慎重にパッチ適用の検討を
Android端末の66%に影響? Linuxカーネルの脆弱性で割れる意見
Linuxカーネルのキーリング機構に関する脆弱(ぜいじゃく)性が新たに見つかり話題になっている。しかし、Linuxエコシステムにとっての危険性について専門家の意見は割れている。
Linuxカーネルのキーリング機構(ドライバがセキュリティデータや認証キー、暗号化キー、カーネル内の他のデータなどを保持したりキャッシュしたりしておく機構)の脆弱(ぜいじゃく)性は、悪用された場合、権限昇格によってローカルユーザーにカーネルコードを実行される恐れがある。だが専門家の間では、この脆弱性の危険度や影響範囲をめぐって議論が起こっている。
セキュリティ企業Perception Pointの研究チームは、自社の公式ブログでこの脆弱性を発見したと発表し、これは2012年からLinuxカーネルに存在していたものだと指摘した。さらにPoC(概念実証)コードも公開したが、この脆弱性を突いた攻撃の発生は確認されていないと報告した。
Perception Pointは、このLinuxカーネルの脆弱性は「数千万台規模のLinux PCおよびサーバや、Android端末全体の66%に影響する」と主張する。だがGoogleは、影響を受ける可能性があるAndroid端末の数に異議を唱えている。
AndroidはLinuxカーネルをベースにしているが、Android端末に組み込む際にLinuxカーネルに変更が加えられることから、どれだけの端末が実際に影響を受けるかを判断するのは難しい。Googleは米TechTargetの取材に対し「LinuxカーネルとAndroidのバージョン番号は密接には対応しておらず、そのために一部の端末では、『Android 4.4』と新しいLinuxカーネルが採用されている」と述べた。こうした端末は脆弱性の影響を受ける可能性があるが、その台数は限られており、Perception Pointの主張よりも少ないのは確かだという。
GoogleのAndroidセキュリティ担当エンジニア、エイドリアン・ラドウィグ氏はGoogle+への1月21日の投稿で、Googleは既にパッチを作成し、Android Open Source Projectとメーカーに提供したと述べた。また、GoogleはPerception Pointの主張を調査し、リスクにさらされているAndroid端末の台数を把握しようとしているという。
ラドウィグ氏は次のように記している。「われわれは『Nexus』端末では、この脆弱性がサードパーティーアプリケーションによって悪用されることはないと考えている。また、『Android 5.0』以降を搭載する端末も保護される。『Android SELinux』のポリシーが、脆弱性の影響を受けるコードにサードパーティーアプリケーションがアクセスするのを防ぐからだ。さらに、Android 4.4以前が動作する多くの端末は、Linuxカーネル3.8で導入された脆弱なコードを含んでいない。これらの古いAndroid端末では一般的に、こうした新しいバージョンのカーネルは採用されていないからだ」
Perception Pointも、SELinuxがAndroid端末での脆弱性の悪用を困難にすると指摘している。また、Intel CPUのセキュリティ機能であるSMEP(Supervisor Mode Execution Protection)とSMAP(Supervisor Mode Access Protection)も、Linuxデスクトップおよびサーバでの脆弱性の悪用を困難にするという。
セキュリティ企業HyTrustのチーフアーキテクトを務めるスティーブ・ペート氏は、ユーザーを保護する機能は提供されているが、概念実証コードが脆弱性の悪用リスクを高めていると指摘する。
「この脆弱性の発見者は、脆弱性の悪用方法を明確に解説した記事を公開した。悪用に必要なコードは非常に少量で、広く公開されていて、誰でも見ることができる。システムにパッチを適用するにはしばらく時間がかかることを考えれば、悪用手段がこれまでになく広まろうとしているといえる」(ペート氏)
一方、マルウェア対策ベンダーであるBitdefenderで電子脅威研究員を務めるリビウ・アルセーヌ氏はこう述べている。「この脆弱性の脅威は軽減されている。悪用コードを拡散し、作動させるのは、特にAndroid上では難しいと考えられるからだ」
「そうした不正なアプリケーションがGoogle Playで配布される可能性はまずない。コミュニティーやセキュリティ会社によって精査され、すぐに問題が報告されて、締め出されてしまうだろう。もっとも、ユーザーがこうしたアプリケーションをサードパーティーのアプリストアからインストールしてしまう恐れがあるのは確かだ。しかし、それはそうしたユーザーが以前から冒してきたリスクだ」(アルセーヌ氏)
だが、セキュリティ企業Rapid7のエンジニアリングマネジャーを務めるトッド・ビアズリー氏は、この脆弱性は攻撃者にとって、一般的なLinuxデスクトップを標的にしようとする場合でさえ、あまり役に立ちそうもないと指摘する。
「カーネルの脆弱性は、権限昇格に悪用するのが難しいことが知られている。攻撃者がコントロールできないもろもろの条件が、全て成立する必要があるからだ。今回、新たに脆弱性が発見されたことは間違いないが、現実的な影響という点では、どうということもなさそうだ。概念実証コードとして公開された脆弱性悪用コードは、確実性が低く、犯罪者がそのままさまざまなプラットフォームに適用することはできそうもない。実際に機能することを実証できる、細部まで作り込んだ悪用コードがなければ、攻撃者がAndroidでどうやってこの脆弱性を突くことができるのか、私には見当がつかない」(ビアズリー氏)
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