“セキュリティは通信事業者頼み”の実態が明らかに
スマートフォン/タブレットのセキュリティ対策は通信事業者の責任か?
スマートフォンやタブレットのセキュリティ対策は誰が責任を負うべきか。調査結果からは、一連のセキュリティ対策を通信事業者に委ねたいという、一般消費者や企業の意向が明らかになった。
通信事業者を選ぶ上で、通信サービスの質は今や最重要項目ではなくなった。スマートフォンをはじめとするモバイル端末のユーザーは、通信事業者によるユーザー情報の保護対策とセキュリティ問題が起きた場合の対応をより重視していることが、最新の調査で明らかになった。
米国のスマートフォンユーザー2000人以上を対象に実施した調査によると、SMSメールのフィッシング詐欺や迷惑メール、マルウェアに至るまで、スマートフォンのさまざまなセキュリティ問題に対して通信事業者が責任を負っている現状が明らかになった。
アイルランドのモバイルセキュリティ企業AdaptiveMobile創業者のギャレス・マクラクランCOO(最高執行責任者)は、「多くの場合、通信事業者がネットワーク接続サービスや端末をユーザーに提供する。当社が実施した調査の結果、一般消費者はモバイル端末の利用で直面するさまざまな脅威から自分の身を守る際、通信事業者を当てにしていることが分かった」と話す。
通信事業者とスマートフォンユーザーとの関係において、サービス品質が最も重要な要素ではなくなったことも判明した。調査対象者の約70%は、通信事業者との信頼関係を構築・維持する上で、個人情報の保護が最大の要因になると回答。またセキュリティ問題に関連して想定外の料金を請求された場合、通信事業者の変更を考えるという回答者は90%に上った。この結果は、セキュリティ問題が起きれば通信事業者に対する信頼が損なわれ、ユーザーが別の通信事業者に移ってしまう可能性があることを示している。
「こうした傾向は通信事業者の内部データでも確認されており、各社とも対策を練っている」とマクラクラン氏は指摘する。問題が起きると直ちに端末のユーザーに連絡する機能や、身に覚えのない料金の発生を防ぐために不正トラフィックを遮断する機能、個人情報の流出からユーザーを守る機能の提供などがその例だ。
「端末に対する脅威を抑えられれば、ユーザーに正しい用途で自由に端末を利用してもらえる。ユーザーが何かおかしいと気付けば、通信事業者はその問題を解決するための手段を提供できる」(マクラクラン氏)
企業のセキュリティ対策も通信事業者頼み
モバイル機器に対するセキュリティ意識の高まりは一般消費者の間だけにとどまらない。従業員が私物のスマートフォンを職場に持ち込む(BYOD)動きが現れつつある中、企業のセキュリティ担当者や最高情報セキュリティ責任者(CISO)は新たなセキュリティ問題に見舞われている。彼らの一部は通信事業者に助けを求めるようになった。
「企業には『私物端末で会社のネットワークに接続させてほしい』という従業員の要求が殺到している」と、米Verizon Communicationsのマネージドモバイルソリューションマネジャーであるアマンダ・チェスリー氏は現状を説明する。
多くの企業が突き当たるのは、端末に対する従業員の個人的な投資を生かしながら、セキュアなネットワークをどう維持し続けるかという問題だ。チェスリー氏によると、大企業は社内のセキュリティ技術を使って問題の解決に当たっているが、それ以外の規模の企業は通信事業者に解決策を求めるという。
「モバイル化の進展と端末のセキュリティ対策、ネットワークへのセキュアなアクセス手段の確保は多くの企業に共通した課題である。エンドユーザーの利便性を維持しつつ、モバイル端末をITインフラに接続させる際に安全性を確保することが重要だ」とチェスリー氏は強調する。
通信事業者は、特定コンテンツへのアクセスの許可や不許可を設定するアクセス制御や電子メール保護などのセキュリティ機能を提供している。また金融や医療といった業界特有の法規制を順守するためのセキュリティポリシーの適用も可能にしている。
チェスリー氏によれば、端末がどの通信事業者のネットワークを利用しているかにかかわらず、多くの端末に対するセキュリティ機能を提供している通信事業者もいるという。例えばVerizonは、一般消費者向けのほぼ全ての端末に遠隔操作でロックを掛けたり(リモートロック)、データを消去する(リモートワイプ)などのモバイルデバイス管理(MDM)機能を提供している。同社は、企業アプリケーションへのリモートアクセスを実現するセキュアなアプリケーションの開発チームも存在するという。
増大するモバイルプラットフォームのリスク
これまでのところ、モバイル端末は企業にとってそれほど大きな脅威にはなっていない。だが専門家によれば、モバイル端末を標的としたサイバー攻撃の件数は増え始めているという。攻撃方法によっては、モバイルアプリケーションの脆弱性を突いて端末のプロセスを解析し、重要な情報を盗み出すことも可能だ。SMSメールを利用するトロイの木馬は何年も前からあらゆる種類の携帯電話向けに存在していたが、まだマイナーな問題にとどまっている。
だが携帯電話より高性能なスマートフォンは、携帯電話よりも高度なマルウェアなどのセキュリティ問題をもたらす可能性がある。GoogleのAndroid搭載端末を狙って2010年後半から出現したマルウェアは、セキュリティ専門家の不安をかき立てている。
セキュリティ診断を手掛ける米ICSA Labsでマルコード対策プログラムマネジャーを務めるアンドルー・ヘイター氏は「私が不安を感じるのは、不正なアプリケーションに感染した従業員の私物端末が企業ネットワークに接続された際、攻撃者が端末を介して企業情報に不正アクセスすることだ」と憂慮する。
AdaptiveMobileの調査によれば、この不安は一般消費者の間でも高まっている。調査対象者の75%以上が、自分の知らないうちにデータを盗んだり情報を収集したりする不正アプリケーションに脅威を感じていると答えた。さらに70%以上が、マルウェア感染と想定外の携帯電話料金を請求されることに不安があると回答した。
マクラクラン氏は「中堅以下の企業は、こうした端末を全て自社で管理するための知識と能力、投資の確保に苦慮するだろう。通信事業者はモバイル通信に関する知識があり、トラフィックが見えることから、セキュリティ確保のためのソリューションを提供できる理想的な立場にある」と指摘する。
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