「遅延2ミリ秒以下」――東証が高速大量データ通信システムの導入成果を公表NEWS

1月4日に運用開始した東証の新株式売買システム「arrowhead」は、高速ネットワーク基盤「arrownet」とともに99.999%の可用性を確保し、順調に稼働している。

2010年03月11日 09時00分 公開
[荒井亜子,TechTargetジャパン]

 東京証券取引所(東証)は3月8日記者会見を開き、1月4日に運用開始した新株式売買システム「arrowhead」とそれを支えるネットワーク基盤「arrownet」について、現在のシステム稼働状況を発表した。

画像 記者会見には、米Juniper NetworksのCEO ケビン・ジョンソン氏(左)も参加。「大手証券会社の株取引アプリケーションにおける1ミリ秒のアドバンテージは年間1億ドルの差を生む。取引システムにおけるいかなる遅延もなくさなければならない」と述べた。右側は東京証券取引所 常務取締役 CIO 鈴木義伯氏

 新株式売買システムarrowheadをサポートするarrownetは、証券取引、オプション取引、デリバティブ取引において、東証の全業務システムと取引ユーザーや外部機関などをつなぐバックボーンネットワークだ。東証はarrownet構築に際し、ジュニパーネットワークスのマルチサービス・エッジルータ「M 320」「M 120」と同社のネットワークOS「Junos」を採用。アクセスポイントから各業務システム間のレイテンシー(遅延)が2ミリ秒以下という高速・大容量データ通信を実現するMPLSネットワークを構築した。構築費用はおよそ20億円。アクセスポイントとデータセンターを結ぶ高速回線にはWDM(光波長分割多重装置)を用いたリング型の光ファイバー網を使用し、10Gbpsの広帯域を実現した。

 arrownetの特徴は「高速性」「信頼性」「拡張性」。東証のプライマリサイトからセカンダリ(バックアップ)サイトへのフェイルオーバーは、ユーザーに意識させることなく切り替えが可能だ。また、2カ所のアクセスポイントへ利用者接続回線を分散収容することで、取引参加者の負担を軽減するように作られている。こうして、99.999%(ファイブナイン:5年間で10分程度の停止時間)の可用性を確保した。

 東証は、データセンター内に証券会社のシステムをコロケーション(設置)し、システム間のレイテンシーを最小化するコロケーションサービス提供する。また、arrownetのデュアルアクセスポイントを経由した各証券会社オフィスおよびデータセンターへの接続サービスも提供する。さらに、海外拠点からの接続も可能になった。

画像 arrownetの概略構成。プライマリサイトとセカンダリサイトの2つを用意。リング型のMPLS網を使う。アクセスポイントを2カ所設け、証券会社からは必ず2ルートで接続

 東証 常務取締役 CIO 鈴木義伯氏によると、arrownet稼働後は、市場の流動性に変化が見られたという。約定回数を表すTICK回数が、arrownetシステム稼働前と稼働後で2倍程度に増加している。「注文回数と約定回数が増えたのは、取引がしやすくなったということ」(鈴木氏)

 また鈴木氏は「東証のシステムは取引のしやすさだけでなく、注文数・約定数をどれだけ早く大量に配信できるかが肝」とし、情報配信件数の変化についても触れた。2009年12月21日の1日合計電文出力数(216万8495件)に比べ、2010年1月7日の1日合計電文出力数(762万3488件)は約3.5倍に増えた。鈴木氏は「arrownetによって相場をより細かくユーザーに配信できるようになった」と話す。

 東証の今後の展開については「売買システムのさらなる高速化へ対応し、ユーザーの要望に応じた多様なネットワークインタフェースを提供していく。東証の取引ユーザーの6割は海外。今後もICTシステムを高度化して海外の取引ユーザーをもっと取り入れていきたい」と語った。

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