Facebook主導の「Open Compute Project」、データセンター大手が続々支持Intel、AMDが対応マザーボードの生産を開始?

米Facebookが開発したハードウェア設計「Open Compute Project」。データセンター関連の大手企業が対応する新製品の開発に取り組むなど、同プロジェクトの取り組みは広がりを見せている。

2013年03月04日 08時00分 公開
[Alex Barrett,TechTarget]

 米Facebookが主導するデータセンター技術のオープンソース化プロジェクト「Open Compute Project」(以下、OCP)。データセンター業界の大手が明確にその支持を打ち出し、OCP仕様を用いた新製品の開発に取り組んでおり、次第に無視できない存在になりつつある(関連記事:Facebookによる“ハードウェア設計のオープンソース化”は成功するか?)。

 OCPは、Facebookが2011年4月に自社のサーバとデータセンターの設計仕様をオープンソース化して発足したプロジェクトだ。2013年1月に米カリフォルニア州サンタクララで開催された第4回「Open Compute Summit」では、プロセッサ市場で競合する米Intelと米Advanced Micro Devices(AMD)がそれぞれOCP規格をベースとした新製品を発表した。

 AMDとIntelが金融サービス会社である米Fidelityと米Goldman Sachsの強い要請を受けて開発したのは、OCPの「Open Rack」仕様だけでなく、標準仕様のラック環境にも収まるモジュール型のマザーボードだ。

 こうしたモジュール型マザーボードのアイデアは、2011年10月に開催された第1回「Open Compute Summit」で生まれたものだ。第1回サミットにおいて、AMDとIntelのエンジニアはFidelityやGoldman Sachsの幹部から、「Open Computeハードウェアには関心があるが、自社の既存のデータセンターで使えなければ意味がない」との考えを聞かされたという。AMDのフェローでクラウド担当のテクニカルエバンジェリストであり、サーバプラットフォームアーキテクチャを専門とするボブ・オグレー氏は当時を振り返り、「どちらの幹部も『既存インフラによる制約がある』との話だった。データセンターを刷新するだけの経済的余裕はないため、既存のラックインフラでOpen Computeハードウェアを使いたいという話だった」と語っている。

 その結果誕生したプロジェクトが、AMDの「Roadrunner」とIntelの「Decathlete」だ。どちらのマザーボードも現在はアーリーアダプター(初期採用者)に提供されている段階で、2013年1〜3月期中に生産が開始される見通しだ。

 なお、AMDのマザーボードはサーバやネットワーク構成や管理方法次第で、クラウドやHPC(高性能コンピューティング)、ストレージサーバとして構成できるようになっている。これは、既存のグリッドコンピューティングクラスタに加えて、社内に大規模なプライベートクラウドを構築することでITコストの削減を目指す金融サービス会社にとって、重要なポイントだ。「同じプラットフォームでクラウドとグリッドコンピューティングを構築したいという要望がある」とAMDのオグレー氏は語る。

Facebook以外のデータセンターにも

 実際、Open Computeの設計はもはやFacebookのデータセンターには限定されていない。ゲームプロバイダーの米Riot Gamesは、ODM(Original Design Manufacturer:製品の設計から生産までを行う企業)である米Hyve Solutionsが開発したOCPサーバを購入する方針を明らかにしている。また、クラウドコンピューティング大手の米RackspaceはOCP規格に独自の調整を施し、自社のデータセンターに採用する方針を発表している。

 例えば、RackspaceはFacebookが最初に設計したOCPのOpen Rack仕様に対し、自社のデータセンター向けの修正を施した。その結果完成した設計は、Open Rackよりも最大出力が高く、直流電源を搭載せず、通常のスイッチをサポートし、ケーブルマネジメントベイを備えたものとなっている。

 「QuantaやDelta、Wiwynnといった台湾のサプライヤーと協力して、OCP設計の修正版を生産することで、コストを削減でき、完成までの時間も短縮できた」とRackspaceの最高執行責任者(COO)マーク・レニク氏は基調講演で語っている。同氏によれば、資本支出は既存の設計と比べて40%近く削減でき、運用コストも50〜52%削減できる見通しという。「かなりのコスト削減だ。ただし、実装までにかかったスピードも同じくらいに重要なポイントだ」と同氏は語っている(関連記事:・データセンター適用例が示す、サーバ仮想化のコスト削減以外のメリット)。

エコシステムの拡大

 OCPはプロジェクトの範囲も拡大している。同プロジェクトの取り組みはこれまでのところ、サーバ、ラック設計(Open Rack)、ストレージ(Open Vault)、電源やハードウェア管理に及んでいる。さらに最近、OCPの運営団体には、OCPソリューションのテストと認証を行うための「コンプライアンスと相互互換性のためのグループ」が追加されている。

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