基幹システムとの連携が容易にできなければ、流通BMS本来のメリットを引き出したシステムとは呼べない。場当たり的な導入は結果として自らの首を絞めかねないのだ。
前回「流通BMSの先行事例から見えてきた受発注システムの課題」では、流通業界のお荷物的な存在だった受発注システムが、流通BMSと呼ばれる標準によって生まれ変わりつつあることを説明した。しかし、先行事例を見る限り導入に当たっての課題は多い。システム担当者にとっては頭の痛い問題であり、“触らぬ神にたたりなし”、できることなら先延ばしにしたいというのが本音ではないだろうか。とはいうものの、20数年にわたり使い続けられてきた旧来のJCA手順はもはや限界で待ったなし。遅かれ早かれ検討を始めなければならない状況である。本稿では、そんな悩めるシステム担当者が流通BMS対応の受発注システムを導入する際、事前に考慮すべき点についてアドバイスしていきたい。
あらためて整理してみると、流通BMSを導入するに当たって流通業界のシステム担当者は以下の課題を抱えている。流通業が抱える共通の課題を自社に置き換えて考えることは、導入方法を検討する上で非常に有効だ。
EDI(Electronic Data Interchange)に関しては、混在する既存の種々の仕組み(JCA手順、全銀手順、Web EDI)を持っているのに加えて、新たに流通BMSへの対応を迫られている。既存の仕組みが一気に流通BMSに置き換わる状態ではないため、既存の環境を残しつつ、流通BMSにどう対応するかが課題である。
小売業のシステム担当者にしてみると、大小の規模を合わせた何千という取引先に対して一度に流通BMS化への依頼をすることは到底できないと考えている。一方で、卸売業やメーカーのシステム担当者は、得意先である小売からの依頼だからといっても、1社からの依頼で流通BMS化に充てられる費用は限られている。たとえ今後ほかの取引先から同様の依頼があると予想できても、あらかじめそれを見越した上で予算も含めたシステム化の検討を行える企業は少ないだろう。
われわれがコンサルタントとしてお話しさせていただくと、小売側にしても、卸・メーカー側にしても、このような課題を抱えている担当者をよく目にする。特に小売よりも卸やメーカー担当者は、得意先である小売各社が今後(段階的ではあるにしても)流通BMSに対応していくことは分かっていながら、全体を見据えた流通BMS化の予算を取ることができないようだ。結果として、1社ごとに対応するたびに工数や費用を掛けてしまっている企業が多い。
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