「Green is Lean」──小売業に求められるサプライチェーン戦略ガートナーに聞く「国内小売業が取るべきIT戦略」【後編】

消費が冷え込む中、米国流通業は次の戦略として「サプライチェーンを包括した統合ビジネスプランニング」「グリーン調達」を考えている。これらはどのような効果をもたらすのか。

2010年01月06日 08時00分 公開
[岩崎史絵,トレッフェ]

1億ドル以上のコストを削減する統合ビジネスプランニング

 前編「欧米小売業に学ぶ『自社の強みを生かすIT活用』」では日本の小売業界に対し、「正確な需要予測を実現する仕組み作りと、先進事例から学び、自社独自のより良いIT戦略を作り上げることが必要だ」と提言した米ガートナー リサーチ バイスプレジデント ジェフ・ウッズ氏。米国では今、メーカー・卸売業・小売業を巻き込む大きな戦略投資の流れが来ているという。それは「統合ビジネスプランニング(Integrated Business Planning)」と呼ばれるものだ。

 統合ビジネスプランニングとは、財務系、販売系、そして店舗や倉庫、工場、流通などのオペレーション計画すべてを包含する仕組みのことである。通常、財務部門が売り上げ予測をして全体の目標値を定め、販売側が個々の売り上げ目標を出す。その売り上げ目標を達成すべく、オペレーションと連携を取っていくのだが、この間の意思決定ややりとりが大きなコストになっているという。

 例えば、ある地域に販路を広げる際には、在庫保管や物流の仕組みを整えなくてはならない。経営上、販路を広げることは必要だが、そこにコストや人手が必要な場合はオペレーション側が抵抗するケースがある。このやりとりによって、販売機会を逸するだけでなく、何も打ち手がない状態で人件費だけが掛かり、大きなロスを生み出しているのだ。米国の大企業の場合、こうしたロスだけで年間1億ドル以上のコストを試算している企業もあるという。

 企業内部でこうした“三すくみ”状態に陥るのは、日本も米国も同じである。そこで、縦型の連絡経路ではなく、3つの部門がインタラクティブに情報をやりとりし、適正な戦略を立てられるようにするのが統合ビジネスプランニングだ。「この流れはメーカーを発端にサプライチェーンのエコシステムの中で形成されつつあり、卸売業から小売業へと波及していくでしょう」とウッズ氏は説明する。

 業界をまたいでこうした動きが出てきたのは、言うまでもなく市場環境が冷え込んでいるためだ。一企業の利権にとらわれるより、原材料調達から市場までのサプライチェーンのプレーヤー全体が手を組むことでより市場のニーズをつかむことができ、地域差なく、適切な商品を適切な時期に顧客に届けられるようになる。これが、小売業・卸売業を含む米国の産業全体の流れだという。

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