医師不足と偏在化が進み、へき地での医療提供体制に課題を抱えていた島根県。その解決策として構築された地域医療連携ネットワーク「医療ネットしまね」の取り組みを紹介する。
本稿では、全国自治体病院協議会副会長を務める中川正久氏(島根県立中央病院長)が「富士通フォーラム」(5月17、18日開催)のセミナーで紹介した島根県での医療連携の事例を踏まえ、医療情報ネットワークの高度化やその普及に向けた提言などを紹介する。
中川氏は2000年に島根県立中央病院長に就任して以来、地域の中核病院という立場から島根県の医療情報ネットワーク「医療ネットしまね」の活用促進に携わってきた。島根県は医師不足と偏在化が進んでおり、へき地での高齢者医療に課題を抱える。これまで島根県と島根大学、県立病院などが共同で「赤ひげバンク」を設置して医師確保に努めたり、ドクターヘリの導入による医療提供体制の改善などを進めてきた。医療ネットしまねの整備もその一環として位置付けられている。
医療ネットしまねは2002年、県立中央病院の富士通の電子カルテをベースに誕生した。その特徴は「機能拡張を通じて“成長させる”ことを当初から指向していた」(中川氏)こと。遠隔画像診断やWeb会議、紹介状・カルテ情報の連携などを皮切りに、2005年には感染症サーベイランスシステムをが、2008年には特定健診システムなどを稼働させてきた。医療ネットしまねの参加機関は2002年の100施設から、2010年には233施設まで増えている。現在は、医療機関ごとに異なる患者IDを社会保障カードでひも付けることで、中核病院の診療情報を診療所でも閲覧可能にするための実証事業に取り組んでいる。
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