研究員約400人の予実管理を2人体制で継続
味の素が挑んだ“脱Word・脱Excel” 月次集計1週間を2日にした予算管理改革の裏側
ログラスは、味の素の食品研究所がログラスの「Loglass 経営管理」を採用したと発表した。月次報告の準備期間を約1週間から約2日に短縮し、脱Excel、脱Wordを成功させた。採用の決め手や導入プロセスを紹介する。
味の素は、食品研究所における研究開発の予算管理業務を効率化するため、ログラスが提供するクラウド経営管理システム「Loglass 経営管理」を採用した。ログラスが2026年6月19日に発表した。これまでExcelとWordを中心に進めていた月次報告の作業を見直し、実績管理から報告までを一気通貫で仕組み化したことで、月次報告の準備期間を約1週間から約2日に短縮した。導入はどのように進めていったのか。
“脱Word・脱Excel”に至るまで現場はどうしていた?
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味の素の食品研究所は、食品と健康に関わる製品開発や研究を担う組織だ。約400人の研究員が在籍し、3つのセンターと10を超えるグループで構成されている。2030年に向けてフード&ウェルネス領域の研究基盤を支え、研究サイクルをより速く回すことをミッションとしている。
一方で、研究員の増加に伴い、予実管理の業務量は年々増えていた。担当者が赴任した当時、研究員は300人弱だったが、現在は約400人に拡大している。それにもかかわらず、予算管理の実務を担う体制は2人のままだった。
従来の予算管理では、必要な情報が各所に散在していた。各グループに依頼してデータを出してもらい、Excelやメールで届いた情報を手作業で集計する。月次定例会の報告資料は、実績データが出てから作成に約1週間かかっていた。四半期ごとの予算策定では、最終集計まで約1カ月を要していた。
問題は、作業量だけではなかった。普段の解析に使うExcel、上長向けのWord報告書、食品事業部全体で使う管理フォーマットがそれぞれ異なり、項目の粒度や表現も統一されていなかった。Excelで集計した後、Wordに転記して報告資料を作るという作業が発生し、数字の確認や資料作成に多くの時間を取られていた。
さらに、グループ長には基幹システムのIDが付与されていなかったため、予算実績の詳細を現場が直接確認しにくい状態だった。結果として、予算管理は担当者の経験や手作業に依存し、属人化していた。
「脱Excel」だけではなく「脱Word」も必要だった
食品研究所が重視したのは、Excelの集計作業をなくすことだけではなかった。実績の確認から上位層への報告までを1つのツール上で完結させることだった。
従来は、Excelで数値を集計し、その結果をWordの報告書にまとめ直していた。フォーマットが複数存在するため、同じ数字を別の表現や粒度に加工する作業も発生していた。こうした作業は、一見すると事務処理に見えるが、担当者の時間を奪い、報告の遅れや確認負荷の増大につながる。
Loglass 経営管理を選定した理由の1つは、実績の表示、集計、分析、報告を1つの環境で実施できる点だった。基幹システムのデータを取り込み、食品研究所独自の集計レイヤーに変換して表示できることも評価された。上長ごとに異なっていた項目体系を一本化できる点も、採用の決め手になった。
つまり、食品研究所の取り組みは「Excelを別のツールに置き換える」だけではない。Excelで集計し、Wordで報告書を作り、メールで確認するという分断された業務フローそのものを見直すものだった。
上長交代のタイミングで報告フォーマットを一本化
導入は3つのフェーズに分けて進められた。第1フェーズでは、月次の実績管理を構築した。中心になったのは、基幹システムの勘定体系と、食品研究所独自の集計レイヤーを紐付ける作業だ。
基幹システムの勘定コード体系、社内分析に使う体系、上長に報告する体系はそれぞれ異なっていた。そのため、各科目をどのように分解・結合し、Loglass 経営管理上で表現するかが難所になった。このマスタの紐付け作業では、ログラスのカスタマーサクセスによる伴走支援を受けながら構築を進めた。
同時に、上長が交代するタイミングを活用して、報告フォーマットの一本化も進めた。大企業では、上長の方針によって報告フォーマットが変わることがある。食品研究所はその切り替わりを、既存フォーマットを見直す機会として捉えた。
これにより、従来のWord報告書を廃止し、会議ではLoglass 経営管理の画面をそのまま提示する運用に切り替えた。ボタン操作でレポートを表示し、一画面で状況を把握できるようにしたことで、報告資料を作るための作業を大幅に減らした。
月次報告は1週間から2日に短縮 現場も数字を見るように
導入後、月次定例会に向けた報告準備期間は、約1週間から約2日に短縮された。資料作成が早まったことで、定例会議自体も従来よりも早い時期に開催できるようになった。
研究員数は増え続けているが、予算管理の体制は2人のまま維持できている。Loglass 経営管理によって月次管理を効率化したことが、増大する業務量の吸収につながっている。
現場にも変化があった。10を超えるグループのグループ長にLoglass 経営管理のアカウントを付与し、予算実績を可視化したことで、グループ長の予算管理に対する意識が高まった。
以前は、グループ長が基幹システムの詳細データを直接確認する手段が限られていた。現在はLoglass 経営管理を通じて基幹システムのデータを確認できる。これにより、費目の付け間違いをグループ長自身が発見するケースも出てきた。
基幹システムの勘定科目は複雑で、本来とは異なる費目で計上されることがある。従来は経費担当者が最終チェックで気付き、修正を依頼していた。現在は、グループ長がLoglass 経営管理上で「この費目は違うのではないか」と気付き、グループ内で修正を完結できるようになった。
これは、単に管理部門の作業を減らしただけではない。予算実績を現場に見える形で共有したことで、現場が自ら数字を確認し、修正し、判断する体制に近づいたことを意味する。
「脱Word・脱Excel」の先にあるR&D投資の見える化
食品研究所では現在、第2フェーズとして、予算や見込み情報の取り込みを進めている。食品研究所外の部門から届く情報は、メールやExcelなど形式がバラバラだった。今後は統一フォーマットを作成し、Loglass 経営管理へ一括で取り込む方針だ。
第3フェーズでは、非財務データとの連携による分析の高度化を構想している。第1フェーズで月次実績管理の効率化と自動化を実現し、予実管理の「守り」を固めた。次は「攻め」の段階として、R&Dの研究費の使い方を可視化し、研究投資の費用対効果を分析できる指標づくりに取り組む。
食品研究所の事例は、「脱Word・脱Excel」が単なる業務効率化にとどまらないことを示している。Excelで集計し、Wordで報告する作業をなくすことで、担当者の負荷を下げるだけでなく、現場が同じデータを見ながら予算を管理する環境を整えた。
今後、研究が効率的に進んでいるかどうかを判断できる指標を整備できれば、研究投資の意思決定をより高度化できる。味の素は、Loglass 経営管理を単なる集計ツールではなく、R&D投資を最適化するための基盤として活用していく考えだ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「味の素、食品研究所にLoglass採用 予算管理を仕組み化し月次集計を2日に短縮」(2026年6月21日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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