コスト増と誤回答のわなを回避せよ Oracleが目指す経済的なAIの最適解情シスのガバナンスと現場の生産性を両立

OracleがAI Agent Studioを刷新し、ノーコードからプロコードまでを統合した。LLMの不確実性を排除し、企業のワークフローに信頼性と経済性をもたらす。現場と開発者の分断を解消する処方箋に迫る。

2026年07月16日 05時00分 公開
[Don FluckingerTechTarget]

 米Oracleは2026年7月14日(現地時間)、AIエージェント開発を一元化するため、Fusionアプリケーション向け「AI Agent Studio」を更新。新たにAIネイティブビルダー機能の追加を発表した。

 同ツールは、ノーコード、ローコード、プロコードの各ツールを組み合わせている。ビジネス部門のユーザーによる単純なタスク用エージェントの作成から、開発者によるGitベースのワークフローや「Claude Code」を用いた複雑なエージェント構築まで幅広く対応する。開発者はサンドボックスや使い慣れたテストツールも利用可能だ。

 また同社は「Fusion Agentic Applications」をリリースした。これは、CX(顧客体験)、人事、ERP(統合基幹業務システム)、サプライチェーンにわたるFusionクラウドアプリ内で、Oracle製やサードパーティー製のAIエージェントおよびAI自動化を管理するネイティブな実行アプリだ。AIネイティブビルダー機能により、Fusionクラウドアプリ内でFusion Agentic Applicationsをネイティブに作成および実行できるようになる。

既存のアプリをAI時代に合わせて更新

 Constellation Researchのアナリストであるホルガー・ミュラー氏は、これらの新しいツールやアプリが、同社の以前からの「エージェントスウォーム(複数の自律型エージェントの連携)」オーケストレーションに基づいていると述べる。Fusion AI Appsは、既存のアプリをAI時代に合わせて更新するものだという。

 ミュラー氏は「既存のFusionアプリにエージェントを追加して使うのではない。エージェントが得意なことを実行するための新しいアプリを構築し、人間がやるべきことを切り分けるのだ」と話す。

 PegasystemsやAdobe、GenesysなどCX分野のクラウド企業は、決定論的なワークフローと確率論的なワークフローを組み合わせたり、AIエージェントの月額コストに上限を設けたりすることで、LLM(大規模言語モデル)の呼び出しを制限しようとしている。

 ミュラー氏によれば、2025年の同時期と比較して、企業はもはやLLMで全てを解決しようとは考えていない。むしろ、ワークフローで論理的・経済的に合理的な場所にのみAIを適用したいと考えている。

 「エージェントが売上数値を返すか返さないか、そこに確率論的な要素はない」(ミュラー氏)

 Fusion Appsは単なるAIの器ではない。債権回収の向上、人員の最適化、サービスへの問い合わせ削減といった具体的な成果を目的としたビジネスアプリケーションである。一方で、Fusion環境内のセキュリティやガバナンスルールなど共通の機能を活用しているとOracleのエージェントプラットフォーム部門責任者であるカウシャル・クラパティ氏は説明する。

 クラパティ氏は「LLMによるAI支援の推論と、決定論的な実行を組み合わせている。これにより、LLMの柔軟性とパワー、そしてエンタープライズワークフローに必要な予測可能性、信頼性、一貫性、スピードを両立できる」と語る。

開発モードを統合するStudio

 Fusion Applications向けAI Agent Studioは、自然言語によるコーディングツールと、アプリケーションのライフサイクル管理、ローカル検証、デバッグ、CI/CDワークフローを含むプロコード環境を統合している。

 クラパティ氏によれば、これにより、ワークフローのボトルネックを把握している現場の担当者が開発者と協力し、新しいアプリで課題を解決できるようになるという。開発者ではないユーザーがエージェントの動作を記述し、必要に応じて開発者が企業のテストデプロイ手法を適用するといった連携が可能だ。

 プロの開発者は、AI Agent Studioと連携する「OpenAI Codex」やAnthropicの「Claude Code」といった一般的なAIコーディングツールを使用して、AIエージェントやAIスキル、Fusion Agentic Applicationsを構築することもできる。

 「ビジネスユーザーが自然言語インタフェースを使いこなせるなら自分で構築できる。また、迅速にプロトタイプを作成して開発者に見せ、『これをCodexで、あらゆるガードレールやテストケースを組み込んで堅牢(けんろう)化してほしい』と依頼することも可能だ」とクラパティ氏は話している。

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