな知見を創出する一歩を踏み出した。今回のストレージ集約は、単なる費用削減にとどまらず、自動車開発の未来を変革するための強固なインフラとして機能し始めている。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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