2010年02月17日 08時00分 UPDATE
特集/連載

コスト削減だけじゃない、Web会議の見えざる効果Web会議を導入して業績アップにつなげるコツ

Web会議システムは出張費削減などのコスト効果ばかりがクローズアップされがちだが、それだけでは導入の成果とはいえない。業績改善に結び付くWeb会議の“見えざる効果”を明らかにする。

[岩上由高,ノークリサーチ]

 今、企業のIT活用に求められているのは、“守りのIT”(コスト削減)であれ“攻めのIT”(業績改善)であれ、「確実かつ短期に効果を上げられる」ことだ。それを実現する1つの手段として注目を集めているのが「ユニファイドコミュニケーション」(以下、UC)である。

 UCは「個別に利用されていた音声(アナログ電話/IP電話)、テキスト(メール、インスタントメッセージング)、動画(Web会議/ビデオ会議)、データ通信などのコミュニケーション手段をIPネットワーク基盤上で統一し、TPOに応じて効果的に活用するソリューションの集合体」と定義される。

 つまり、さまざまなコミュニケーション手段を統合することによって、企業活動を活性化、効率化させようという試みを指す。ただ、この説明だけでは「多くの社員を抱える大規模企業向けのソリューションでは?」「導入するのに多くの費用と期間を要するのでは?」という疑問が当然わいてくるだろう。しかし、最初からすべてのコミュニケーション手段を統一する必要はない。手軽に導入でき、即効性のある要素からまず始めることも可能だ。

 そこで今回は、UCを構成する具体的なソリューションを簡単に説明した上で、その中の1つである「Web会議」の導入を業務の向上に結び付ける方法を紹介する(Web会議については、別記事「読めば分かる! Web会議とテレビ会議の違い」を参照のこと)。使い方を少し工夫するだけで、コスト削減や移動時間短縮にとどまらない大きな成果を上げられるということを、ユーザー調査と具体例を交えながら説明していこう。

UCを構成する要素

 冒頭に述べたように、UCとは複数のソリューションを集めたものだ。その構成要素は「どのようなコミュニケーションシーンに着目するか」に応じて、大きく以下のように分類することができる。

音声通話のデジタル化

 「IP電話」や「IPテレフォニー」などと呼ばれ、UCの基本的な土台を成すソリューションである。アナログ回線の代わりに、インターネットなどのIPネットワークを介して音声をやりとりする。

メールを代替・補完するメッセージング

 文章ではなく音声によって要件を的確に伝えることのできる「ボイスメッセージング」、手短な要件をリアルタイムに伝えることができる「インスタントメッセージング(チャット)」などが含まれる。

相手の状態を把握するプレゼンス

 インスタントメッセージングを使えば、電話のようにリアルタイムに相手と対話できる。しかし、相手が取り込み中の場合にはメールを送って相手の返事を待つ方がいい場合もある。つまり、適切なコミュニケーション手段を選ぶためには、相手の状態を確認し、把握する必要がある。PC操作状況などを基にそれを実現するソリューションを「プレゼンス(在席管理)」と呼ぶ。

遠隔地間でのリアルなコミュニケーション

 離れた拠点間でも映像・音声・データを共有したやりとりを可能とするものである。本稿のトピックであるWeb会議もここに分類される。ほかには、相手があたかも目の前にいるかのような状態を作り出す「テレプレゼンス」、会場に足を運ばなくても視聴が可能な「Webセミナー」などがある。

顧客対応業務を支援するコンタクトセンター

 従来「コールセンター」とも呼ばれていたものである。上記に挙げたさまざまなソリューションを駆使して、音声や文章による説明だけではなく、映像や実際の操作実演も交えた顧客サポートなどを実現する。

モバイル統合

 コミュニケーションがIPネットワーク基盤上に統合されることにより、内線電話あてにかかってきた通話を携帯電話に自動転送するといったことが可能になる。モバイル環境も含めた統一管理が可能となる点も、UCの特徴の1つである。

コスト削減効果の期待が高いWeb会議

 以下のグラフは、年商500億円未満の中堅・中小企業に対して「最も価値が高いと思われるUCの要素」を尋ねた結果である。これを見ると「Web会議(テレプレゼンスも含む)」を挙げるユーザー企業が多いことが分かる。さらに、その理由を尋ねたのが下の表だ。

図1 最も価値が高いと思われるUCの要素
Web会議を導入する理由(複数回答可)
回答 比率
移動や通信に掛かるコストを削減するため 76.3%
文章では表現できない微妙なニュアンスを迅速かつ確実に伝えるため 21.9%
営業機会の損失を最小限に抑えるため 16.3%
電話やメールといった複数の伝達手段があることによる非効率を解消するため 13.1%
コミュニケーション手段をデジタル化することで業務の可視化を促進するため 11.0%
顧客からの問い合わせ応対品質を向上させるため 8.8%
出典:ノークリサーチ(2009年)

 会議のための出張コストや従来型の電話会議/テレビ会議に必要な通信コストを削減できるという理由が約76%と、突出して高くなっている。つまり、多くのユーザー企業は「コスト削減」を主な理由としてWeb会議を導入検討していることになる。

コスト削減以外にもメリットはたくさんある

 確かに「移動や通信に掛かるコストの削減」は、Web会議活用がもたらす効果の代表例である。昨今はASP/SaaS形態で利用できるWeb会議サービスも増えているため、設備投資をすることなく利用を開始することが可能だ。出張旅費や通信費の削減は目に見える即効性もある。

 しかし、「従来型の会議をネットワーク越しに行うだけ」ではWeb会議活用がもたらす本当の効果を十分に引き出しているとはいえない。せっかく導入したのであれば、コスト削減という「守りの活用」だけでなく、「攻めの活用」を進めるべきだろう。実は上記のグラフのうち、2番目以降の選択肢がそうした活用方法に相当するものだ。つまり、攻めの活用を実践しているユーザー企業は既に存在するのである。そこで、以下にコスト削減にとどまらないWeb会議活用の具体例を挙げていく。

社内コミュニケーションの円滑化

 Web会議を導入あるいは検討する理由として、

  1. 文章では表現できない微妙なニュアンスを迅速かつ確実に伝える
  2. 電話やメールといった複数の伝達手段があることによる非効率さを解消する

といったものが挙げられる。これらはいずれもWeb会議の「ドキュメント共有」の効果を指したものといえる。Web会議で実現できるのは、社員同士が音声や映像で会話することだけではない。オフィス文書を全員で共有し、その場で閲覧・編集を行うことができる。例えば「ホワイトボード機能」を使うと手書きの図などを自由に描くことも可能だ。イメージを全員が共有すれば、言葉の表現による見解の相違を防げるのだ。

 また「電話は自由に言葉でやりとりができるが、ドキュメントを見せることができない」、その一方で「メールはドキュメントを添付して送れるが、その説明を文章で書くのが面倒だ」と感じ、どちらの手段で相手とやりとりすべきか迷う場面もよくあるだろう。Web会議であれば、言葉のやりとりとドキュメントの共有を同時に行える。

図2 メール/電話によるコミュニケーションの問題を解決する

 上記2点に次いで、「コミュニケーションをデジタル化することで業務の可視化を促進する」ことも重要である。Web会議には議事内容をビデオ録画のように記録できる「レコーディング機能」や、共有されたドキュメントを関係者に配布する「ファイル転送機能」が備わっている。従来型の会議では議事録を作成し、それを後日メールなどで配布するのが一般的だ。だが、議事録の記載が不十分だったり、決議内容の解釈に後で食い違いが生じるといったことはよく起きる。そこで、Web会議を活用して一部始終を記録して配布すれば、「会議の見える化」が実現でき、従来型の会議で起きていたような食い違いも大幅に減らせるだろう。

図3 解釈の食い違いなど従来タイプの会議の問題を解決する

質の高い顧客応対が可能になる

 Web会議活用がもたらすもう1つのポイントは、「顧客応対の改善」だ。Web会議を導入する理由の中では、以下の2点が該当する。

  1. 営業機会の損失を最小限に抑える
  2. 顧客からの問い合わせ応対品質を向上させる

 厳しい経済環境の中、新規顧客の開拓や既存顧客のサポートをいかに効率的に行うかということは、ユーザー企業の収益を大きく左右する。自社のWebサイトを通じた問い合わせ応対やアフターサポートの体制整備といった努力も欠かせない。だが、こうした取り組みは営業・サポートの効率性を向上させる半面、PCの操作に慣れていない顧客への応対品質を下げてしまう恐れもある。「電話で顧客に操作を一生懸命説明したが、Webサイトからの申し込みができずに別途FAXで受け付けた」といった場面もよく見受けられる。こうした例外処理をなくさないかぎり、顧客応対の品質を引き上げることは難しい。では、どうすればよいのだろうか?

 Web会議には「デスクトップ共有」という機能が備わっている。この機能を利用すると、自分の手元のPC画面を相手に見せる、または逆に相手のPC画面を直接見るといったことができる。相手が許可すれば、相手のPC画面を操作することも可能だ。顧客がWebサイトからの申し込み方法が分からず困っているときには、実際のWebサイト画面を顧客と一緒に見ながら説明をするわけだ。顧客が行っている操作も目で見て確認できるので、何か間違いがあればその場ですぐ指摘すればいい。

図4 例外処理をなくし、顧客応対の品質を向上する

 このようにWeb会議の機能をフルに活用することによって社内コミュニケーションを円滑化や顧客応対の質向上といったコスト削減だけではないメリットを享受することができるのである。

小さく始められることもWeb会議の大きなメリット

 ここまで、一歩踏み込んだWeb会議の効果について解説してきた。最後に読者が気になるのは「Web会議を活用するにはどれくらいの費用や手間が掛かるのか?」という点だろう。以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、「Web会議の活用に際して障壁になると思われる事柄」を尋ねた結果だ。

図5 Web会議の活用に際して障壁になると思われる事柄(複数回答可)

 これによると、導入コストや運用・保守の手間がWeb会議活用の障壁になると考えているユーザー企業が多い。だが、現在広く利用されているWeb会議はASP/SaaS形態のものが多い。そのため、PCでインターネットへ接続できる環境があれば、ほかに特別な機器を用意する必要はない。Web会議を実現するシステム自体は提供者側がすべて管理しているので、ユーザー企業側が運用・保守の作業を行うことも原則としてない。

 一方で、「導入効果が本当にあるかどうかの確証が得られない」という意見もある。IT予算が限られる中で、ユーザー企業は試行錯誤を繰り返す余裕はない。しかし、ここでもWeb会議がASP/SaaS形態であることがプラスに働いてくる。提供者の多くは「無料のお試し利用サービス」を用意しているからだ。前述のように初期投資は不要なので、「次回の会議で試しに使ってみよう」といったことも気軽に行える。また、社内会議、顧客応対、イベント開催といった用途に応じたサービスメニューが豊富に用意されており、逐次変更することも可能だ。ASP/SaaS型のWeb会議サービスは、最初は小さく始めておき、徐々に本格的な利用へシフトしていくという、無理のない活用ができるように配慮されている。

 代表的なWeb会議サービスには以下のようなものがある。いずれもASP/SaaS形態でのサービスを提供している。

Web会議サービス例
ベンダー サービス名 利用イメージ
シスコシステムズ(旧WebEx) WebEx WebEx《クリックで拡大》
ブイキューブ nice to meet you nice to meet you《クリックで拡大》
NTTアイティ MeetingPlaza MeetingPlaza《クリックで拡大》

 Web会議は、小・中規模の企業がUCへと踏み出すには最適のファーストステップといえる。コスト削減効果ばかりが注目されがちだが、IT活用の真の意義はコスト削減と業績改善を両立させることにある。その手始めとして、「Web会議を使い倒してみる」ことをぜひお勧めしたい。

<筆者紹介>

岩上由高

ノークリサーチ シニアアナリスト

ソフトウェアベンダー数社でソフトウェア製品の企画、設計、開発、コンサルティング、トレーニングなどに携わった後、ノークリサーチに入社。シニアアナリストとしてITのさまざまな領域の調査・分析に従事し、その成果を記事執筆やコンサルティング活動を通じて積極的に発信している。



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