グリーンコンピューティングに対する批判派は、データセンターの電力効率向上による電力消費の減少という図式には、消費者需要の増大というファクターが抜けていると指摘する。
グリーンコンピューティングを推進する動きに懐疑的な人の中には、データセンターの電力効率が向上しても電力消費全体が最小限に抑えられるとは限らないと考える向きもある。実のところ、データセンターの電力効率の向上は、かえって電力利用を増大させてしまうというのが彼らの見方だ。グリーンコンピューティングに対する批判派は、「データセンターの電力効率向上による電力消費の減少」という図式には、消費者の需要の増大という重要なファクターが抜け落ちていると指摘する。
その論法は、製品の効率が上がればその製品はより使われるようになり、結果的に消費されるリソース全体は効率が低かったときよりも多くなるというものだ。元Hewlett-Packard(HP)の研究員で現在はMicrosoftに勤めるクリスチャン・ビレディ氏は、こうした観点からデータセンターの電力効率の向上を、ガソリンのコストを引き合いに出して説明している。IT機器では、単位コンピューティング性能当たりの電力コストが大幅に低下しており、もしガソリン価格も同じように値下がりすれば、人々は発電機を自前で持って、ガソリンによる自家発電で何でも動かそうとするだろうというのだ。
Microsoftの戦略インフラアーキテクト、ルイス・カーティス氏もブログ投稿で同様の見解を示した。「ほとんどのベンダーは現在、グリーン化への対応として、ワット当たり性能を売り込むマーケティングを推進している」と同氏は書いている。「だが現実には、『電力効率の向上がグリーン化につながる』というこうした議論は成り立たない。というのも、環境の持続可能性が求められる中、この議論では、電力効率の向上が環境にもたらすプラスの効果しか考慮されておらず、電力需要を加速してしまうという影響が勘案されていないからだ」
しかし、ビレディ氏とカーティス氏は、決して省電力化に反対しているわけではない。それどころか、ビレディ氏は、データセンターの効率指標の策定に大きな役割を果たしてきた。
「カーティス氏は、シニカルな目で現実をとらえて議論を提起しているのだと思う。彼の話には一理ある」と、Uptime Instituteの創業者でエグゼクティブディレクターを務めるケン・ブリル氏は語った。「しかし、製品Aと製品Bの選択肢があり、性能的に同程度なら、ワット当たり性能を基準にして選ぶべきだ」
さらにブリル氏は、ベンダーは常に自社製品のマーケティングにあの手この手の工夫を凝らすだろうが、中立的な指標の整備が進んでいることから、ユーザーは購入すべき製品を判断しやすくなっていると付け加えた。こうした指標には、SPECや米国環境保護庁(EPA)によるサーバの効率基準、Green GridやUptime、EPAによるデータセンターの効率指標などがあり、これらは完成しているか、策定の途上にある。
Green GridのメンバーでSprayCoolの創業者でCEOのドン・ティルトン氏は、ITの利用拡大を主な背景として、ITでの電力需要が増加する見通しであることを認めた。同氏は、ITの負荷を高めている要因の例として、オンラインバンキングと音楽ダウンロードを挙げている。
APCの副社長でGreen Gridのボードメンバーでもあるジョン・タシーロ氏は、企業が電力効率のいいIT機器を購入することは、ITインフラがより少ない電力でより多くの処理を行えるようにすることを通じて、電力需要の緩和に貢献することにつながると語った。また、企業にとってそうしたIT機器の購入は、多大なコストが掛かるデータセンターの増設を遅らせるのに役立つという。
結局のところ、データセンターの電力効率と消費者の需要の相互関係は、「ニワトリが先か卵が先か」という問題になる。電力消費が増加しているのは、製品の電力効率が向上しているからなのか。あるいは、製品の効率向上は、消費者の電力需要の増大に対応するために進められているのか。前者の見方が現実に即していると考える人もいれば、後者がそうだという人もいる。だが両者とも、省電力こそ目指すべき目標だという点では一致している。
「Green Gridでは、ITの需要が減少するという想定はしていない」とティルトン氏。「われわれとしては、電力が浪費されないようにすることを目指している」
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