単なる業務効率改善のためのシステム導入という考え方は完全に過去のものとなった。連載の最終回では、企業戦略を下支えし、変化に敏感な企業を作るためのSCMシステムを考える。
本連載の第1回「SCMの計画立案と実績管理は『顧客ニーズ』から始めよう」ではSCMの計画立案と実績管理を、第2回「『持たざる経営』をうまく活用した物流コストと在庫の最適化方法」では物流コストと在庫の最適化というテーマを取り上げた。最終回となる今回は、それらも含めた小売業のSCMを支える情報システム構築の考察がテーマとなる。
「グローバル」「小売業」「情報システム」というキーワードから思い浮かべる企業は、米Wal-Martが有名ではないだろうか。Wal-Martでは、各国の店舗や物流センターの在庫をリアルタイムで把握し、取引先とは過去実績・現在情報・将来計画を共有している。まさに企業戦略とITが融合しているリファレンスモデルの1つといえる。そして、常に時代に合わせた形でそれを見直し進化させていることが、企業発展に大きく寄与していると思われる。
さて、そのWal-MartのITの中でも核となるのがSCMシステムだが、今回それを考えるに当たって、まずはSCMシステムを「実行系」と「計画系」と呼ばれる領域に分けてみる。実行系とは基幹システムとも呼ばれ、現場オペレーションを遂行する上で必要な支援を行うものだ。もう一方の計画系とは、販売や需給の計画、つまり将来を予測し、その備えを支援するシステムを定義する。
まずは実行系システムについて見てみよう。ここでは情報と物流の同期化、いわゆる「情物の一致」が、次のアクションを正確に決める上での重要な基礎となる。これらを補完する上で代表的なシステムに、WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)、TMS(Transportation Management System:配送管理システム)がある。
この2つのシステムは、倉庫内あるいは輸送中のモノの流れに特化して、何かのイベントが起きるたびにデータを生成するような仕組みを持つ。また、そのデータを収集し、分析する機能を持つ。これらのシステムは、一般的には経理を含む基幹システムの金の流れとは切り離し、変化の激しい実オペレーションと同期を取るためだけの身軽な構造にしておくことが肝要である。そうすることでオペレーションに不可欠な要素を多く持つことができ、結果として作業精度・速度の向上に多大な貢献をする。
例えば、商品の在庫情報の場合、単なる商品コードごとの数量だけでなく、その商品属性(製造年月日、消費期限、工場・生産地などのロット情報)を細かい単位でつかむことができる。また、その商品がどの拠点のどの棚にあるか、どのトラックで積送中なのか、そしてどこから入荷してどこへ出荷するのか、あるいは着荷予定といった一連のトレース情報を管理できる。加えて労務実績管理や、最適タスク配分のための作業指示を自動化できるため、業務効率向上に大きく貢献するだろう。当然、リアルタイム性を追求するのであれば、欲しいタイミングでデータを生成していくことになる。ただし、データ生成は自動化できる部分もあるものの、基本的には作業員が作業開始・終了の信号を送信することで実現可能となる。その際にできるだけ業務負荷を掛けないようにシステムで支援していくことになる。例えば、WMSの場合は無線ハンディーターミナルが一般的だが、最近ではヴォコレクト ジャパンのVoice(音声認識)や、MojixのRFIDを応用したソリューションなど、進化型のツールも出てきている。これらのシステムを利用することで、運用が軌道に乗っているかどうかを確認でき、またその成熟度が顧客への納期回答の正確・迅速性、商品トラブル時の回収など、さまざまなシチュエーションで他社との差異化要因になる。
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