「情報共有に最終形はない」──情報爆発がもたらす探す手段の未来進化を続けるエンタープライズサーチ

インターネットの世界と同様に企業内でも情報が急増し、必要な情報の入手はますます困難になっている。そして専門家は情報の検索と共有にゴールはないと明言する。

2008年04月15日 00時00分 公開
[富永康信,ロビンソン]

検索性が低下したままの情報爆発

 1990年代後半、ナレッジマネジメント(以下、KM)は企業が長年の命題としていた情報共有を実現するものとして一大ブームになった。しかし2000年以降、KMに取り組んだ企業のほとんどが失敗に終わっているという評価が広まり、ブームは急速に沈静化していった。

 当時のKMが形骸化した要因は、特定ベンダーに依存したアーキテクチャやコンテンツが書き込まれるだけで活用されないライトオンリー化などが考えられるが、情報分類・整理のための過大な管理負荷や、投資効果の算定が困難だったことも消極的にとらえられた。

 そうした中、Web 2.0の技術やコンセプトを企業情報システムにも取り入れ、情報へのリーチや社内コミュニケーションの活性化に役立てようとする「エンタープライズ2.0」に注目が集まるようになったことで、再びKMを見直そうという動きが活発化している。その動機を後押ししたのが、「情報爆発」とも称されるデジタルデータの急増だ。

 米IDCが2008年3月に発表した全世界のデジタルデータ量に関する調査(※1)によると、2003年に5Eバイト(エクサバイト、1Eバイト=約105万Tバイト)程度だったデータ量は2007年には281Eバイトとなり、2011年には1800Eバイト近くに達すると予測している。

(※1)出典:米IDC(協賛:米EMC)「膨張するデジタル宇宙(デジタル・ユニバース):世界の情報量に関する2011年までの成長予測」

 みずほ情報総研のコンサルティング部でシニアマネジャーを務める吉川 日出行氏は「このようなネット社会で見られる現象は、企業や組織内部でも起こり始めています」と指摘する。

 企業では、過去に大量に使用されていた紙の情報が次々と電子化され、ファイルサーバやグループウェアに蓄積されている。しかし、こうしたデジタル化の作業は機械的に行われる傾向があり、整理・分類といった洗練化や標準化の手順を経ていない場合が多い。その結果、情報の検索性は低下し、それぞれの情報は見つけ出すのが難しく、情報同士の関連性はとらえにくくなっている。

画像 社内外で多くの情報共有ツールやデータベースが乱立することで、共有情報がはんらんし、必要な情報の効率的な取得、活用が困難になっている

 吉川氏は「欲しい情報があることは分かっていながらどこにあるかが不明、あるいは探す手段がなくてたどり着けないという問題は、ビジネスの効率性に大きな影響を及ぼします。それが企業内で起っている情報爆発の実態です」と説明する。

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