サーバ仮想化には物理サーバ台数の削減以外にも多くのメリットがある。本稿では、物理サーバを購入する予算や運用管理を担う人材が限られる中小企業が、サーバ仮想化をすべきメリットを解説する。
「サーバ仮想化」はクラウドコンピューティングやスマートデバイスなどと並んで、昨今最も注目を集めているIT関連トピックの1つだ。だが、「120台だったサーバを10台に集約した」といった大企業での事例紹介が多いため、「ウチのような小さな会社にとってはメリットがない」と捉えている中小企業も少なくない。実はサーバ仮想化がもたらすメリットはサーバ台数の削減だけではない。IT活用のための予算や人員が限られる中小企業であればこそ、サーバ仮想化によって得られる恩恵も多々ある。そこで、本連載では4回にわたって「中小企業にとってのサーバ仮想化とは何か?」を詳しく見ていくことにする。
各回の概要は下記の通りである。
サーバ台数削減以外にサーバ仮想化がもたらすメリットとは何かを紹介。
中小企業がサーバ仮想化活用で直面する課題のうち、ハイパーバイザーやストレージなどの「モノ」に関する事項について明らかにし、それらの解決策を探る。
中小企業がサーバ仮想化活用で直面する課題のうち、管理/運用や社内における意思決定など「モノ」以外に関する事項について明らかにし、それらの解決策を探る。
サーバ仮想化を実践するには何が必要なのかを確認し、全体のコスト化を俯瞰することで投資対効果を考える。
今回は「第1回:台数削減だけではないサーバ仮想化のメリット」がテーマである。
以下のグラフは年商5億円以上50億円未満の中小企業に対して、「サーバ仮想化の活用状況」を尋ね、その結果を「導入済みのサーバ台数」別に集計したものである。
サーバ台数が10台以上になると、「活用中」と「活用を検討している」を併せた割合は70%を越えている。一方、サーバ台数が5〜9台での同割合は50%強にとどまり、サーバ台数が1〜4台では4割を下回るとともに、「活用する予定はない」と回答する割合が3〜4割に達している。このことから、導入済みサーバ台数が10台未満となると、中小企業におけるサーバ仮想化の活用割合も低くなっていることが分かる。
では、導入済みサーバ台数が10台未満の中小企業にとってサーバ仮想化は必要ないものなのだろうか? ここでもう一度、「サーバ仮想化とは何か?」について振り返ってみよう。サーバ仮想化とは一言でいえば「OSやアプリケーションをハードウェアと切り離す」技術である。
通常のファイル(文書データやログデータなど)は作成した後、他のサーバにコピーして編集・閲覧することができる。しかし、OSやアプリケーションの場合はサーバごとに「インストール」が必要となり、ファイルと同じように他のサーバへ手軽にコピーすることはできない。
そこで、OSやアプリケーションをあたかもファイルと同じように扱うようにするための仕組みがサーバ仮想化である。ハードウェアとしてのサーバとソフトウェアとしてのOSやアプリケーションの間に「ハイパーバイザー」という特殊なソフトウェアを挟み込むことで、両者の結び付きを「緩く」している。こうしてファイルと同様に扱えるようになったOSと幾つかのアプリケーションの一組は「仮想サーバ」と呼ばれる。これと区別をするため、ハードウェアとしてのサーバは「物理サーバ」と呼ぶ。以下でも「物理サーバ」および「仮想サーバ」という表記をすることで、両者が混乱しないようにする。
1台の物理サーバ上では複数のファイルを編集・閲覧することができる。それと同じように複数の仮想サーバを1台の物理サーバ上で動かすことも可能だ。その結果、物理サーバ台数を減らすことができるわけだ。つまり、物理サーバ台数の削減はサーバ仮想化がもたらす「1つのメリット」にすぎない。あくまで「OSやアプリケーションとハードウェアを切り離す」ことがサーバ仮想化の本質であるという点をしっかり押さえておこう(関連記事:4つの仮想化アーキテクチャと今後の展望)。
では、その他にはどのようなメリットがあるのだろうか? それを整理したものが以下の図2である。それぞれ順に見ていくことにする(関連記事:アンチ仮想化は劣勢に、サーバ統合だけではない仮想化のメリット)。
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