「機能よりも使い勝手」――中堅・中小企業向けPC資産管理ツールの導入条件ここまで来た中堅・中小企業のPC資産管理【後編】

このところ、企業がPC資産管理をセキュリティ対策に役立てる動きが高まっている。数あるPC資産管理ツールの中から中堅・中小企業に支持されている製品を幾つか取り上げ、それぞれの成り立ちと特徴を紹介する。

2010年04月22日 08時00分 公開
[富永康信,ロビンソン]

 前編「500台未満では後回し」のPC資産管理に関心が集まる理由」では、PC管理の現状と課題、ツールの選び方などを紹介した。PC資産管理・運用管理に関する製品はさまざまなベンダーから提供されているが、中堅・中小企業(以下、SMB)も対象に据えている製品に共通するのは、手間が掛からず運用が簡単である、オールインワンで機能が盛り込まれているといった特徴だ。その中でも、長年ユーザー企業から支持されているものには独特の視点や優位性などが表れている。

JP1をSMB向けにパッケージし直した「JP1/Desktop Navigation」

 例えば、日立製作所のシステム統合運用管理製品「JP1」。運用管理ソフトの国内市場シェアで12年連続トップ(テクノ・システム・リサーチ社調べ)の座を維持するなど大規模〜中堅企業で数多く利用され、この分野のスタンダードの1つといえる。その日立製作所は、2009年9月にSMB市場に特化した「JP1 Ready Series」シリーズを発表。第一弾として、SMBのユーザーがJP1の機能をすぐに使い始められるよう、低価格でオールインワンにパッケージングし直した「JP1/Desktop Navigation」をリリースした。

ホーム画面から日々の運用状況を管理

 レディーメードという意味が込められたJP1 Ready Seriesは、前述の“すぐに使える”が重要な設計ポイントとなっている。そこでJP1/Desktop Navigationは、社内に散在するPCを集中管理するため導入後の初期診断で現状を把握し、具体的な対策ポイントを明確にしたり、そのまま使えるセキュリティポリシーを標準搭載して運用状況に応じてブラッシュアップしたりできる。そのほかにも、JP1と同様にエージェントレスですぐさま運用を開始できる機能が盛り込まれている。

 「ホーム画面」と呼ばれるダッシュボードは、全体のPCの利用状況やセキュリティ状況などをリアルタイムに把握するのに利用する。使われていない無駄なPCやソフトウェアライセンスの数、最近の重大イベントを時系列で表示できる。

画像 JP1/Desktop Navigationのホーム画面。PC全体の状況や推移のほか、PCの総数、削減候補のPC、現在のライセンスの使用状況やセキュリティ状況、最近の重大イベントなどをひと目で確認できる《クリックで拡大》

 また、脆弱なパスワードや自動ログオン設定などを検知する基本的なセキュリティ管理もカバーしており、定期的なリポート発行、運用ルールの見直しといった運用サイクルを簡単に実施できる。リレーショナルデータベースやWebアプリケーションサーバを同梱し、導入コストと手間を軽減しているのも特徴といえる。

SMBが求めているのは“コンパクトデジカメの使い勝手”

 「JP1は本格的なデジタル一眼。一方、JP1 Ready Seriesは誰でも使えるコンパクトデジカメの気軽さがあるといったイメージ」。そう説明するのは、日立製作所 ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部でJP1マーケティング部の主任技師を務める関 芳治氏。

 デジタル一眼はプロが使えばテクニックを駆使できるが、場面に応じて多機能を使い分けなければ持ち味を生かすことができない。片や、コンパクトデジカメは誰でも簡単に使えるよう設計されているものの、画質を高度に操作するような機能は備えていない。「専任の管理者がいない、SE並みの専門知識がないというSMBが求めているのは、コンパクトデジカメの使い勝手の良さ」(関氏)だという。

 実はこの製品、日立製作所が2005年に発売した「JP1 Smart Series」のリベンジという形で開発された。同社は、JP1 Smart SeriesをJP1の廉価版としてリリース。機能を幾つかそぎ落とすことでSMB市場に販路を広げようともくろんだが、JP1同様に細かな設定が必要だったため、SMBにはハードルが高すぎて市場拡大は望めなかった。

 同社 ソフトウェア事業部 企画本部計画部 主任技師の立原秀和氏は、「その反省を生かし、中堅・中小企業が本当に求めているものや課題を徹底的に分析し、根本から開発し直した。機能を落とした一眼ではなく、誰でも使えるデジカメにすることが重要だった」と語る。

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