問題点を洗い出す
「OpenStack」は“有望だけど未熟な技術”で終わるのか?
IBMやHewlett-Packardなどの業界大手の後押しにもかかわらず、「OpenStack」は期待に反して普及が進んでいない。どこに問題があるのだろうか。
「OpenStack」は2010年に、「Amazon Web Services」(AWS)に対抗するオープンソースプロジェクトとして開発が始められたが、同技術をベースとするパブリッククラウドは期待を裏切る形となった。米IBMや米Hewlett-Packard Company(HP)などの業界大手ベンダーからの支持を受けてきたOpenStackは現在、未熟な技術とみられており、普及を危ぶむ声も一部から出始めている。
米市場調査会社の451 Researchの予測によると、OpenStackの市場規模は2016年に17億ドルになり、2018年までに30億ドルを超える見通しだ。加えて、米Disney、独BMW、英Expedia、米eBay、米Wal-Mart、米Time Warnerといった大手企業がOpenStackを高く評価している。だが観測筋の間では、OpenStackが広範に普及する見込みはないとの見方が多い。OpenStackの普及は、同技術の機能よりも管理を重視する一部の業界や企業に限定される可能性が高いという。
「多数のITスタッフを抱えている大銀行や大手企業は、これからもOpenStackに固執するだろう。クラウド環境を自社で構築、所有したいからだ」と話すのは、エンタープライズインフラを専門とする新興企業の米Clear Sky Dataの共同創業者であるエレン・ルービン最高経営責任者(CEO)だ。「エンタープライズITという観点で見れば、OpenStackの実用化までには多くの課題が残されている。『IT as a Service』をどうすれば提供できるのかという部分が明らかではないのだ」
451 Researchでサービスプロバイダーを担当する調査ディレクターのアル・サドウスキー氏は「最大の障害は、各企業が自力でさまざまな機能を連係しなければならないことだ。しかも、どの企業もOpenStackに精通したチームを抱えていないのが実情だ」と話す。多くの企業は各機能連係に悪戦苦闘しているという。一方、OpenStackベンダーはいずれも、それぞれ独自のリファレンスアーキテクチャとそれに適したセットアップ方法を示している。
「OpenStackは小売店でパッケージソフトを購入するようなわけにはいかない」とサドウスキー氏は話す。「OpenStackというのは、さまざまなモジュールで構成されたツールキットであり、これらの全てのモジュールがうまく連係するように設定する必要がある」
普及の妨げはOpenStackの互換性要件
「OpenStack製品を販売するベンダーにとってOpenStackの互換性とは何を意味するのか」という議論もくすぶっている。OpenStack Foundationは今のところ、互換性の要件としてソースコードを順守することを挙げている。「ベンダーはOpenStackにラッパーをかぶせることはできるが、OpenStack Foundation(OpenStackの開発の取りまとめを行っている非営利団体)が示した基準に二の足を踏んでいるベンダーもあるようだ」と指摘するのは、米調査会社Forrester Researchの元副社長兼主席アナリストで、現在は米Microsoftに籍を置くジェームズ・スターテン氏だ。
「成熟度が低く、セキュリティも不十分な技術の使用を強いられるというのは、サービスプロバイダーにとっては納得のいかない話だ」とスターテン氏は話す。
同氏によると、より賢明なアプローチは、APIを中心とした互換性を確立し、実際のコンポーネントにはもっと柔軟性を許容することだという。「2016年にはこの議論が顕在化することになりそうだ」
キャパシティープランニングとパフォーマンスマネジメントを手掛けるカナダのCirbaの共同創業者であるアンドリュー・ヒリアー最高技術責任者(CTO)は「OpenStack計画を進めているIT部門や、既にOpenStack環境を構築したIT部門は多い。だがOpenStackは基本的なツールのセットであるにもかかわらず、『何から何まで全てがそろったソリューション』と誤解されがちだ」と語る。各社が構築したOpenStack環境のほとんどはまだテスト段階だが、サポートと保障が付いた商用OpenStackディストリビューションの市場拡大に伴って新たな動きも見られるという。
「OpenStackは成熟化に向かっており、また優れたディストリビューションも出てきたことで、魅力が少し高まりつつあるようだ。企業は自力でOpenStackを導入するのではなく、パッケージ化されたディストリビューションを受け入れる方向へと進んでいる」とヒリアー氏は話す。
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