処理能力に加え、電力や移行の容易さに注目
失敗しない100ギガビットイーサネットの選び方
製品化が進む40ギガビット/100ギガビットイーサネット。登場したばかりの40ギガビット/100ギガビットイーサネット製品をどう選ぶべきか、その指針を示す。
現時点で最速のイーサネット規格である40ギガビット/100ギガビットイーサネット。データセンターのラック間やデータセンター間の接続、サービスプロバイダーのコアネットワークなどを中心に、今後導入が進むと考えられる。
40ギガビット/100ギガビットイーサネット製品をどう選ぶべきか。導入や運用時には何に注意すべきか。既存ネットワーク技術との使い分けのポイントは。本稿は、40ギガビット/100ギガビットイーサネット製品の選定や導入、運用の勘所を解説する。
製品選定のポイント:「電力」「能力」「アップグレード」に注目
40ギガビット/100ギガビットイーサネット製品を選定する際に考慮すべき点は以下の3点だ。
- 消費電力
- 処理能力
- 既存製品のアップグレード
製品選定時にはどうしても機器の価格や処理能力だけに目が行きがちだが、40ギガビット/100ギガビットイーサネット製品の選定時には、これら3つのポイントについて比較検討することをお勧めしたい。以下、それぞれの選定ポイントについて詳しく述べる。
選定ポイント(1):消費電力
最近、帯域や電力効率を表す指標として「W/Gbps」という単位が用いられるようになった。これは、1Gbpsのデータを転送するのにどれぐらいの電力を消費するかを示す指標で、値が小さいほど電力効率が高いことを示す。イーサネット製品の場合、一般的には多機能であればあるほど消費電力は増加し、電力効率が低下する。電力消費量を削減するには、必要な機能を導入時に見極めておくことが大切だ。
上記を踏まえて、現在の主流である10ギガビットイーサネットの電力効率を考えると、約1W/Gbpsという低消費電力製品が市場に出ている。これと比べて、現在の40ギガビット/100ギガビットイーサネット製品の消費電力はおおむね数W/Gbpsと比較的大きい。ただし、製品サイズの小型化などの進化により、こうした消費電力の課題は改善されるであろう。
選定ポイント(2):処理能力
現在販売されている100ギガビットイーサネット製品では、内部構造に起因する制限として、64~128バイトのイーサネットフレーム(ショートフレーム)の場合、処理速度が数パーセントから数十パーセント低下することがある。つまり、全てのイーサネットフレームサイズ(通常64~1518バイト)において、100%の処理能力が得られる100ギガビットイーサネット製品は、ほぼ存在しないのが現状だ。
また、トラフィックフロー(トラフィック経路)による処理能力の変動にも注目すべきだ。現状、単一トラフィックフローの場合、100ギガビットイーサネット製品の多くは最大の処理能力を発揮できない。基本的にトラフィックフロー数の増加とともに処理能力が上がる傾向があり、トラフィックフロー数によって処理能力が左右されることがあるので注意が必要だ。
選定ポイント(3):既存製品からのアップグレード
既存のイーサネット製品をアップグレードして40ギガビット/100ギガビットイーサネットを導入する場合にも配慮すべき点がある。シャーシ型製品では、40ギガビット/100ギガビットイーサネットは、40Gbps/100Gbpsの広帯域転送を実現するため、こうした広帯域に対応したスイッチファブリック(バックプレーン)に加え、電力消費量の増大に適したファンや電源ユニットのアップグレードが必要になる場合もある。
また、高い拡張性を持つシャーシ型製品の多くはスイッチファブリックを冗長化しているが、製品によっては冗長分のスイッチファブリックを利用して40ギガビット/100ギガビットイーサネットを実現している。そのため、スイッチファブリック障害時の性能縮退において、ラインカード(LANやWAN接続用のNIC)の帯域が守られるかどうかという点も製品によって異なる。選定時には十分な調査が必要になるだろう。
運用フェーズの注意点:レイヤー1伝送方式に大きな違いが
40ギガビット/100ギガビットイーサネット製品の運用フェーズにおいて考慮すべきポイントは、レイヤー1の伝送方式だ。
登場初期のイーサネットからギガビットイーサネット、10ギガビットイーサネットまでは、特にレイヤー1の伝送方式に大きな違いはなかった。「イーサネットは接続する距離に基づいてインタフェースを選定し、ケーブルでつなげばリンクアップする(データの送受信ができる状態になる)」――。多くの運用管理者は、こう感じているのではないだろうか。
一方、40ギガビット/100ギガビットイーサネットにおいては、レイヤー1伝送方式の特性がこれまでのイーサネットとは大きく異なる。以下、端末とケーブルを接続するインタフェースの規格別に、レイヤー1伝送方式の特性を説明する。
100GBASE-LR4:4つの光で多重化、1つのエラーで送受信不可能に
40ギガビット/100ギガビットイーサネットのインタフェースはさまざまだが、その代表例が、長距離伝送に適したシングルモードファイバーを使用する「100GBASE-LR4」だ。100GBASE-LR4は、25Gbpsの信号を4つの波長を使って多重化(波長多重:WDM)することで100Gbpsを実現する。つまり、1本のファイバーの中で4つの光が送信または受信されており、1つの光でも正常に送受信されないとリンクアップしない(データ送受信ができない)メカニズムになっている。
多くのネットワーク機器は、40ギガビット/100ギガビットイーサネットが持つこうした仕組みに機能拡張で対処している。具体的には、各波長における送受信レベルや温度などをコマンドラインやSNMPで表示可能にしていることが多いので確認しておきたい。
100GBASE-SR10:10個の信号をファイバー10本で送信
「100GBASE-SR10」など、安価で短距離伝送に適したマルチモードファイバーを使用するインタフェースはWDMを用いていない。100GBASE-SR10は、10ギガビットの信号を10本のファイバーで送るために、複数の光ファイバーを1本に束ねた「MPO(Multi fiber Push-on)コネクタ付きケーブル」を利用する。データ伝送距離はおおむね100メートルまでだが、このケーブルを接続元から接続先までエンド・ツー・エンドで敷設する必要があることに注意すべきだ。
また、MPOコネクタはオプションタイプによって送受信のペア配線が決まっているため、導入する製品に基づいて配線タイプを選定する必要がある点にも注意したい。これは、イーサネットに利用される「非シールドより対線(UTP)」におけるストレートケーブルとクロスケーブルの関係性に近い。
既存製品との使い分け:環境変化への即応には40ギガビット/100ギガビットが必須
クラウド技術の発展やスマートフォンに代表される通信媒体の多様化により、データセンターやサービスプロバイダーのネットワークにおいて著しくトラフィックが増え続けているのが現状だ。
まず、データセンターネットワークでは、端末とデータセンターをつなぐ従来型の通信だけでなく、データセンター内のトラフィック、いわゆる「East-Westトラフィック」が増加しているのも最近の傾向だ。これは、アプリケーション間連携の高度化やクラスタ型を採用する処理形態の増加が背景にある。さらに、iSCSIやFCoEといったストレージ技術のイーサネットへの統合も進んでおり、トラフィックの増加は今後も続くと考えられる。
一方、サービスプロバイダーネットワークの場合、スマートフォンの爆発的な普及や動画サービスの発展などでトラフィックは急増中だ。また、ユーザーからデータセンターへのトラフィックもサービスプロバイダーネットワークを経由するため、トラフィックは増え続ける見通しである。
こうした状況に対処する手段はさまざまだ。当然ながら、既存の1ギガビット/10ギガビットイーサネットを引き続き活用することを選択する企業もあるだろう。サーバやスイッチなどを結ぶ複数のリンク(回線)を束ねる「リンクアグリゲーション(LAG)」、最短データ伝送経路の自動選択や同時利用を可能にする「レイヤー2マルチパス」といった技術を利用すれば、1ギガビット/10ギガビットイーサネットでもある程度の対処は可能だ(LAGやレイヤー2マルチパスについては「【技術解説】ネットワークの設計や拡張を容易にする『ファブリック』」も参照)。
とはいえ、多数のリンクをメンテナンスする困難さ、長距離通信を実現する場合に掛かる機器や回線のコストなどを勘案すると、40ギガビット/100ギガビットイーサネットを導入しなければトラフィックの継続的な増加に対処できないデータセンターやサービスプロバイダーも多い。海外のデータセンターやサービスプロバイダーにおいて40ギガビット/100ギガビットイーサネットの導入が本格化しているのもこうした背景があるためだ。
ここまで、40ギガビット/100ギガビットイーサネット製品の選定や導入、運用のポイントに関して述べた。2012年上半期の現時点では、導入に当たって消費電力やコスト、処理能力といった点で慎重な見極めが必要な状況だ。今後のネットワークのさらなる拡張を考える上で、40ギガビット/100ギガビットイーサネットは重要な要素である。その可能性を理解し、製品/技術動向を継続してウオッチすることで、適切な導入につながるだろう。
著者紹介
金子彰良(かねこ あきら) ネットワンシステムズ株式会社
サービスプロバイダー向けコアルータや伝送装置の製品担当として、技術評価や構築、提案に関わる。
中村喜之(なかむら よしゆき) ネットワンシステムズ株式会社
サービスプロバイダー向けスイッチの製品担当として、新規商材の技術評価・検証やユーザー向けトレーニングコースの立ち上げに関わる。現在は、エンタープライズデータセンターを含めたスイッチ製品全般を担当。
HADI SHAIKH ZAKER(ハディ・シェイク・ザケル) ネットワンシステムズ株式会社
サービスプロバイダー向けコアルータやスイッチの製品担当として、技術評価や構築、提案に関わる。
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