日本小売独自の商習慣に対応するシステム選びをERPベンダーに聞く小売業のベストプラクティス:SAPジャパン編

言わずと知れた世界最大のERPパッケージベンダー、SAP。グローバル展開やM&Aに伴うシステム統合といった小売業が抱える課題解決を、同社はどう考えているのか。

2010年11月30日 08時00分 公開
[吉村哲樹]

 SAP製品は財務会計や人事などの業務領域を中心に、業種・業態を問わずさまざまな企業で導入されているが、その一方で特定の業種に特化したソリューションも数多く提供している。本稿ではその中でも、同社が小売業向けに提供している各種ソリューションや、同社が考える小売業のベストプラクティスについて、SAPジャパン インダストリー戦略本部 サービス産業戦略部 部長 村上和也氏と、同社 インダストリー戦略本部 小売・流通産業担当部長 宮下研一氏に話を聞いた。

連載インデックス

日本オラクル編:小売業のシステム化のポイントは「分析」「ポイント」「マスターデータ管理」

SAPジャパン編:日本小売独自の商習慣に対応するシステム選びを


MDシステムにもパッケージ製品のメリットを

 今日の国内小売業は、一体どのような業務課題を抱えているのだろうか。村上氏は次のように述べる。

 「準大手や中堅の小売業の多くがアジアへのビジネス展開に乗り出しつつあり、そのために必要なシステム上の対応を模索しています。一方、海外展開を既に終えている大手小売業では、M&Aに伴うシステム統合や、企業グループ全体でのERPシステムの統一などが課題として挙がっています」(村上氏)

画像 小売業だけでなくサービス産業全体に向けた戦略立案を担当する村上氏

 こうした課題に対してSAPジャパンでは、同社のERPパッケージ製品のワールドワイドでの実績・ノウハウや、企業グループでの導入実績などを生かしたソリューションを提供している。しかし、こと小売業の業務システムとなると、パッケージ製品はなかなかフィットしにくいという先入観を持つユーザーも少なくない。特にマーチャンダイジング(MD)領域に関しては、個々の企業や業界により業務形態が大きく異なり、また変化の激しい業務領域でもあるため、パッケージ製品は適用しにくいと思われがちだ。

 しかし同社では、「Industry Solution for Retail」(以下、IS Retail)と呼ばれる、小売業に特化したソリューションテンプレートを提供することで、MD業務とパッケージ仕様とのギャップを極小化するソリューションに取り組んでいる。IS Retailは、SAPの共通ERP基盤上に展開される業界別のテンプレートの1つである。これまで、小売業でSAP製品を導入する際にアドオン開発を余儀なくされていた機能を、あらかじめ用意された形で提供する。宮下氏は、その具体的な内容を次のように例示する。

画像 ユーザー企業での経験も豊富な宮下氏

 「例えば販売管理や購買管理のモジュールでは、売り上げの管理や仕入・在庫の管理などはどの業種でも共通の機能になります。しかし、小売業の場合はこれに加えて、商品分類の管理や、アイテムマスターの管理といった独自の機能が必要です。IS Retailは、こうした機能を共通ERPの機能に付加するものといえます」(宮下氏)

 SAP ERPは細かい機能コンポーネントに分かれており、必要な部分だけを選んで適用できる。そのため、固有要件が多いMDシステムであっても、IS Retailのモジュールで多くの部分を賄うことが可能だという。

 「IS Retailを活用することで、MDにもパッケージ製品を柔軟に活用することが可能になります。近年、ERPのコンセプトをMD領域にも広げ、統合メリットのみならず、コストや品質面でのメリットを積極的に活用すべきだと考えている小売企業が増えてきています。今後、小売企業が基幹系システムを構築する際には、こうした視点が重要になってくるでしょう」(村上氏)

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