100年に一度といわれる経済危機に巻き込まれ、厳しい状況に立たされる国内製造業界。そうした中、ITには何ができて何ができないのか? ガートナー ジャパンのコンサルティング部門を率いる中村祐二氏に聞いた。
ガートナー ジャパン ガートナーコンサルティング マネージング・ディレクターの中村氏は、昨今の経済危機で有事対応を余儀なくされている国内製造業界の状況から、東名高速道路の渋滞ポイントである大和トンネル付近の様子を連想するという。
「先頭車両に何かあったために、後に続く車は何が起こったか分からぬまま次々と急ブレーキを踏まざるを得なくなった。いち早くブレーキが踏めたこと自体は、今日のスピード経営志向やIT活用による迅速な情報伝達が功を奏したといえるが、問題はいつ再び走り出せるかということだ。早く再スタートを切りたいが、先頭車両が問題を解決して走り出してくれない限り、後続車両は誰もアクセルを踏めない。しかも後方にいるから問題解決の進ちょく状況もよく分からず、ストレスはたまるばかり。そんな状況だ」(中村氏)
とりわけ国内の大手製造企業は、海外市場での売り上げ激減と円高という形で、この構図に見事に巻き込まれてしまった。「本業では何も失策を犯していないのに、なぜ……」という理不尽な思いをぬぐい切れない業界関係者も多いかもしれないが、当面の課題はこの危機的状況をどう乗り切るかだ。製造企業の情報システム部門は、ここまで進めてきたIT投資案件をどうしたらいいのか。
この問いに対して、中村氏は「ストップしてしまってもいい」とアドバイスする。
「企業内であらゆるコストにメスが入っている今、IT投資だけは別というわけにはいかないだろう。一度ストップしてしまったら再スタートに莫大なコストが掛かる案件以外は、取りあえずストップしてみる、というのも一法だと思う」(中村氏)
ただ、ここでぜひ行っておきたいことがある。それは、IT案件それぞれの投資対効果の見直しだ。本当にコスト、人材、時間をかけて取り組み、実現する価値があるプロジェクトなのかどうか。シビアな目線で見つめ直す必要があるようだ。
ここで中村氏は、製造業に限らず日本企業全体にいえるIT投資の難点として、2つの大きなポイントがあると指摘する。
1つは、これまで構築されてきたITシステムが、現実世界と乖離(かいり)してしまっていること。もう1つは、企業内のすべての部門にわたり、メリハリなく総花的にIT投資を行き渡らせようとしていること。経済危機を契機としたIT案件見直しは、これらの問題をじっくり考え直すチャンスだというのである。
では、ITが現実と乖離しているとは、具体的にどういうことなのか? メリハリのないIT投資とは、どのようなものなのか?
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