医師は診察時間中、電子カルテを使い続ける。大事な商売道具でもあるこのシステムをより使いこなすためには、これまで慣れ親しんだ紙カルテと同じ画面形式にすればいいというわけではない。
電子カルテは、医師が診察中ずっと使い続けるシステムであり、医師がその画面に向き合う時間は膨大になる。そのため、電子カルテにはなるべく医師に負荷を掛けない工夫がなされている。多くの電子カルテは、紙カルテ時代と同様の画面インタフェースとして「カルテ2号用紙」形式を採用している。左右に見開く2号用紙形式では画面右側に処方を、左側に所見を記述する方式が取られ、その様式に慣れ親しんできた医師でも入力しやすいように配慮している。
しかし、油井コンサルティングの油井氏は「2号用紙形式の電子カルテは使いにくい」と指摘し、「その使いにくさは画面が狭いことに起因する」と説明する。油井氏によると「医師は患者の過去病歴、薬歴、所見、検査履歴など多くの情報を瞬時に把握しなければならない。2号用紙形式では左右の書き込みが均等にならないのでムダな余白ができ、一画面に表示できる患者情報が減る。このため、画面をスクロールする頻度が増える」という。また「電子カルテでは余白がないレイアウトの方が適している」と説明する。
さらに「書き込んだ情報を保存する処理などは、画面を見なくても操作できることが重要だ」と説明する。画面上にボタンが表示されていると、ボタンを押すには画面を見る必要があるため、患者の顔を見ることができなくなるからだ。さらに「情報入力以外の操作はすべてキーボードで行えることが重要で、毎日6時間使えばその操作はすぐに指が覚える」とも語る。
その上で、油井氏は「電子カルテは医師が直接操作しなければ意味がなく、医療道具と同じ商売道具。毎日使い続けるためには、自分に最適なものを選択するこだわりが必要」と語る。特に診療所では、その選定に対してよりシビアになる傾向があると説明する。今回は、油井コンサルティングの電子カルテシステム「ドクターソフト」を紹介する。
ドクターソフトは「病院内業務の基はカルテデータ」という点に着目し、カルテのデータをそのままデータベース(DB)に保存して、レセプトコンピュータ(以下、レセコン)や検査、予約システムといったほかのシステムでもデータ利用を可能にするソフトウェアだ。DBサイズが小さく、データ量の制限がないため、データを永続的に保管することが可能だ。
ドクターソフトはWindowsで稼働し、汎用的なPCで使用できる。また、それぞれのPCで稼働しているドクターソフトのプログラムを変更することなく、DBサーバをOracle DatabaseやMicrosoft SQL Serverなどに置き換えることもできる。さらに、業務を止めないようにDBレプリケーションや代替サーバに切り替える機能なども備えている。加えて、ドクターソフトは共通インタフェースを利用することで他システムとも容易に連携できるほか、他ベンダーの電子カルテシステムの機能部品としても使用されている。
ドクターソフトはレセコン一体型で自動点数機能を搭載しており、調剤薬局を含め、歯科を除いた診療科目における入院外来などの請求処理にも活用できる。さらに、診療所や病院、調剤薬局などで必要となる処置項目、薬剤などの情報を一元管理する。
機能概要 | 詳細項目 | 対応規模数 |
---|---|---|
患者データ登録 | 患者登録件数 | 最大100万人 |
レセプト件数 | 無制限 | |
患者データ保存期間 | 最長5000年 | |
病名数 | 1000病名/患者 | |
診療項目数 | 300項目/1日1患者 | |
保険種類 | 250種類/患者 | |
マスター仕様 | 薬、処置マスター | ICDコード付き標準マスター、厚生省マスター 約2万8000項目(保険薬剤、診療項目を含む) |
病名マスター | 厚生省マスター 約1万5000病名(全部位含む) | |
地名マスター | 最大6万地名 | |
診療科数 | 最大250 | |
登録医師数 | 最大6万人 | |
対応保険 | 社保(全種類)、国保(全種類)、労災、公害、全国各地の全公費、介護保険(様式2、5、7、10、11) | |
窓口機能 | 再来患者検索方式 | 患者コード、生年月日、患者名、イニシャル |
患者重複登録防止機能 | 漢字氏名と生年月日でチェック | |
帳票、印刷物 | 領収書、カルテ頭書、カルテ内容印刷、処方せん、薬剤情報、A4版レセプト、総括表(医保、国保、連記式帳票)、日報、月報、在庫帳票(棚卸表、消費量/入庫量リスト、棚卸金額表)、高額レセプト患者リスト、処置項目別点数集計など | |
ドクターソフトについて、油井氏は「大規模な病院から診療所、調剤薬局でも使えるような機能を搭載している」と語る。また、「医師が開業した場合でも、これまでとカルテの入力方法が変わることはない」とし、「例えば、同じ内科でも循環器専門と消化器専門でニーズが異なり、また医師によってだいぶ異なる」と説明する。そのため、病院や診療所などの規模に応じた区分けをするのではなく、医師がカスタマイズできるテンプレートを提供し、それらを組み合わせることが「医師の道具としての電子カルテの使いやすさにつながる」と語る。油井氏によると、こうしたテンプレートの粒度は市場に何万種類も存在し、1つの病院で100種類使われているという。
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