【製品動向】ビッグデータ活用策が分かるコンサルティングサービスメニューの拡充や人材拡充で差異化

ビッグデータ活用の課題やメリット、具体的な活用手法を明確化する「ビッグデータコンサルティングサービス」が充実しつつある。その最新動向を示す。

2013年02月08日 08時00分 公開
[鳥越武史,TechTargetジャパン]

 ビッグデータをビジネスに活用したいが、活用の具体策や効果が分からない。こうしたユーザー企業の声に応えるのが、ビッグデータのメリットや活用方法を明確化する「ビッグデータコンサルティングサービス」である。本稿は、ビッグデータコンサルティングサービスの最新動向を紹介する。

サービスの現状:ユーザー企業の強いニーズでサービスが充実

 ビッグデータコンサルティングサービスの充実が進む。SAS Institute Japanなどのデータアナリティクスの専業ベンダーに加え、NEC、富士通、日立製作所といった総合ベンダー、野村総合研究所やNTTデータといったシステムインテグレーターが相次いでビッグデータコンサルティングサービスを提供。2013年2月6日にも、伊藤忠テクノソリューションズが「CTC BD-Navi」を提供開始するなど、今後も充実が進むと考えられる。

 多くのベンダーがビッグデータコンサルティングサービスを手掛ける背景には、ユーザー企業の根強いニーズがある。IDCジャパンは、国内企業1050社に対してビッグデータテクノロジー/サービスの需要動向調査を実施したところ、多くの企業がビッグデータ活用の技術的なコンサルティングや活用/分析のためのコンサルティングを求めていることが明らかになったという。

サービスの概要:メニュー化で短期間かつ低コストに

 ビッグデータコンサルティングサービスは、ベンダーによって提供内容には多少の差があるが、以下のようなメニューで構成されるケースが多い。

  1. 課題抽出/目標設定:ユーザー企業へのヒアリングを基に、データ活用の目的や狙いを設定。ビッグデータ活用システムの全体像や予算、構築スケジュールを明確化
  2. 手法の明確化:データ分析の最新技術や製品の理解、目的に適した手段の選定、利用可能なデータの棚卸しなどを支援
  3. 実現可能性の検証:選定した分析手法やシステムに関する事前検証(Proof Of Concept:PoC)を実施し、実現可能性や投資対効果を把握

 メニューは、従来のデータ分析コンサルティングサービスと大差ない。異なるのは、データベースにある構造化データだけでなく、ソーシャルメディアのテキストデータをはじめとする非構造化データ、センサーデータなどのストリームデータの活用も想定している点だ。

 各ベンダーは、診断項目や想定システムを絞り込んだりテンプレートを利用するといった工夫で、実施期間を短縮している。一般的な実施期間は、課題抽出/目標設定と手法の明確化が2、3週間程度、実現可能性の検証が1カ月程度であり、トータルで2、3カ月程度。各フェーズにおいて、リポートが成果物として提供される。

 料金は100万〜300万円が相場だが、一部サービスメニューを無償提供するケースもある。例えば、NECの「ビッグデータディスカバリープログラム」は、課題抽出/目標設定に当たる「ビジョニング」を無償で提供する。

サービス動向1:構築や運用まで支援する動きも

 一部のビッグデータコンサルティングサービスは、上述した基本的なサービスメニューに加え、ビッグデータ活用システムの要件定義や設計、テストなどを支援する「システム構築支援」、構築したシステムの保守サポートや従業員のトレーニングを実施する「システム運用支援」を合わせて提供する。システム構築まで一気通貫で進めたいというユーザー企業の声に応えた動きだ。

 日立製作所の「データ・アナリティクス・マイスターサービス」は、システム構築支援までを含むビッグデータコンサルティングサービスの一例だ。システム構築支援に加えてシステム運用支援を実施するビッグデータコンサルティングサービスには、新日鉄住金ソリューションズの「ビッグデータソリューション」などがある。

サービス動向2:専任組織の構築など人員拡充を進める

 ビッグデータコンサルティングサービスのメリットは、データサイエンティストなどデータ活用のノウハウを持つビッグデータ関連人材のノウハウを利用できる点にある。そのため、ノウハウが豊富なビッグデータ関連人材をどれだけ確保できているかが、ビッグデータコンサルティングサービスの最大の差異化ポイントとなる。

 ベンダー各社は、買収や社内/グループ横断組織の構築などで、ビッグデータ関連人材の確保を急ぐ(表)。NTTデータは、2012年2月に統計解析の専業ベンダーである数理システムを買収。ビッグデータ関連人材を約90人に拡充した。また2011年1月には富士通、2012年2月から7月にかけて、NECや日立製作所、日本アイ・ビー・エム、野村総合研究所が相次いでビッグデータに関する専任組織を設立。合わせてビッグデータ関連人材の拡充を表明している。

表:ベンダー各社のビッグデータ関連人材拡充に向けた取り組みの一例
ベンダー 取り組み内容 開始時期 人材数
富士通 「キュレーター」というビッグデータ分析のエキスパートを集めた
社内組織を設立し、人材を育成
2011年1月 非公開
NTTデータ 数理システムを完全子会社化。ビジネスアナリティクスの専門知識を
持つ人材を拡充
2012年2月 約90人
NEC 全社横断の「ビッグデータ戦略プロジェクト」を開始。研究開発や
関連部署からメンバーを選出
2012年2月 50人(2015年
までに200人)
日立製作所 「スマート・ビジネス・イノベーション・ラボ」というデータ分析
サービスの専任組織を設置。ビッグデータの利活用に関する専門家をグループから結集
2012年3月 200人以上
日本IBM 社内横断組織「チーム・ビッグデータ」を設立。ビッグデータの
専門家を集結
2012年5月 非公開
野村総合研究所 部門横断組織「NRIビッグデータ・ラボ」を設立。経営や業務改革の
コンサルタント、データアナリスト、システムエンジニアを集結
2012年7月 2015年までに350人

 その他、伊藤忠テクノソリューションズは、データ分析をビジネス変革に結び付ける「データサイエンティスト」を4人確保した。ベンダー各社のビッグデータ関連人材の獲得/育成は、今後も進むと考えられる。

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