Windows Server 2008 R2ではプロセッサ要件がx64とItaniumプラットフォームに限定されている。そのため導入に当たっては、キャパシティープランニングをあらためて検討する必要がある。
「Windows 7」と「Windows Server 2008 R2」が先ごろ製造工程向けにリリースされたのに伴い、企業のITマネジャーは、いずれ新OSへのアップグレードが避けられないという前提に立ち、将来のキャパシティープランニングを検討する必要がある。
これらの新しいOSプラットフォームは、従来版とは異なるコードツリーをベースとしているため、それらが動作するハードウェアにも影響する。
Windows Server 2008/2008 R2の基本的なハードウェア要件を表1に示す。これらの要件はほとんど共通だが、最も重要な違いは、Windows Server 2008 R2ではx64(64ビット)とItaniumプラットフォームに限定されているということだ。このため、IT部門でもその点を考慮したプランニングが必要だ。Microsoftによると、今後はx86(32ビット)用サーバ製品を開発する予定はないということだ。Exchange Server 2007以降の製品はx64プラットフォーム上でのみ動作し、今回のリリースも64ビット化に向けた方針に沿ったものだといえる。この新しい64ビット要件により、Windows Server 2008 R2の導入準備を進めているITマネジャーはハードウェアプランニングの戦略を策定する必要がある。
コンポーネント | 要件 |
---|---|
プロセッサ | 1.4GHz以上のx64プロセッサ ※ Windows Server 2008 for Itanium-based SystemsにはItanium 2プロセッサが必要 |
メモリ | 最小:512MB 最大:8GB(Foundation)、32GB(Standard、Enterprise、Data Center、Itanium-based Systems) |
ディスク空き容量 | 32GB以上(メモリが16GB以上の場合は10GB以上) |
コンポーネント | 要件 |
---|---|
プロセッサ | 1GHz以上のx86プロセッサあるいは1.4GHz以上のx64プロセッサ ※ Windows Server 2008 for Itanium-based SystemsにはItanium 2プロセッサが必要 |
メモリ | 最小:512MB 最大: x86:4GB(Standard)、64GB(Enterprise、Data Center) x64:8GB(Standard)、32GB(Foundation)、2TB(Enterprise、Data Center、Itanium-based Systems) |
ディスク空き容量 | x86:20GB以上 Foundation:10GB以上 x64:32GB以上 (メモリが16GB以上の場合は10GB以上) |
MB:Mバイト、GB:Gバイト、TB:Tバイト |
新しい64ビット技術は、ハードウェアへの投資の効果を最大化する可能性が非常に高い。この数年、ハードウェア技術は32ビット技術を追い越している。32ビットアーキテクチャには、2の32乗バイト(4Gバイト)の物理メモリまでしか扱えないという制約があるからだ。サーバでは容易に4Gバイトの何倍ものメモリ構成にすることができるが、32ビット技術ではOSが物理リソースを利用する能力を制限してしまうのだ。
このため、例えば16Gバイトの物理メモリを搭載したシステムであっても、32ビット技術では4Gバイトのメモリまでしか認識することができない。OSやアプリケーションから出された命令は、物理メモリのアドレス空間に格納する場所がなくなれば、仮想メモリのアドレス空間に格納される。これは「ページファイル」(ディスク上に存在するファイル)を使って実現される。物理メモリにページファイルを加えたものを「仮想メモリ」と呼ぶ。
ページファイルに格納された命令を実行するには、その命令を物理アドレスに移動しなければならず、そのための場所を確保するために、既存の命令を物理アドレスの外に移す必要がある。この処理は「ページング」と呼ばれ、物理メモリから命令を直接実行するよりもパフォーマンスが低くなる。認識可能なメモリを増やすテクニックも存在するが、これは借金して借金を返すようなもので、ページングが頻繁に発生することになる。
一方、64ビットアーキテクチャでは、2の64乗バイト(16エクサバイト)の物理メモリを認識することができる。このため、アプリケーションとOSの機能を物理メモリにロードすることが可能になり(十分な物理メモリを搭載している場合)、これによって大幅な高速化を実現できる。
x64技術では32ビットのWindowsを実行することも可能だが、広大なメモリ空間を利用するには64ビットのWindowsが必要だ。搭載メモリが4Gバイト以下であれば、32ビットWindowsを使っても構わない。32ビットアプリケーションは、64ビットのWindows上でもWOW(Windows on Windows)と呼ばれるエミュレーションモードで動作するということも指摘しておく必要がある。この場合、32ビットプラットフォーム上よりも少し高速に動作する可能性もあるが、それはアプリケーション次第だ。64ビット技術の利点を生かすには、アプリケーションもx64プラットフォーム用に書かれていなければならない。なお、16ビットアプリケーションはx64プラットフォーム上では動作しない。
大量のメモリを消費することで不評を買ってきたExchange Serverももちろん、64ビットアーキテクチャの利点を生かすことができ、ドメインコントローラー(DC)と仮想サーバ技術も恩恵を受ける。NTDS.dit(Active Directoryデータベース)全体をメモリに格納するように64ビットのDCを設定することも可能であり、そうすれば大規模なActive Directory(AD)環境でDCのパフォーマンスが大幅に改善する。1台の物理ホスト上で複数のサーバを動作させる仮想サーバ技術でも大量の物理メモリを利用でき、より多くの仮想マシンをホスト上に置くことが可能になる。これは物理マシンの利用効率の改善にもつながる。
こういったアドバンテージを提供するx64技術だが、すべてのパフォーマンス問題を解決するわけではない。CPU速度やディスクI/Oといった要因もパフォーマンスに影響するからだ。しかしWindows Server 2008は、32ビット技術をベースとした最後のバージョンになる。
2008 R2の導入に伴う問題点を挙げてみよう。
次に、Windows Server 2008 R2を導入するメリットを挙げる。
つまりWindows Server 2008 R2は、将来のWindows環境につながる新しいOSバージョンだということだ。キャパシティープランを策定するに当たっては、64ビット技術に向けた会社のロードマップを検討することが肝要だ。適切なキャパシティープランニングにより、特に仮想環境においてアプリケーションパフォーマンスとハードウェア利用率の改善が期待できる。
本稿筆者のゲーリー・オルセン氏は、Hewlett-Packard(HP)のGlobal Solutions Engineering部門のシステムソフトウェアエンジニア。著書に「Windows 2000: Active Directory Design and Deployment」、共著書に「Windows Server 2003 on HP ProLiant Servers」がある。Microsoft MVP for Directory Servicesを受賞しており、Microsoft MVP for Windows File Systemsの受賞経験もある。
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