どこに行くにも1台のモバイルコンピューティング/コミュニケーションデバイスだけ持っていれば済むなら、それに越したことはないだろう。だが残念ながら、これは理想論でしかない。
できれば1台のモバイル(以下では、どこでも無線通信が利用できるものとする)コンピュータ兼コミュニケータだけを携帯したいと誰もが考えているのは、まず間違いないと思う。バッグは何個か電源アダプターを入れるだけですぐ満杯になる。コンピュータと携帯電話を幾つも買うとお金が掛かるし、どのデバイスにどの重要なデータが入っているかを覚えておいたり、常にすべてのデバイスを十分に充電し、同期して、きちんと機能させておくのは面倒で煩わしい。
もちろん、あなたがガジェットフリークならこうした状況は至福に違いない。しかし、デバイスをただの道具として使う人にとっては、シンプルさが肝心なはずだ。理屈上、モバイルデバイス群は1台の高機能なユニットに集約されるべきなのだ。
しかし、現実にはそれは根本的に不可能と言わざるを得ない。デバイスの1本化は絵に描いたモチだ。汎用のコンピュータ/コミュニケータが作られてしかるべきと思われている上に、30年近くにわたってそうした取り組みが数多く行われてきたにもかかわらず、この目標はいまだに達成されていない。正直言って、わたしは決して達成されないだろうと考えている。
なぜか。根本的な問題は、モバイルデバイスの開発には矛盾する多数の要件があることにある。数学になぞらえると、方程式の数よりも変数が多い。つまり、解が定まらない状態だ。解は1つではなく、多様な解があることになる。

まず、デバイス1本化の大きなネックとなる画面とキーボードのサイズについてみてみよう。ディスプレイに関して言えば、解像度も物理的なサイズも大きい方がいい。だが言うまでもなく、これはモビリティを考慮しない場合だ。また、フルサイズキーボードはタイプしやすいが、そうしたキーボードはポケットにも普通サイズのバッグにも入らない。もちろん、どちらについても創造的な解決策が提供されている。PDAタイプのデバイスでは、よく配慮されたユーザーインタフェース管理機能を備えた高解像度の小型画面が非常に重宝する。今では一般的な両手の親指で入力するマイクロキーボードも、ショートメッセージや電子メールの入力には便利に使える。
ヘッドマウントディスプレイはどうか。オタクっぽさがなくなれば大丈夫かもしれない。例えば、MicroVisionは見た目は普通の眼鏡と変わらないが、超小型の表示エンジンが組み込まれ、有線・無線接続を利用するモバイルデバイス用ディスプレイを開発中だ。ただしもちろん、この製品を使う場合、普段眼鏡を掛けない人にとっては携帯するものが1つ増えることになる。また、仮想キーボードもある。Virtual Laser Keyboardは赤外線およびレーザー技術により、円滑に動作する光キーボードを平面上に投影する。折り畳みBluetoothキーボードも有力な選択肢だ。こうしたモジュールアプローチは優れた解決策かもしれない。少なくとも、持ち運ばなければならない高価なアイテムの数を最小限に減らせるからだ。
しかし、モバイルデバイスでは極めて多くのトレードオフを考慮しなければならない。例えば、サイズ、重さ、丈夫さ、価格、OS、アプリケーション、特定のネットワークへの対応、ローカル接続オプション、などなどの要素が、それぞれほかの要素とトレードオフの関係にある。前述したように、矛盾する変数が多過ぎるため、1台のデバイスがユーザーを常に満足させることはあり得ない。
わたし自身のモバイルデバイスとの付き合い方としては、ある程度のWebアクセス機能を持つ小型の携帯電話をいつもすぐに取り出せるようにしておき、メインのモバイルデバイスとして使っている。また、頻繁にWeb閲覧や電子メールのやりとりをする必要がある作業のために、PDA型携帯電話も持っている。さらにノートPCを持ち、大抵はまずまずのWebブラウザを搭載するLinuxベースのタブレットも一緒に持っていく。これでデバイスが4台で、それぞれに必要な電源類も加わる。実はわたしはこの手のものに目がないのだ。だが、わたしのモバイルデバイスとの付き合い方には改善の余地がある。それは、上に述べたようなデバイス管理の面倒な手間を減らすことだ。それが生産性向上のカギになる。わたしはこれからも、モバイルデバイスの矛盾する要件の影響を最小限に抑えるデバイスを注意して探し続けようと思っている。
本稿筆者のクレイグ・マシアス氏は、無線ネットワーキングとモバイルコンピューティングを専門とするコンサルティング会社Farpoint Groupの代表。同社は無線およびモバイル全般の支援サービスをメーカー、企業、キャリア、政府機関、金融サービス会社に提供している。