「BCP」「サステナビリティー」「ESG」は“別物”ではない?経営に求められる新たな視点とは

BCP、サステナビリティー、ESGは異なる概念だが、3者の目標には共通点がある。それぞれどのような関わりがあり、その考え方を経営戦略にどう取り入れればいいのか。

2024年05月31日 05時00分 公開
[Paul KirvanTechTarget]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を契機に、企業の在り方や働き方をはじめ、社会では想定外のさまざまな変化が生じた。自然災害がサプライチェーンやインフラの運営に影響を与え、業務中断の原因になる事態も発生している。近年はこうした事態に備え、サステナビリティー(持続可能性)とESG(環境、社会、ガバナンス)でBCPを補完する考え方が企業に広がりつつある。 BCP、サステナビリティー、ESGにはどのような関わりがあるのか。

BCP、サステナビリティー、ESGの関係性とは

 サステナビリティーは、1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」が発表した概念だ。「将来の世代のニーズを満たしながら、現在の世代のニーズも満たすこと」を意味する。サステナビリティーと類似するキーワードとしてESGがある。ESGは、投資家や株主に責任ある投資を求める目的で2006年に国連が提唱した「PRI」(責任投資原則)を構成する要素だ。二酸化炭素排出量や「DEI」(ダイバーシティー、エクイティー、インクルージョン:多様性、公平性、包摂性)といった取り組みから成り立っており、企業の経営状態を評価する指標となる。一部の企業は、サステナビリティーやESGを経営戦略に取り入れるようになりつつある。

 サステナビリティーを考慮したBCPを策定するにはどうすればよいのか――。その問いへの回答を導き出すには、ESGを構成する要素のうち「環境」と「社会」がBCPとどう関わっているのかを整理するのが一助となる。

 環境に配慮した持続可能な職場を整備するためには、電力消費量の削減や環境に配慮した製品や設備の使用、使用後のリサイクルといった取り組みが有効だ。BCPの策定においては、技術や製品、設備を持続的に使用するための要因を特定することで、環境面に配慮できる。

 策定済みのBCPを再検討して、環境の観点を含めることも一案だ。これによって、インシデントが発生した際に、事業継続の担当部門と経営幹部が環境負荷を最小限に抑えるための施策を優先できるようになる。

 被害を受けた場合の復旧作業においても、環境への配慮は不可欠だ。IT部門と事業継続の担当部門は、被害や復旧作業から学んだ教訓を踏まえて業務を改善し、環境への影響を最小限に抑える方法を見いださなければならない。

ESGのS(社会)とBCP

 BCPやサステナビリティーの観点から、災害や事故といった緊急事態が発生した場合に備えて緊急連絡網を作成することは一つの手だ。従業員の最新の連絡先情報を確保したり、緊急時に誰がどこにどのような順番で情報を連絡するのかを全従業員に周知したりすることで、社内外での混乱を回避しやすくなる。

 重大なインシデントや災害に備えて訓練を計画、実施することも必要な施策だ。避難経路や避難方法、集合場所、最新の情報を取得するための連絡先を従業員に周知し、実践できるようにする。

 災害時に警報を発信する緊急速報と連動して機能するソーシャルメディアは、BCPやサステナビリティーに貢献する重要な要素だ。緊急速報の活用や、従業員の家族とのコミュニケーション、メディアへの応対を適切に実施してBCPを実践する上で、ソーシャルメディアが威力を発揮する。


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