マイクロソフトは2009年11月、UML機能を強化した統合開発環境の次期製品「Microsoft Visual Studio 2010 β2日本語版」を発表した。今回はそのモデリング機能の特徴を紹介する。
マイクロソフトは、2010年上半期に製品版を提供する予定の「Microsoft Visual Studio 2010」(以下、VS2010)において、UMLモデリング機能を強化し、要件定義や設計などの領域のサポートを充実させると発表している。従来、Visual Studioにおけるモデリング機能としては「Architecture Edition」で独自記法の機能が提供されていたが、UMLはサポートの対象外だった。また、同社は2008年9月にモデリング標準化団体「OMG(Object Management Group)」に加盟しており、.NETプラットフォームにおけるモデル駆動型開発を支援する方針も発表している。
マイクロソフトはアプリケーションライフサイクルマネジメント(ALM)というキーワードを掲げ、Visual Studio製品群によってアプリケーション開発のライフサイクル全体のサポートを目指している。Visual Studioが提供するUMLモデリング機能とは、一体どれくらい使えるものなのだろうか? 今回は既に入手可能なVS2010 β2日本語版を基に、そのモデリング機能の特徴を紹介する。
VS2010は、その最上位ライセンスである「Ultimate」においてUMLのバージョン2.1.1に対応したUMLモデリング機能が提供され、以下のダイヤグラムを作成することができる。
ダイヤグラム名 | 対応状況 | 備考 |
---|---|---|
クラス図 | ○ | ― |
オブジェクト図 | × | ― |
パッケージ図 | × | ― |
コンポーネント図 | ○ | ― |
合成構造図 | × | ― |
配置図 | × | ― |
ステートマシン図 | × | ― |
アクティビティー図 | ○ | レーンには対応していない |
シーケンス図 | ○ | 自動生成可能 |
コミュニケーション図 | × | ― |
タイミング図 | × | ― |
相互作用概要図 | × | ― |
ユースケース図 | ○ | ― |
VS2010には上記のダイヤグラムの作図機能に加えて、今回から追加された「レイヤー図」という独自の図も用意されている。また、データベースの構造を可視化するビュー、ソースコードからシーケンス図を自動生成する機能、クラス間の依存関係を可視化する「Visualize Code Relationships」機能などを活用できる。
さらに、モデル要素の色が変更可能であり、リソース系やイベント系のクラスを色分けして、カラーUML(※)でモデリングすることも可能だ。アクティビティー図とユースケース図では直線や長方形、楕円(だえん)などのテンプレートを使って自由に図形を描くことができる。
※ 『Javaエンタープライズ・コンポーネント―カラーUMLによるJavaモデリング』(ピアソン・エデュケーション)の中で、共同著者であるピーター・コード氏が提唱している手法。イベントをピンク、リソースを緑などに色付けすることで、白黒の図よりも視覚的に分かりやすくなる点が特徴。
そのほか、VS2010の日本語版ではメニューやメッセージにおける日本語表示はもちろん、ダイヤグラム要素に対する日本語の入力も可能だ。ただ、先述した対応表でも分かる通り、現時点では「UMLモデリングツールとしては、対応可能なダイヤグラムが少ない」といえるだろう。同社では今後、対応ダイヤグラムの種類を増やしていくという。
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