企業ブログの投資効果Column

ブログを立ち上げるのは簡単でコストもあまり掛からない。だが、初期費用の低さの陰には真の出費が潜んでいる。ブログの功罪を見ていこう。

2007年05月08日 05時00分 公開
[Paul Gillin,TechTarget]

 マクドナルドはチェーンの拡大に伴い、品質に目を光らせるためにそれをやっている。デルは顧客の技術サポート問題に対応するため、サウスウエスト航空は楽しく親しみのある航空会社というイメージを広めるため、ベネトン・グループは世界の問題や政治問題に物申すためにそれをやっている。

 インターネットを席巻した自己パブリッシング現象であるブログを、これらすべての企業が価値あるものと見なしている。今、ブログの投資利益率(ROI)について重要な疑問を投げ掛ける企業は多い。

 この投資は一見したところ、それほど重要には思えない。ブログはどんなユーザーでも、ものの数分でスタートできる。有料ブログサービスは最高でも月額15ドルほどで、多くのサービスは無料だ。

 しかし、初期費用の低さの陰には真の出費が潜んでいる。オンライン日記をつけるために従業員が費やす時間がそれだ。平均的なブロガーはこの作業に週2〜3時間をかけ、日がたつにつれその時間は増えていく。マイクロソフトなどのように、ブログは顧客との関係においてメリットがあると確信し、何千人もの従業員に参加させている企業もある。しかし、ほとんどの企業はマイクロソフトではない。

 ROI問題は、ブログ現象に乗る企業、特に大企業が増える中で表面化してきた。「ROIは1年前よりも大きな問題になっている」と指摘するのは広報測定を手掛ける米KDペイン&パートナーズの創業者、ケイティ・ペイン氏。TNSメディアインテリジェンス/シンフォニーニールセン・バズメトリックスビズ360など数社が、ブログで取り上げられた企業の姿を測定するサービスの提供に乗り出している。

 ファイザーの1部門であるファイザー・コンシューマー・ヘルスケアは、昨年ジョンソン・エンド・ジョンソンに買収される前、シンフォニーのサービスを使って、ブログや掲示板に書かれた自社のコンシューマー製品に関する顧客のコメントをチェックした。「掲示板から読み取った内容は当社の考え方を裏付けるものもあったが、当社が見過ごしていたかもしれないチャンスの可能性へと目を開かせてもくれた」。広報・インタラクティブマーケティング責任者のトム・マクミラン氏はこう話す。

 このプロセスで新しい見方ができたと同氏は言う。「フォーカスグループは大部分が計画的に選ばれている。紛れもなく、巷で言われていることがここにある」

 ブログにはビジネス上の明らかなメリットがある。1つには、ブログは検索エンジンで極めてうまく機能し、全体のトラフィックを増やすための貴重なツールになり得る。自分のブログから自分の会社のWebサイトへのトラフィックは標準的なログで簡単に把握できる。会社のブログからリンクのトラッキングコードを使い、どのビジターが買得情報や注文フォームをクリックしたかを調べることも可能だ。この方法で、ブログトラフィックから直接派生した売り上げを調べることが可能になる。

 企業は特定の市場で自社を際立たせるためにもブログを使っている。単純なトラフィック測定でも成功を測る指標にはなるが、自社のブログについて他者が言っていることに目を向ければ、自分たちがどの程度話題になっているかを推察できる。「ビジター数を数えるのは誤りだ。コメント、トラックバック、リンクに目を向け、これがたくさん獲得できていれば、違いを出せているということだ。比較のために、競合相手についてのコメントも調べるといい」とペイン氏。

 小規模な企業にとっては、ブログはフォーカス性が強いため、手早く目に見える利益を上げられることもある。化粧品メーカーの米ナンシーボーイは5年で年商10万ドルから400万ドルに成長したが、その一因は同社のブログがひげそりマニアの間でヒットしたことにあった。

 これに比べると大企業にとってのメリットは見えにくいが、それでも価値はある。マクドナルドの革新的な社内ブログアプリケーションでは、選ばれた従業員が同社のチェーン店のサービスや状況についてブログをつけることができる。日記は一般には公開されないが、この実験は、検査官を雇うよりも経費を安く抑えられる代替手段となる。

 ほかにも有用だが測定が難しい企業のブログ利用の例を幾つか挙げておこう。

市場調査

 ブログは比較的経費が掛からず手早くアイデアを浮上させ、相当量のフィードバックを得られる媒体だ。トラフィックが多いブログなら数日で何百ものコメントを集められ、Google AlertsTechnorati Favoritesなどの手軽なツールで、ブロガーが自分の会社や競合企業について何を言っているかをモニタできる。これを市場調査に掛かる経費に照らして考えてみるといい。

顧客サービス

 ブログは、特に危機にあっては、高度な顧客サポートシステムを構築するより手早く簡単な代替策になり得る。デルは2005年、顧客サポートをめぐる悪評に見舞われた際、身をもってこのことを学んだ。昨年、同社はサポート機能強化の取り組みを顧客に知ってもらうためのブログを立ち上げた。

市場へのメッセージ

 大手メディアもブログに目を通すようになり、影響力の強い相手と対話するためのツールとしてこれを利用している。しかしブログはメディアを抜かすためにも利用される。例えば最近あったゼネラルモーターズとニューヨークタイムズとのいさかいを見てみよう。編集者への手紙を掲載させようとして業を煮やしたGMは、自社のFastlaneブログで主張を展開する行動に出た。結果として集まった注目は恐らく、ニューヨークタイムズに手紙が掲載された場合に集めていただろう注目度をはるかにしのぐものだった。

企業イメージの強調

 熱心なファンが付いていたり独自のイメージを持っている企業は、ブログによって顧客の支持を活用して会社の声を再認識してもらうことができる。これを実行しているのはギネス、サウスウエスト航空、ベネトンなどだ。こうした共有ブログには複数の貢献者がいて、それほどの時間を取られずに会社のブランドを宣伝できる効果的な手段となり得る。

 ブログのROIを測る新しい手段を発明しようと熱心に取り組んでいるIT企業も多い。この新しい媒体は企業にとっての潜在メリットがあまりに大きく、ROIに関する疑問に応えないわけにはいかないだろう。

本稿筆者のポール・ギリン氏は、独立系マーケティングコンサルタントで、TechTargetを創設した編集長。

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