企業のIT投資は「レガシー」と「モダン」のどちらに向かう?調査から探る“重点投資分野”

企業のIT部門は、技術的負債の解消という課題と、新技術の台頭という新たな流れに直面している。企業は今後、どの分野への投資を重視するのか。調査結果を基に解説する。

2024年05月29日 05時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

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 現代のIT市場では、レガシーシステムとそれに伴う技術的負債(先送り作業)の解消が急務となる中で、人工知能(AI)技術など新しい技術への投資も進行している。企業はIT投資の分野として、何を重視しているのか。

 米TechTargetが2024年2月に公開したIT支出計画に関するレポート「2024 Technology Spending Intentions Study」を基に、企業が重視している投資分野を解説する。

レガシーとモダン、それぞれの投資分野の傾向とは?

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 レポートはTechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)が実施した調査に基づく。2023年10~12月にかけて、グローバルのIT意思決定者1432人を対象に実施した。

 調査では、企業が長期にわたり蓄積された技術的負債の解消に取り組む状況が明らかになった。回答者の約4分の1(23%)は、「リファクタリングを進行中」と回答した。リファクタリングとは、システムの挙動を変えずにプログラムの内部構造を変えることを指す。

 企業は新規でアプリケーションを構築する場合、クラウドサービスで動作することを前提とした「クラウドネイティブ」のアーキテクチャを採用することがある。一方で大半の企業にはレガシーアプリケーションが存在する。

 レガシーアプリケーションをそのままクラウドサービスに移すアプローチを「リフト&シフト」と呼ぶ。システムを再構築する余裕はないが、クラウドサービスに移行したい企業にとって有効な方法だ。しかしリフト&シフトでは、クラウドサービスのスケーラビリティ(拡張性)をはじめとして利点を生かし切れないことがある。そのためリファクタリングの必要性が出てくる。

 本来なら再設計すべき箇所を一時的な対策で動くようにすると、長期的な技術的負債を生みかねない。後々のメンテナンスや機能拡張の際にその部分が障害となり、結果的に運用コストが増加したり、信頼性が低下したりするリスクがある。

新技術への投資も加速

 アプリケーション開発の投資として企業が重視している分野でトップになったのは「DevOps」(開発と運用の融合)(35%)だった。その他、企業がアプリケーション開発で重視している分野としては、クラウドネイティブ開発やデータ駆動型の意思決定などがある。

 今後1年間で、企業がアプリケーション開発における投資計画で最も重視するのは以下の通り。大企業はAPI管理、中堅企業はビジネスプロセスオートメーション(BPA)を回答する傾向にあった。

  • API管理(43%)
  • BPA(37%)
  • APIゲートウェイ(31%)
    • APIゲートウェイはAPIを利用するリクエストを制御する仕組み。
  • iPaaS(integration Platform as a Service)(23%)
    • iPaaSは各種システムやデータを連携させるサービス。
  • RPA(ロボティックプロセスオートメーション)(22%)

 2023年と比較して、2024年により注目度が高まると予測される技術分野は以下の通り。

  • API管理
  • サーバレス
  • FaaS(Function as a Service)
    • サーバレスでアプリケーション開発ができる環境を提供するサービス。
  • サービスメッシュ
    • 小規模のサービスを組み合わせて1つのアプリケーションを構築する「マイクロサービス」間の通信を制御する仕組み。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)は、前年から引き続き技術投資のけん引役となる見込みだ。既にDXが進んでいる企業においては、特にカスタマーエクスペリエンス(CX)強化の取り組みを重視する傾向にある。

 生成AIは、ソースコード生成の効率化や開発プロセスの迅速化など、アプリケーション開発の在り方を変革する可能性を秘めている。IT意思決定者は、ワークフロー最適化に有望な技術として生成AIに関心を寄せている。

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