“究極のAI”実現に向けて
Meta、ザッカーバーグ氏が語る「GPU」に投資する理由と“AIの失敗”
Metaが2023年期の決算を発表し、同社のAI技術とそれを支えるデータセンターへの注力ぶりが明らかになった。同社CEOマーク・ザッカーバーグ氏は、AI技術開発の鍵をどこに見いだしているのか。
「Facebook」や「WhatsApp」「Instagram」などのサービスを運営しているMeta Platformsは、2023年の通期決算で、前年比16%以上の増加となる1349億ドルの売り上げを計上した。同年第4四半期(9~12月)と同年通期の業績は、人工知能(AI)技術とデータセンターインフラへの投資に力を入れる同社の姿勢を表している。その背景には、同社が経験した“AIインフラ構築の失敗”がある。同社CEOマーク・ザッカーバーグ氏が考える、「GPU」(グラフィックス処理装置)の増強を含めた今後の投資戦略とは何か。
Metaが経験した“AIインフラの失敗”
MetaはInstagramの動画投稿・共有機能「Reels」(リール)のレコメンド機能や分析機能を強化する際、AIモデルを稼働させるための演算能力不足に直面した。このことを受け、同社はAI戦略を確立するためのコンピューティングリソースを毎年10倍ずつ増やすことを見込んでいる。
ザッカーバーグ氏は決算発表会見で、「当初われわれが構築したReels向けのGPUクラスタは不十分だった」と振り返った。その経験を経て、そうした状況に再び陥らないためには、十分な演算能力を確保してReelsやReelsと同規模のAIサービスを支える必要があるという判断に至ったという。「当時この判断には賛否両論があり、設備投資について相当数の質問が寄せられた。だが今は本当にそうして良かったと思っている」とザッカーバーグ氏は述べる。
AIモデルの学習とAI推論エンジンの運用に関して、「今後さらに集中的な演算能力が必要になる」とザッカーバーグ氏は予測する。一方で具体的にどれくらいの演算能力が必要になるのかについては「まだはっきりした見通しはない」と語りつつ、次の見解を示す。「大規模言語モデル(LLM)が学習に要するコンピューティングリソースは、毎年およそ10倍ずつ増加している傾向にある」
ザッカーバーグ氏は2023年を「効率性の年」と位置付けた。同年は、IT企業としてのMetaの強化と、ビジネスの発展に重点を置いた年だったということだ。こうした方針は、AI技術とメタバースに関する長期的な構想の実現に向けて、会社を安定させるために必要だと同氏は考える。
2024年の展望について、ザッカーバーグ氏は「最も人気が高く最先端を行くAI技術関連製品/サービスの構築」を主な目標に掲げる。「この目標が実現すれば、われわれのサービスを利用する誰もが一流のAIアシスタントに用事を手助けしてもらえるようになる」と同氏は話す。具体的には、以下が実現可能になるという。
- クリエイターが、自身のファンとの交流を支援するAIアシスタントを持つことができるようになる
- 企業が、客と対話しながら商品を買ってもらったりサポートを提供したりするAIアシスタントを活用できるようになる
- 開発者が、最先端のオープンソースAIモデルを開発に利用できるようになる
「次世代のサービスのためには完全な汎用(はんよう)人工知能(AGI)を構築しなければならない」とザッカーバーグ氏は言う。同氏はかつて、同社製品/サービスの多くがソーシャルメディアや商業的なものだったため、そうした分野に関するAI技術にさえ取り組めば十分だと考えていた。「しかし今、われわれが思い描くサービスを最高レベルに引き上げるためには、推論やコーディング、記憶などの認知能力をわれわれのAIモデルに獲得させる必要があることがはっきりした」(同氏)
太っ腹なAI戦略の根拠
Metaは今後、同社製品/サービスへのAGIの搭載に取り組むことをザッカーバーグ氏は表明している。この方針は、同社がデータセンターインフラに投資する額に影響を与える見通しだ。設備投資の見通しに関する質問に対し、同社最高財務責任者(CFO)のスーザン・リー氏は「依然として計画プロセスはかなり流動的だ」と説明する。その背景に、新しいデータセンターの設計をどれだけ迅速に実現できるか、今後サプライチェーンがどう変化するかなど、他にも不確実な要素が存在するためだという。
「とはいえ全般的な予測として、これから先はAI事業を支えるためにさらなる投資が必要になる。その一部は2024年の投資に反映されるはずだ」(リー氏)
ザッカーバーグ氏は決算発表の場を利用して、AIモデルをオープンソース化するメリットを説いた。同社のAIモデルをオープンソース化することは、AIモデルの性能向上につながると同氏は考える。同氏によれば、同社のAIモデルを製品化するにはまだやるべきことが山積みではあるが、他製品との差をつけるためにはそうした作業が欠かせない。「オープンソースAIモデルのリーダーでいることには大きなメリットがあり、オープンソース版AIモデルに対する製品版AIモデルの優位性が損なわれることはあまりないと判断している」と同氏は説明する。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[ネットアップ合同会社] 金融庁ガイドラインから読み解く、「次世代データレジリエンス」の在り方 -
製品資料
[ネットアップ合同会社] 製造DXでデータ活用ニーズが拡大 分散データ活用とAI活用をどう実践する? -
製品レビュー
[ネットアップ合同会社] AIで使いたいデータが内外に点在、研究におけるAI活用を阻む“真の課題”とは -
製品資料
[株式会社kickflow] 稟議・承認作業の「脱オンプレ・脱Excel・ペーパーレス化」を一気に進める方法 -
製品レビュー
[株式会社kickflow] ワークフローシステムのクラウド化 “みんなが不幸になる”事態を避けるには?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
2
「エージェントを作るな、スキルを作れ?」 Anthropicが提唱するAI運用の勘所
-
3
「契約業務のAI活用」に関するアンケート
-
4
Microsoft月例パッチ1400件超で過去最多 「限界点」を迎えたパッチ管理
-
5
「データ活用とAI活用の実態」に関するアンケート
-
6
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
7
「ITサービスマネジメントの利用実態」に関するアンケート
-
8
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
9
障害対応に「余裕なし」が9割超 運用担当316人調査で見えた「運用赤字」
-
10
シャトレーゼを悩ませる偽メール 混乱なしでBIMI導入とDMARC強化を実現した方法
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー