基本機能やAPIの不備を悪用
仮想環境を脅かす「ハイパーバイザー攻撃」、その手口と対策
サーバ仮想化の基盤要素であるハイパーバイザーは、サイバー犯罪者の格好の標的だ。ハイパーバイザーはどのように攻撃されるのか? ハイパーバイザー攻撃を防ぐ方法とは?
仮想環境ではゲストOSとネットワークに無数の脆弱性が存在する。ハイパーバイザー攻撃の成功を許せば、壊滅的な結果を招きかねない。ただし、適切な計画を立ててデータ保護の強化を図れば、仮想環境とハイパーバイザーの脆弱性を最小限に抑えることが可能だ。
セキュリティ対策は事後に追加するよりも、システム(OSやハイパーバイザーなど)に組み込んだ方がいいという点で、ほとんどのセキュリティ専門家の見解は一致する。だが、多くの主要なハイパーバイザーが設計された当初は、ハイパーバイザーにセキュリティ対策を組み込むのは難しかった。サーバやストレージ、ネットワークといった仮想化の機能が十分に実現されているわけではなかったからだ。例えば、「VMware vMotion」のようなモビリティツールは、2001年にVMware ESX 1.0が登場してから2~3年後にリリースされた。この間にソフトウェアスタックの規模と複雑性が増し、潜在的な脆弱性も増大した。
ハイパーバイザー攻撃の方法とは?
侵入者は大抵の場合、ハイパーバイザーサービス(仮想マシンの作成や削除、クローン作成など)を利用して攻撃の実行と拡大を試みる。ソフトウェアスタックのサイズやAPIの数、コードにおけるセキュリティ保証の程度によっては、攻撃が成功する可能性は増す。一般的に、大型のソフトウェアスタックの方が小規模のコードスタックよりも攻撃対象領域は大きくなる。コードの量が多いほど、コーディングの誤りも増える可能性が大きいからだ。
サードパーティーアプリケーションのAPIにも同じことがいえる。これらのインタフェースは、侵入者が利用できる攻撃経路を増やし、攻撃対象領域を大きくする。典型的なAPIにはハイパーバイザーコールやハードウェアによって生成される割り込み、ハイパーバイザーが処理できるパラメータを持ったプロセッサ命令などがある。
さらに、ベンダーがセキュリティを念頭に置いてコードを開発していなければ、一般的にセキュリティ保証は低く、攻撃対象領域は大きくなる。コードの量が多くても高度なセキュリティを念頭に置いて設計されていれば、セキュリティを組み込んでいない少量のコードよりセキュリティは強固かもしれない。
ハイパーバイザー攻撃の症状
攻撃者はハイパーバイザーに侵入すれば、ホストマシンで稼働する各仮想マシン(VM)に対して攻撃を仕掛けることができる。ハイパーバイザー攻撃を受けた場合に想定される事態の1つが、VMのリソース使用量が増大し、ホスト全体やサーバ群の一部がサービス妨害(DoS)状態に陥ることだ。複数の仮想サーバが絡めば事態は一層悪化する。だがこの種の攻撃は、SolarWindsやVMware、HyTrustといったベンダーの監視ツールで検出、防止することができる。
ハイパーバイザーに侵入するもう1つの手段として、rootkitの利用を挙げる専門家もいる。ただし、実世界でこの方法を使った人間はいたとしてもごく少数にすぎない。最も名高いrootkitは、ポーランドのJoanna Rutkowska氏が開発した「Blue Pill」だ。このマルウェアはハイパーバイザーとして動作し、コンピュータリソースを制御する。この不正ハイパーバイザーは再起動を要求することなくインストールされるため、検出が難しい。さらに、内部の通信を傍受して応答を偽装する機能も備える(Blue Pillの出現を受け、Blue Pillを検出するためのrootkitである「Red Pill」が開発された)。
ハイパーバイザー攻撃を未然に防ぐ
仮想化やクラウド環境のメリットは盛んに論じられるが、セキュリティ問題について真剣に考えているユーザー企業はそれほど多くない。データセンターに仮想サーバやストレージ、ネットワークが加われば、過去の物理環境には存在しなかった新たなセキュリティ問題が発生する。
データセンターの仮想化について検討を始めたばかりの段階であれば、以下のようなハイパーバイザーのセキュリティ対策が候補となる。
- 侵入検知をオプションと見なしてはいけない。セキュリティ以上に大切な要素はない
- ハイパーバイザーのベンダーは最善の侵入検知機能を提供している。侵入者に攻撃されそうな場所に検知コードを置くすべを持っているのはベンダーだからだ。仮想プラットフォームの開発やサポートを手掛けるベンダーからハイパーバイザーのセキュリティに関する情報を可能な限り引き出す。この話し合いには社内の技術専門家にも参加してもらう。適切な人材がいなければコンサルタントと契約する
- ハイパーバイザー攻撃が起こる可能性がある場所と、それを防ぐためにどういったセキュリティツールがあるのかをベンダーに尋ねる
- ハイパーバイザーを評価する際は、攻撃の規模と利用可能なAPIの数を比較する
- ハイパーバイザーにはOSカーネルに組み込まれているタイプと、ベアメタルで動作するタイプがある。ハイパーバイザーベンダーから社内の専門家に対し、そのベンダーのアーキテクチャが最高のセキュリティを実現できると考える理由について説明してもらう
- できるだけ多くのハイパーバイザーを、セキュリティを念頭に置いて比較検討する。特に、どういった組織が比較しているのか、ベンダーがスポンサーになっていないかどうかにも注意を払う
導入後のセキュリティ対策
既にハイパーバイザーを導入済みの場合、仮想環境の守りを強化する方法は多数ある。
- 仮想サーバ/VMとホスト間のネットワークトラフィックを含め、仮想環境を監視するためのセキュリティツールを利用する。こうしたツールは管理動作を監視、可視化する機能を搭載している必要がある
- 全体的なシステム管理/監視インフラにハイパーバイザー監視を統合する
- 仮想サーバの完全性とセキュリティを確認するため、継続的に仮想環境を検証する
ミッションクリティカルな業務や社外秘の情報を仮想インフラで運用する企業が増える中、ハイパーバイザーセキュリティの重要性は今後も増す一方だ。以上のような対策によって仮想環境の安全性が保証されるとは限らないが、ハイパーバイザー攻撃のリスクを最小限に抑えることができることは間違いない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
4
「有線LAN環境」に関するアンケート
-
5
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
6
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
7
「業務改善とツール活用」に関するアンケート
-
8
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
9
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
10
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
9
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー