“炎上”“風評”が変える企業のリスク管理【第4回】
広告はなぜ“炎上”し、どのように広がるのか――世界を敵に回さない4つの秘訣
企業のプロモーション活動の中核である広告が、インターネットで“炎上”の危険にさらされている。広告の炎上はなぜ起こるのか。炎上が広がる仕組みとは。対策を交えて解説する。
商品の宣伝をするために、テレビCMやWebの企画で面白いことをやろう。SNSで拡散させてみよう――。企業がこうしたプロモーション手法を考える動きは広がっており、イー・ガーディアンにも多くの相談が寄せられています。今までの連載でも説明してきたように、スマートフォン/タブレットといったスマートデバイスの普及で、インターネットが多くの人にとって身近になり、口コミの波及力が広がっていることが、その背景にあります。
プロモーションの中心的な存在が広告です。企業が発信する広告に対して、好感を持つ人もいれば、そうではない人も当然いるでしょう。テレビCMなど従来のプロモーションでは、今までは100人中1、2人に好感を持ってもらえなかったとしても、「個人の主観の問題なので仕方がない」と捉えることができたかもしれません。しかし、インターネットを中心とする昨今の広告では、その1、2人の少数派が起因となって炎上に発展するケースもあるのです。
本稿では、広告が炎上につながる背景と、その具体的な対策を解説します。
広告が炎上する仕組み
連載:“炎上”“風評”が変える企業のリスク管理
これまで炎上は、「Twitter」や「YouTube」といったソーシャルメディアのコメント機能などでネガティブな発言が書き込まれ、そのネガティブな発言がシェアされてソーシャルメディア内で広がっていくことが一般的でした。最近では、特に広告に関する炎上の場合、Twitterで炎上した話題が、ソーシャルメディアだけでなくニュースサイトやまとめサイトに掲載され、週刊誌などの既存メディアにまで拡散する例が現れています。
広告の炎上は、一般的には以下のような順序で進みます。
- 広告の公開
- Twitterで広告に関するネガティブな投稿が話題に
- 投稿へのリツイートやコメント、関連投稿の数が増えると、その話題をWebニュースやまとめサイトが紹介
- 投稿を見る人がさらに増え、その人たちが広告を見てTwitterで発言
- Twitterで再び話題に上がり、炎上開始
- 炎上の模様を別のまとめサイトが掲載したり、個人のブログなどでも取り上げるようになり、さらに拡散
- 場合によっては、週刊誌をはじめとした既存メディアも炎上の模様を過剰な表現で紹介
- その企業の商品について調べている人も炎上はもちろん目につき、企業イメージの悪化や売り上げ減少などが生じる可能性
- 以降、何かしらの対策が打たれるまで、この“負のサイクル”が継続
1つ例を挙げてみましょう。国内の大手航空会社が国際線増設に伴い、日本人のコメディアンが高い鼻と金髪のかつらを着けて西洋人のまねをするテレビCMを放映しました。テレビCMの放送直後から、TwitterではこのテレビCMの演出に対する賛否を記載した投稿が続出。まとめサイトでは、こうした投稿をまとめて取り上げました。
そのテレビCMは以後、さらにたくさんの人が見るようになり、炎上は拡散。海外に住む西洋人の目にも入り、Twitterで「もしあなたが日本に行くときがあっても、こんな差別的な航空会社は使わないように」とつぶやく人も出てきました。さらには、英紙「Daily Mail」「Daily Telegraph」の電子版などにも取り上げられ、このニュースは世界に拡散してしまったことになります。
航空会社はこのテレビCMの放映を取りやめました。しかし今でも、このニュースは社名を検索すればすぐに見つけることができます。炎上の事実を消すことはできないのです。
広告が炎上を招く理由
広告を発端とした炎上には、さまざまな原因があります。例えば、視聴者が「差別的だ」と感じる表現があることが原因となることもあれば、広告の作成者と受け手との感性の違いだけで炎上することも珍しくありません。広告に起用しているタレントが、実生活で問題やスキャンダルを起こして炎上が起こり、広告自体が打ち切りになることも多々あります。細かい表現1つで口コミが拡散し、炎上を招くという時代になっているのです。
プロモーション担当者が、面白い広告なり、多くの人を感動させる企画なりを作ろうとするのは、決して悪いことではありません。ただし、そうしたことだけにしか目が行かないと、広告の受け手との認識の違いや小さな抜け穴から炎上してしまうことを忘れてはいけません。
広告に限った話ではありませんが、インターネットの世界に少数ながら存在する「声が大きく影響力がある人」の言動も、炎上を招く大きな要因の1つとなっています。こうした人は大きな“拡散力”を持っており、彼らの考え方に強く共感する人のグループが形成されています。グループ内での拡散性は非常に高いです。
インターネットの話題を取り上げるまとめサイトや個人のブログも、炎上や拡散に大きな影響を与えているといえます。まとめサイトやブログの執筆者は、投稿がより多くの読者に注目されるために扇情的な書き方をすることが多々あるからです。
企画段階からのリスク管理が重要
「多くの人に見てもらえるのか」「これで売り上げが上がるのか」「どうしたら拡散するのか」「本当に拡散するのか」「『いいね!』はたくさん付くのか」「どれくらいの人にリーチできるのか」――。プロモーション担当者のこうした視点は決して間違ってはいないのですが、企画の検討段階からリスク管理担当者が関与し、リスク管理の視点を加えることが重要です。
広告がいったん炎上すると、広告自体の中止を決断する企業がほとんどです。そうなると、今までの努力が無駄になってしまいます。当社も企業から炎上に関する相談を多く受けますが、相談が寄せられるのは炎上した後であることが圧倒的に多いのが現状です。企画の段階からリスク管理の視点を取り入れていれば、こうした炎上は未然に防ぐことができた可能性があることを考えると、実に残念でなりません。
インターネットが普及し、ソーシャルメディアの利用が広がった今、情報は日本だけではなく海外にも一瞬で広がります。広告など企業のプロモーション活動においても、リスク管理を企画段階で考える重要性は高まっているといえます。リスクを想定しておけば対策をすぐに取ることができ、結果として炎上する可能性を抑えることができるからです。
具体的には、以下のような対策が挙げられます。
- 企画考案時から“性悪説”で捉えるアドバイザーとして、専門家に意見を求める
- 炎上の種となる口コミに発展しそうな広告であれば、ソーシャルリスニング(※)を広告開始と同時に実施する
- ユーザー参加型のWeb企画の場合、ユーザーの投稿を監視する
- 炎上した後の対策を考え、Web企画であればガイドラインを入れるなどの工夫をする
※ソーシャルリスニング: Twitterをはじめとするソーシャルメディアを対象に、話題のカテゴリごとにグループ化して投稿を収集すること。
「ネガティブ拡散」への対処法
こうした対策を取ることで、炎上が起こりにくくすることができます。ただし、100人中100人が好む広告を作る、つまり炎上の可能性をゼロにすることは非常に難しいことです。そこで広告を世の中に出すときは、「一定数はネガティブな拡散をする」という事実を想定すべきだと考えます。その上で、広告の効果測定だけでなく、ネガティブな拡散を監視することが重要になるのです。
発生してしまったネガティブな拡散を監視する上で、大切なのが以下の3点です。
- ソーシャルメディアの投稿に反応したのは、どのような考え方や思想、行動習慣を持つ人か
- 反応を集めた情報は、企業として世の中に伝えたいメッセージなのかどうか
- 伝えたいメッセージが反応を集めていない場合、どうすればよりよく伝えることができるのか
炎上に対処するのは重要ですが、企業が何か企画を実施する際に、必ずしもネガティブな反応にのみ注目すべきだとは考えていません。革新的なことをするためには、少々の反発は覚悟するといった“攻める勇気”も必要であるためです。
ソーシャルメディアでの拡散というと、どうしてもネガティブな拡散が注目されがちですが、ポジティブな拡散も少なくありません。知り合いの中に、「感動したらシェア」など、ポジティブな感情を持って情報共有をする人がたくさんいる、という人も多いはずです。
どのような反応が出るにしろ、ソーシャルメディアの声には真摯に耳を傾けることが求められる。そんな時代が来たのではないでしょうか。
竹口正修(たけぐち まさのぶ) イー・ガーディアン株式会社
ITベンチャーでのメディア営業、広告代理店での営業を経て、2013年イー・ガーディアンへ入社。現在では、営業部リーダーとして、企業の風評調査からソーシャルメディア運用、監視、ソーシャルリスニング等、ソーシャルメディア関連の業務に従事。大手メーカーなどでの炎上対策のセミナーやガイドライン策定まで多数を行う。
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“炎上”“風評”が変える企業のリスク管理
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