企業のAI活用成熟度が回復傾向にある一方で、旧式システムに新技術を継ぎはぎする事態が起きている。先進的な企業と、システム連携に行き詰まる企業の決定的な差はどこにあるのか。
深刻化する人手不足や市場変化への適応のために、企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環としてAIツールの業務活用を急いでいる。しかし、大半の企業が単一の定型作業を置き換える段階にとどまっており、部門をまたぐ複雑な業務プロセスの効率化には至っていないのが実情だ。経営陣が先行して先端技術への投資を拡大させる一方で、現場でそれを支えるデータ基盤やインフラの整備が追い付いていないというギャップが深刻化している。
ServiceNow Japanは、企業のAI活用状況を分析した調査報告書「Enterprise AI Maturity Index 2026」日本語版を公開した。本報告書によると、世界各国の企業のAI成熟度スコアは100点満点中51点となり、落ち込んでいた2025年の35点から16ポイントの顕著な回復を見せた。自律的にタスクを処理するAIエージェントを導入している企業の割合は59%へと急増しており、30%の企業が試験運用段階にあるなど、投資意欲の高さが数字として表れている。
しかし、AIエージェントを複数のシステムを連携させて完全な自律型ワークフローとして構築し、運用レベルに落とし込めている企業は全体の9%に過ぎないことが明らかになった。大半の企業は、定型作業を処理するためのツールとしてAIツールを使うだけにとどまっている。
大半の企業が行き詰まる「9%の壁」を突破し、企業全体でのAI活用を軌道に乗せている企業群は、どのような構造改革を進めているのか。
本調査は、世界19カ国、12業界に属する経営層4500人(うち日本300人)および従業員2000人(うち日本100人)を対象に実施されたものだ。
企業のAIの成熟度は、「ビジョン・リーダーシップ」「組織管理・文化」「データの近代化」「ガバナンス」「人材・スキル」「活用ワークフロー」「価値創出」の7つの指標で詳細に測定されている。全体の平均スコアが51点にとどまる中、導入において卓越した成果を上げる上位21%の「ペースセッター」と呼ばれる先進企業群は、平均スコア74点という高い水準を記録している。この差を生み出しているのは、豊富な導入予算の有無や特定の業種に属しているかどうかではない。既存の仕組みに新しい技術を無理に組み込むか、それとも新しい技術を前提として組織や仕組みを根本から作り直すかという、初期段階での設計思想の違いだ。
成功を収めているペースセッターから学ぶべきポイントは、大きく3点に集約される。
1つ目のポイントは、データ基盤の整備と連携の仕組みだ。一般的な組織が、分断された旧来のシステムの上に新しい技術を個別のツールとして後付けしているのに対し、先進的な企業群は全社横断的なデータの統合基盤をあらかじめ構築している。調査において、全体の71%の経営幹部が、データの精度やアクセス性、管理体制の不備を最大の壁として挙げている。断片化されたデータ基盤のままでは、AIエージェントは局所的な作業の補助にとどまり、部門をまたぐ連続した業務を自律的に処理できない。先進企業は、システム間の境界をなくし、一貫した処理を可能にするインフラを構築することで、この問題を解決している。
2つ目のポイントは、ガバナンスの事前設計だ。先進企業は新しいシステムを導入してから運用ルールを定めるのではなく、導入前からリスク評価や法令順守の枠組みを事業プロセスに組み込んでいる。先進企業の61%がシステムのテストや監査のプロセスを確立しているのに対し、それ以外の企業ではわずか10%にとどまっている。透明性を確保し、人間の判断が介入するポイントを明確に定義しておくことで、安全性を確保しながら展開速度を高めることができる。
3つ目のポイントは、人間と機械が協働するための組織文化と人材育成だ。AIツールの機能が高度化するにつれて、従業員は自身の業務が奪われるのではないかという不安を抱きがちだ。未来の働き方を支える長期的な人事計画を持たない企業は59%に上り、新技術に関する十分なトレーニングを受けていないと感じている従業員は42%に達する。先進企業は、新しい技術を人間の能力を拡張する手段として位置付け、従業員が付加価値の高い業務に集中できるよう、業務プロセスそのものを再設計し、個別最適化された研修を提供している。
国や地域ごとの固有の課題も浮き彫りになっている。日本市場においては、コンセンサスを重視する意思決定の遅さが技術進化に追随する足かせとなっている。日本の従業員の約60%が「自社の経営陣はAI時代の課題や変化に追い付いていない」と感じており、現場の期待と経営層の実行力に大きなギャップが見られる。米国では経営層のコミットメント不足が指摘され、英国では雇用喪失への懸念が強く、フランスでは顧客からの新技術への抵抗感が強いなど、地域によって乗り越えるべき壁は異なる。
今後の展望として、各企業は2年後を見据え、事業部門横断のワークフロー統合を現在の16%から37%へと倍増させる意欲的な計画を描いている。しかし、土台となるデータやインフラの刷新を怠ったままでは、その目標達成は困難だ。ServiceNowのグローバルイノベーション責任者であるブライアン・ソリス氏は、「従来の企業は人間の判断力を割り当てるための制約の中にあったが、AIはその制約を取り払うものだ」と指摘し、人間が本来の創造性や判断力を発揮すべき場所を示す生きたマップ(ビジョン)の重要性を説く。企業は目先の作業時間の短縮ではなく、ビジネスモデルそのものをAI技術を前提とした形に再構築する決断を迫られている。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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