クラウドサービスを英国市場で提供するAWS、Microsoftといった主要クラウドベンダーについて、英国情報通信庁(Ofcom)は、公正な競争を阻害する可能性のある“3つの問題”を指摘する。
英国情報通信庁(Ofcom)は2023年10月、英国のクラウドインフラ市場に関する1年間の調査の結果を詳述した通年報告書を公開した。報告書では、Amazon Web Services(AWS)とMicrosoftの両社には幾つかの反競争的行為が見られるとして警告を発している。これは、ユーザーが“クラウドサービスをやめにくくなる”状況に関連した問題だ。市場に対する取り締まりを担う英国競争市場庁(CMA)の出番ともなったこの件について、具体的にはクラウドサービスの何が問題になっているのか。
Ofcomによると、AWSとMicrosoftを中心とした大手クラウドサービスベンダーには3つの問題点がある。
1つ目は「エグレス料金」だ。クラウドサービスから外部のインフラにデータを送信(エグレス)するときにかかる料金で、大手クラウドサービスベンダーはこれを必要以上に高く設定しているとOfcomは指摘する。
2つ目は相互運用性だ。クラウドサービスベンダーは他のベンダーとのサービスを効果的に連動させることを妨げているとOfcomは指摘する。データやアプリケーションの再設定に余計な手間をかけなければならない仕様となっているからだ。
3つ目は確約利用料(CUD)だ。ユーザーが一定量あるいは一定期間のサービス利用を約束することで料金を割引く仕組みが、クラウドのニーズの全てまたはほとんどを満たすために単一のクラウドベンダーを支持する動機をユーザーに与える。
Microsoftに対してはさらに問題があるとOfcomは指摘する。自社の製品が競合ベンダーのホスティングサービスで稼働する場合の料金設定を、自社クラウドサービスで稼働する場合と比較して高く設定しているという。
Ofcomの報告書は、以下のように指摘している。
ユーザーがMicrosoftからライセンスを供与されたソフトウェアを競合プロバイダーのクラウドインフラ上で利用する場合に得られるメリットを、Microsoft Azure上で利用する場合より減ずるような慣行をMicrosoftが取っていると訴えるものがあった。
Microsoftが、同社のソフトウェアをユーザーがMicrosoft Azureで使うように誘導しているのだとすれば、ユーザー獲得の競争をゆがめている可能性があるというのがOfcomの見方だ。具体的には、クライアントOSの「Windows」とリレーショナルデータベース管理システム「Microsoft SQL Server」、サブスクリプションサービス「Microsoft 365」の販売方法とライセンスの仕組みに懸念があるという。
後編は、今回の調査を受けてAWSとMicrosoftの今後の動きがどうなるのかを解説する。
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