「EDR」は「アンチマルウェア」と何が違う? 混同しがちな利点とはEDRとアンチマルウェアを比較【中編】

EDRとアンチマルウェアは、どちらも企業のエンドポイントを保護する上で役立つセキュリティツールだ。両者に期待できる利点の違いを解説する。

2024年06月03日 07時15分 公開
[Ravi DasTechTarget]

 企業が必要とするセキュリティツールの一種である「EDR」(Endpoint Detection and Response)と「アンチマルウェア」(アンチウイルスとも)は、エンドポイントを脅威から保護するという点で共通している。ただし両者には幾つもの違いがある。それぞれのセキュリティツールを活用することで何が可能になるのか。EDRとアンチマルウェアの長所や、期待できる利点を比較する。

混同しがちな「EDR」と「アンチマルウェア」の違い

 EDRはエンドポイントでの検出と対処を担うツールだ。EDRには以下の利点が期待できる。

長所1.エンドポイントの可視性の向上

 全てのエンドポイントで、何が起きているのかをリアルタイムで把握できるようにする。

長所2.コンプライアンス保持のための記録

 「CCPA」(カリフォルニア州消費者プライバシー法)、「HIPAA」(米国医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)、欧州連合(EU)の「GDPR」(一般データ保護規則)など、データプライバシー関連法令の順守にEDRは役立つ。EDRは企業の全エンドポイントデバイスを監視するので、誰がどのデータにアクセスしているのか、データ漏えいが起きていないかどうかといったことをセキュリティ部門が確認できるようになる。データ侵害が発生した場合にも、被害の食い止めに活用できる。

長所3.リスクの軽減

 データの収集に加えて、リスクを軽減するための以下の対処も可能だ。

  • ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)などの差し迫った脅威の検出
  • 検出した悪意のあるペイロード(マルウェアの実行を可能にするプログラム)の封じ込めと隔離
  • セキュリティ侵害を特定するために必要な証拠やその他の手掛かりの記録による、デジタルフォレンジック(インシデント発生時の痕跡調査や被害解明の取り組み)の支援

長所4.迅速かつ効率的なインシデント対処

 EDRは、収集した情報やデータを「SIEM」(Security Information and Event Management)のような中央管理のセキュリティシステムに送信する。こうした仕組みは、セキュリティ部門が迅速に脅威を把握するとともに、脅威検出に要する平均時間(MTTD)と対処に要する平均時間(MTTR)を短縮する助けになる。各エンドポイントデバイスを個別にスキャンするよりも、素早く効率的なセキュリティ対策を実現するのに有用だ。

アンチマルウェアとは

 アンチマルウェアはマルウェアへの感染を防止するためのツールだ。アンチマルウェアには以下の利点が期待できる。

長所1.包括性

 1台のエンドポイントに対して、全てのファイルとフォルダを対象とした包括的なスキャンを実行し、マルウェアを検出する。セキュリティ部門は都合の良いスケジュールを設定し、手動もしくは自動でスキャンを実行する。

長所2.スキャン対象の選択

 エンドポイント丸ごとだけではなく、メールの添付ファイルなど、1つのファイルだけを対象としたスキャンも可能だ。

長所3.マルウェアの駆除と無効化

 マクロ(アプリケーション自動操作機能)を悪用したMicrosoftの表計算ソフトウェア「Microsoft Excel」のファイルなど不審なものを検出した場合、それを駆除もしくは無効化できる。

長所4.健全性レポート

 スキャンが完了すると、エンドポイントの安全度を総合的に評価してスコアを出す。このスコアを活用して、セキュリティ部門は自社のエンドポイントのセキュリティを改善できる。


 次回は、EDRとアンチマルウェアの違いと、どちらを選ぶべきかを検討する際のポイントを解説する。

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