MIT専門家が語る「今こそが未来だ」
「4Dプリンティング」の衝撃――刺激だけで材料が製品へ“変身”
適切な外部刺激を与えるだけで、材料が自ら製品へと変形する――。材料の自己組み立て能力を応用した「4Dプリンティング」は、製品製造にどのような影響を与えるのか。MITの専門家の話から探る。
米Massachusetts Institute of Technology(MIT、マサチューセッツ工科大学)は古くからイノベーションで有名な大学だ。同大学の年次カンファレンス「Crossroads 2014」でもその伝統を反映し、MITの教授たちが次世代技術に関するセッションでプレゼンテーションをした。
カンファレンスの各テーマの中で最も未来的な技術に思えたのが「4D(4次元)プリンティング」だ。これは、3Dプリンタなどで作成した物体が形状を変えたり、自ら構造を組み立てたり(セルフアセンブリ)できる技術である。MITのSelf-Assembly Labという研究室のディレクターを務めるスカイラー・ティビッツ氏は「今こそが未来だ」と語る。
Self-Assembly Labは、ティビッツ氏が1年前に創設した。その目的は、自己組み立てとプログラミングが可能な材料技術に関する研究を推進することだ。この技術は、建築や製造、製品組み立ての方法を大きく変える可能性を秘めている。
3Dプリンタを超えて
「コンピュータは設計分野に変革をもたらした。そして今、デジタルファブリケーションの登場により、コンピュータが“ものづくり(ファブリケーション)”の方法を変革する可能性があるといわれている。コンピュータによって“何が作れるのか”の部分が変わりつつある一方で、ソフトウェアは“何を設計できるのか”の部分も変えつつある」とティビッツ氏は語る。
デジタルファブリケーション(3Dプリンティングと同義)は複雑な形状の製品を作る自由を実現するが、「これは必ずしも『時間の自由』の実現を意味するわけではない」とティビッツ氏は指摘する。3Dプリンタで作った部品は、最終的には人や機械が組み立てる必要がある。この作業には、最終製品の大きさや複雑さの程度に応じて何時間、あるいは何日もかかることもある。
この「時間」という問題を解決できる可能性があるのが、4Dプリンティングだ。特に期待されるのが、製造や製品組み立ての分野への応用である。ティビッツ氏はこうした分野を「マクロスケールの世界」と呼んでいる。
「自己組み立てや再構成、プログラミングが可能な材料は、生物医学、材料科学、ロボット応用工学などの分野でも関心を呼んでいる」と同氏は語る。「われわれが訴えたいのは、マクロスケールの世界では、製品の組み立て方法だけではなく、環境やユーザーに対する素材の作用の仕方が見直される可能性が大きく広がるということだ」(ティビッツ氏)
4Dプリンティングで組み立て工程を簡素化
ティビッツ氏が紹介した動画では、多数の小さな破片が入ったフラスコが映し出された。フラスコを振ってエネルギーを加えると、破片が互いに引き寄せられて完全な球体に変化した。「破片が“正しく”集まると相互の結合が強くなり、形状が保持される。だが組み立てが正しくない場合は結合が弱く、すぐにばらばらになる。この素早い試行錯誤を通じて形が作られる」とティビッツ氏は説明する。
この自己組み立て能力は、作業指示や従来の製品製造スキルを不要にするかもしれない。
「材料が何であるのか、また何をするものなのか全く見当がつかない人でも、ランダムなエネルギーを与えることによって、こうした構造物を正確に組み立てることができる」とティビッツ氏は語る。同氏によると、材料の自己組み立てを引き起こすには、運動エネルギーだけでなく、熱や冷却、水分、磁気などさまざまな方法を利用できるという。
「材料を閉じ込める必要がある」とティビッツ氏は説明する。「木を使う場合は、木が反応するエネルギーを使うといった具合に、材料に合わせてシステムを調整することにより、変形を引き起こすことができる」
ティビッツ氏によると、4Dプリンティングには製造時間と労働力を節約できる可能性に加え、輸送面でのメリットもある。ある製品を最初は平らな状態にしておき、ユーザーに届けられたときに自己組み立てを引き起こすようにすれば、同じサイズのコンテナでより多くの製品を輸送できる。これは製造プロセスの物流段階でのスペースと経費の節減につながる。
「最小限の構造を製造し、後からそれらを複雑な3D形状に変形させる方が、最終的な形状を生産して輸送するよりもはるかに簡単だ」とティビッツ氏は話す。「変形能力を利用すれば、現場あるいは特定の環境で刺激を与えるだけで組み立てが行われるのだ」
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