プライバシーをどう守る
iPhoneの指紋データをクラウドに送信か、Apple新特許に「大丈夫?」の声
米Appleの新しい特許によると、同社はクラウドを活用し、指紋照合システム「Touch ID」やモバイル決済システム「Apple Pay」の拡張を狙っているようだ。指紋データのセキュリティは守られるのだろうか。
新しく申請された特許によると、米Appleはユーザーの指紋認証データをクラウドに保存しようと計画しているようだ。
Appleが2013年発売の「iPhone 5s」から導入した指紋照合システム「Touch ID」は、端末に搭載する指紋認証センサーを使い、端末のロックを解除したり、「iTunes」「App Store」アプリでの買い物を許可したりできる。Touch IDで取得した指紋認証データは暗号化して端末に保存し、他のアプリやサードパーティーのシステムからは使用できないようにしている。
ところが、この状況が変わることになるかもしれない。というのも、Appleが新たに出願した特許には、「クラウドコンピューティング端末および関連方式による指紋センサーデータの同期」と記載されているからだ。
Appleが出願した特許の内容
2015年1月に米国特許商標庁(United State Patent and Trademark Office: USPTO)に申請されたこの特許の存在は、Apple関連の米ニュースサイト「AppleInsider」が最初に報じた。同サイトは、iPhoneがTouch IDで生成した指紋データを「登録指紋データのアップロードおよび保存の可能な別のクラウドコンピューティング端末」へ送るプロセスを説明している。このもう1台のクラウド対応端末も指紋認証センサーを搭載し、Touch ID搭載端末の指紋データとの照合を可能にするという。
この特許の記述によれば、Touch IDはiPhoneのロック解除以外に、別の端末からのクラウド経由での電子決済にも使用できるようになる。この指紋認証データに指紋画像そのものは含まれないが、Touch ID端末が生成した「登録指紋認証データ」とアカウント照合データを含むという。
特許には、「1つ目の(端末の)プロセッサでは登録指紋データの暗号化も可能で、2つ目の(端末の)プロセッサでは登録指紋データの復号も可能」と書かれている。
これまでAppleは、Touch IDの指紋データはユーザーのiPhoneに搭載されているプロセッサ「A7」の内部にある「Secure Enclave」(安全な領域)にしか保存しないと強調してきた。その端末のOSですら指紋情データにはアクセスできない。
AppleのWebサイトには「そのため、指紋データがiOSやその他のアプリによってアクセスされたり、Appleのサーバに保存されたり、『iCloud』やその他の場所にバックアップされることは絶対にない」と書かれている。
米調査会社Gartner副社長兼上級アナリストのアヴィヴァ・リタン氏は、指紋データへのアクセスをこれほど制限するのには十分な理由があると語る。「生体認証にはプライバシー侵害の危険が伴う。複数社どころか、1社に指紋データを預けるだけでも意見は大きく分かれる。クラウドに保存するとなれば、誰だって心配になるだろう」
リタン氏は、指紋認証データがローカルの端末のみに保存されているうちは、Appleによるそのデータの利用は極めて限られるという。だがそのデータをサードパーティーによる電子決済の認証などにも利用できるようにすれば、Appleの新しいモバイル決済システム「Apple Pay」にとって強力な機能拡張になる。「Apple Payの拡大として当然の流れだと考えられる」とリタン氏は語る。
とはいえ、この計画を現実のものにするには、Appleが乗り越えるべき壁が幾つかある。最初に解決すべき最も差し迫った課題が「セキュリティの問題だ」とリタン氏は言う。「端末間でやりとりされるのが指紋データそのものではなく登録データのみだとしても、そのデータを解読するアルゴリズムやツールがハッカーの手に渡る心配がある」(同氏)
Appleにとってのもう1つの課題は、小売業者や金融サービス会社からTouch ID決済のサポートを獲得するとともに、各社のサーバには指紋データを保存せず、決済認証をiCloudのようなサービスに依存することに同意を得ることだ。「銀行各社は『FIDO』など、データをローカル端末に保存する生体認証技術には関心がない。銀行が顧客の生体認証を導入するとしたら、そのプロセスを自分たちで管理することを望むだろう」(リタン氏)
一方、リタン氏によると、一部の銀行や大手小売業者は既にApple Payのサポートを表明しているという。こうした銀行や小売業者は、Touch IDによる決済認証にも同意すると考えられるものの、そのプロセスの一部を自社で担当するか、自社で指紋データを照合できることを条件にする可能性があるという。そうなると、悪意あるハッカーがクレジットカード番号と「PII」(Personally Identifiable Information、個人識別可能な属性情報の組み合わせ)に加えて、ユーザーの指紋データも入手しようとする恐れがある。
「(この特許は)Appleにとってはいいかもしれないが、全ての人にとってよいものになるかどうかは分からない」とリタン氏は語る。
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