Oracle E-Business SuiteはIFRSで対応が求められる各要件をどのように処理できるのだろうか。用意されている機能を説明し、対応例と課題を挙げよう。
第1回では、Oracle E-Business Suite(EBS)とOracle Hyperionの機能概要と課題を概観してきた。今回は日本の会計基準を採用する企業が、IFRSに移行する際に、業務プロセスやシステムに影響を及ぼすと考えられる主要論点について解説する。
(1)収益認識
日本の会計基準では、企業会計原則において、実現主義により収益を認識することが記載されているが、認識基準に関する具体的な要件は示されていない。そのため、情報が入手しやすいことや、税務の観点から、自社の工場や倉庫等から物品を出荷した際に収益を認識する「出荷基準」を採用する企業が多いと考えられる。
IFRSにおいては、物品の販売、役務の提供、利息、ロイヤルティおよび配当について、収益をどのタイミングで計上するかの認識基準が示されている。影響が大きいと考えられる物品の販売における収益の認識について見てみると、その認識要件の1つとして「物品の所有に伴う重要なリスクと経済価値が買い手に移転した」ことが求められている。
当該要件に従うと、企業間の契約にもよるが、物品が買い手に着いたときに収益を認識する「着荷基準」、または物品の検収を受けたときに収益を認識する「検収基準」への変更を求められる可能性が高い。そうなると現在「出荷基準」を採っている企業にとっては、買い手に着荷または買い手が検収した情報をもとに収益を認識することになるため、買い手の着荷または検収情報を入手し、入力する業務プロセス、システムの変更が必要となる。
また、「着荷基準」の場合、買い手から情報を入手せず、着荷日等の予測計算を行う簡便的な方法も考えられるが、その場合でも業務プロセス、システムの変更が必要になると考えられる。
さらに、「着荷基準」「検収基準」に収益認識基準を変更した場合は、積送中の棚卸資産の管理を自社の倉庫等にある棚卸資産と別に行う必要があるだろう。
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