新東通信は、オロのクラウドERP「ZAC」を導入し、実質約半年という短期間でレガシー基幹システムを刷新した。移行を成功に導いた3つの工夫は。
レガシー基幹システムの刷新は、多くの企業にとって負担を伴う。業務への影響を抑えながら、短期間で新システムへ移行するには、単に新しい製品を導入するだけでは不十分である。業務要件の絞り込み、カスタマイズの抑制、現場への段階的な浸透が欠かせない。
総合広告会社の新東通信は、長年利用してきたスクラッチ開発の業務システムと、オフコン基盤で稼働する会計システムを刷新した。旧システムのサポート終了まで実質半年程度しか残されていない中、同社はオロが提供するクラウドERP「ZAC」を導入し、基幹システムのリプレースを完了した。2026年5月28日、オロが発表した。
ERP刷新を半年で実現した同社の工夫は何だったのか。同社の取り組みから3つを紹介する。
新東通信は当初、別のクラウド型業務プラットフォームでシステム刷新を進めていた。営業のパイプライン管理やBIツールなど、先進的な管理機能への期待があったためだ。しかし検討を進める中で、基幹システムとして必要な機能が不足していることが判明した。
そこで同社はシステム選定をやり直し、販売・発注プロセスや案件別損益管理といった日々の基幹業務を支えられるかどうかを重視した。
特に重要だったのが、広告業特有の原価管理だ。同社のビジネスでは、1つの売り上げに対して複数の原価が発生する。その結果、売り上げと原価が1対1でひも付く物販・商社向けのシステムは同社のビジネスモデルに適合しないため除外した。
さらに、通常は販管費として処理される会議費であっても、案件に直接関係する場合は原価として計上する必要があった。費用科目だけで固定的に処理するのではなく、用途に応じて原価として扱える柔軟性が求められたのである。
短期間で刷新するには、「できることが多いシステム」ではなく、「自社の基幹業務に必要なことを確実に実現できるシステム」を選ぶ必要がある。新東通信はこの条件を明確にしたことで、方針を堅持することができた。
新東通信がZACを選んだ理由の1つは、広告業での導入実績が多かったことだ。広告業特有の商習慣や業務に対応した機能がそろっていれば、カスタマイズをしなくても自社業務にフィットする可能性が高いと考えたのである。
実際の導入では、ZACの標準機能を最大限活用し、導入後のバージョンアップに影響するカスタマイズは実施しない方針を徹底した。出力帳票については自社に合わせた調整を進めたものの、ZAC本体へのカスタマイズは運用でカバーし、原則ゼロとした。
例えば、同社は「案件取込機能」を活用した。広告代理業では、SNS広告などで複数クライアント分の広告費が媒体社からまとめて請求されることがある。クライアント別、案件別に粗利を管理するには、それぞれの案件へ広告費を正しく振り分けて登録する必要がある。案件取込機能を使えば、何十件、何百件という案件に対して、指定した金額を原価として一括登録できる。
管理会計やデータ分析についても、ERP本体を作り込むのではなく、API連携した外部ツールを活用する方針を採った。独自の管理会計や業績評価の要件を全てERP側で実現しようとすれば、多くのカスタマイズが発生する。そこでデータ加工や分析は外部ツールに任せ、ERP本体は標準機能を中心に利用したのである。
この判断によって、上流工程やシステム設定の期間を約2カ月に短縮できた。カスタマイズを減らすことは、単に開発工数を抑えるだけではない。導入後の保守性やバージョンアップ対応を維持するうえでも重要な判断である。
短期間での刷新では、システムだけでなく現場業務も大きく変わる。新東通信は基本的にZACに合わせて業務を変える方針を採ったが、現場に混乱が生じる恐れがある業務については、既存フローを残した。
無理に全てを初期導入時で変えるのではなく、優先順位を付け、2次フェーズ以降の検討課題として整理したのである。この段階的な変革によって、短期間での稼働開始と現場の受け入れやすさを両立した。
また、上流工程やシステム設定を短縮した分、約3カ月をユーザーテストに充てた。長年使い続けた旧システムからの移行では、稼働直後に多くの問い合わせや要望が出る。十分なテスト期間を確保したことは、混乱を抑えるうえで重要だった。
導入後の効果として大きかったのが、紙中心の業務フローからの脱却である。以前は、システムから出力した紙の書類に証憑を貼付し、上長が押印した後、経理へ回付していた。売上、発注、経費精算など、ほぼ全ての業務が紙書類を中心に回っていた。
ZAC導入後は、申請や承認がワークフロー上で完結するようになった。その結果、年間で段ボール約50箱分に相当する書類を削減した。案件の粗利や請求・支払いの処理状況もシステム上で確認できるようになり、分厚い書類ファイルを探す必要もなくなった。
新東通信の事例が示すのは、レガシー基幹システム刷新の成功には、製品選定だけでなく導入方針の明確化が欠かせないということだ。基幹業務に必要な要件を絞る。標準機能を活用し、カスタマイズを抑える。現場への影響を見極めながら段階的に移行する。この3つの工夫が、半年という短期間での刷新を可能にしたのである。
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